エッセイ集

憂月柘榴

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考えること

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 考えることとは、生きることだ。

 最初にそれらしい断定を下したことを許して欲しい。私が言いたいのは何も高尚なことではない。生きる以上、人間は考えることから逃れられない。我々は常に何かを選択する。そこにはどれほど些事に見えても、確実に思考が存在する。わざわざ「考える」などと言葉にせずとも、人間は考え続けている。そう言いたかっただけだ。
 だからこそ人間は、より高度な「考える」を求める。それは人類の進化の歴史といってもいいだろう。だが私は最初の話にここで戻りたい。生きているだけで、既に十分考え尽くしているではないか、と。
 煙草を吸う、ライターで火をつける。その些事にも選択がある。行動があり、その背後には必ず思考がある。人は思考なしに行動できない。仮に本能に支配されていると思う瞬間でさえ、脳は確かに思考している。本能という、思考を。
 であるならば、と仮定を置こう。「考える」を高尚なものとするにはどうするべきか?どう定義すべきか?という話になる。普段から人間は考え続けている、それは確かだ。だが、同時により高度な思考は存在する。学問から、苦悩や迷いといった日常的な考えると形容される物事、それらがそうだ。多くの場合、「考える」という言葉はそれらのことを指す。生きているだけで考え尽くしている、という定義は、さらに言えば「生理的な考える」と言えるだろう。この定義に則れば動物も考えている、というわけだ。
 人と動物の区別をつけるなど、私の興味を大して引くものではないが、仮に設けるとしたら、この「生理的な考える」と「生理的に不必要なものを考える」の区別だろう。人間には後者を行う能力がある。故にそれを駆使する。もちろんそれは良し悪しを兼ね備えている。人はそれ故に苦悩する。苦悩する故に人である。我思う故に我あり、とはよく言ったものだ。
 私は後者の「考える」に頓着しない人間を、動物と変わらないなどと言いたいわけではない。私は「生理的な考える」に終始する人間も、人間として尊重する。確かにそこには思考があると認めているからだ。故に、ここから先は私の趣味嗜好の領域になる。
 私は、「生理的に不必要なものを考える」ことを尊ぶ。それに理由はない。高尚でありたいと思ったことも、動物と自らを区別したいと思ったこともない。ただ、できるからやりたい、それだけの話だ。他者などどうでもいい。善悪など知ったことではない。己の好奇心と趣味嗜好に従うことにしか、私には興味がない。人間にしかできないことがあるというのなら、それを成し得てやろう、そう思う次第だ。はっきり言うが、そこに善悪も貴賤もない。ただの趣味だ。今ちょうど煙草を吹かしているが、喫煙者か非喫煙者か、その程度の趣味の違いだ。そう書けば、何も高尚なことなど言っていないとお分かりいただけるだろう。
 しかしこの「生理的に不必要なものを考える」は、実によく人間の生の足を引っ張る。何故なら前提として、「不必要」だからだ。それに過ぎない。だが人間は往々にしてそれを考えずにはいられない。どれだけ逃れようとしても、それは各自が知っている。「考える葦」という言葉もあるが、私から見れば「考えざるを得ない葦」と言った方が正しいように思える。自らの特徴に振り回され、彼方此方と右往左往しては頭を抱える。それによって時に失敗し、生命すら危険に晒すこともある。
 なんと馬鹿らしい話だろう。
 そして、なんと面白い話だろう。

 故に私は、考える。考える。考える。
 例え、それが生理的なものを逸脱しようとも。…
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