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15章
帰ろう②
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紐を解かれて海瑠の背から降ろされたオレは穴のふちに転がってる瓶を手に取った。
「それ…?」
「ごめん 無意識で持ってきちゃってた」
蓋が外れてこぼれちゃって、ほぼカラになった瓶を抱きしめ穴の底を見る。暗い湿った穴の中は地獄の入り口のようで二度と落ちたくないって思った。
「この香りがあったから怖くなかったんだ」
言った後に恥ずかしくなって、そっぽ向く。何言ってんだオレのバカ。
「しょーちゃん」
嬉しそうな顔するなし。ちげーから、オレ今弱ってるから変なこと言っちゃっただけだから。
顔を隠すようにしてるオレを後ろから抱きしめる太い腕が腰にまわる。肩に乗せられた顔が近くて熱を持った頬に寄せられる。
「帰ろっか」
耳元でしゃべるなって言ってんだろが。
頬を通して体の中に響く声までもがイケメンで、オレの体温はとどまるところを知らずに上がっていく。
オレの腕を首に回させ、腰と膝裏に手を差し込み抱き上げる。
重さを感じないかのように、軽いクッションでも運んでいるかのように歩き出す海瑠の首に回した手に力をこめる。
道なき道を歩くのに苦労してる様子を見てオレは降りて歩くって言ったんだ。なのに
「オレが体を鍛えてるのってこういう時のためなんだよ?この筋肉今使わないでいつ使うの」
カッコよさのためじゃなかったのか。
「どんな災害の時も、それこそ戦争になったとしても。しょーちゃんを抱えて誰よりも早く動けるくらいにならないと偉そうに守るなんて言えないよ」
いやオレ足手まといすぎだろ。一緒に走るくらいできるし。
「あの時出来なかったけど、今ならホラしょーちゃんを下ろすことなく何キロだって歩けちゃうから、ね?」
あの時…?
空がオレンジ色に染まり始めてる。既視感が記憶をよみがえらせる。
あれは小学校の何年の頃だったか…
ジャングルジムの上でヒーロー戦隊ごっこしてたオレは空が飛べる気がしてジャンプして盛大に足をくじいた。
歩けないほどに痛くて骨が折れたって泣くオレを背負って家まで連れて帰ってくれた海瑠。たいして背丈も体重も変わらないオレを背負って歩くのは大変だったよな。家に着くまで何度も降ろされてはまたおぶってくれた。
美少女のように線が細かったあの頃と同一人物とは思えないほどに逞しい胸に抱かれ、そんなつもりでジム行ってたんだって胸が熱くなる。
「海瑠…」
「ん?なぁに?」
こいつの努力に報いることが出来る日がいつか来るんだろうか。
「…ありがと」
「ふふ、お安い御用だよ」
泥だらけの顔で笑うイケメンの太い首に回した腕に力を籠め、その首筋に顔を埋めて心地よい揺れに身を任せた。
「それ…?」
「ごめん 無意識で持ってきちゃってた」
蓋が外れてこぼれちゃって、ほぼカラになった瓶を抱きしめ穴の底を見る。暗い湿った穴の中は地獄の入り口のようで二度と落ちたくないって思った。
「この香りがあったから怖くなかったんだ」
言った後に恥ずかしくなって、そっぽ向く。何言ってんだオレのバカ。
「しょーちゃん」
嬉しそうな顔するなし。ちげーから、オレ今弱ってるから変なこと言っちゃっただけだから。
顔を隠すようにしてるオレを後ろから抱きしめる太い腕が腰にまわる。肩に乗せられた顔が近くて熱を持った頬に寄せられる。
「帰ろっか」
耳元でしゃべるなって言ってんだろが。
頬を通して体の中に響く声までもがイケメンで、オレの体温はとどまるところを知らずに上がっていく。
オレの腕を首に回させ、腰と膝裏に手を差し込み抱き上げる。
重さを感じないかのように、軽いクッションでも運んでいるかのように歩き出す海瑠の首に回した手に力をこめる。
道なき道を歩くのに苦労してる様子を見てオレは降りて歩くって言ったんだ。なのに
「オレが体を鍛えてるのってこういう時のためなんだよ?この筋肉今使わないでいつ使うの」
カッコよさのためじゃなかったのか。
「どんな災害の時も、それこそ戦争になったとしても。しょーちゃんを抱えて誰よりも早く動けるくらいにならないと偉そうに守るなんて言えないよ」
いやオレ足手まといすぎだろ。一緒に走るくらいできるし。
「あの時出来なかったけど、今ならホラしょーちゃんを下ろすことなく何キロだって歩けちゃうから、ね?」
あの時…?
空がオレンジ色に染まり始めてる。既視感が記憶をよみがえらせる。
あれは小学校の何年の頃だったか…
ジャングルジムの上でヒーロー戦隊ごっこしてたオレは空が飛べる気がしてジャンプして盛大に足をくじいた。
歩けないほどに痛くて骨が折れたって泣くオレを背負って家まで連れて帰ってくれた海瑠。たいして背丈も体重も変わらないオレを背負って歩くのは大変だったよな。家に着くまで何度も降ろされてはまたおぶってくれた。
美少女のように線が細かったあの頃と同一人物とは思えないほどに逞しい胸に抱かれ、そんなつもりでジム行ってたんだって胸が熱くなる。
「海瑠…」
「ん?なぁに?」
こいつの努力に報いることが出来る日がいつか来るんだろうか。
「…ありがと」
「ふふ、お安い御用だよ」
泥だらけの顔で笑うイケメンの太い首に回した腕に力を籠め、その首筋に顔を埋めて心地よい揺れに身を任せた。
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