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【二章】四人の魔術師
十七話 目覚め リヴァロ視点
しおりを挟むエダムとウルダが切った髪をまとめ、結界の端に積み上げる。髪の束って結構重いな。良い筋トレだと思って俺とクワルクもどんどん並べていく。
出来る限りの処理をしても穢れが結界内を浮遊しているのがわかる。
せっかくルーシャンが俺達から穢れを全て取ってくれたけど、ルーシャンから溢れ出る穢れは再び取り込むと四人で決めていた。
魔物ではなく人魔という種族になると思えば怖くない。薬もあるし、理性を失う事はないという安心感もある。
瓦礫の撤去に比べると作業は早く進み、空が暗くなる前にルーシャンに触れられるまでになった。俺はルーシャンの手を握り、しっかりとした温かさを感じて涙が出そうになる。
本当に昔から無理をする人だ。俺達が支えなければいけないと改めて感じる。
「クワルク、頼む」
「ええ、任せてください」
クワルクがベッドに手を掛け、ルーシャンの唇に口付けた。そしてゆっくりと片手で服の上から胸や腹を撫で探る。別にクワルクはいやらしい事をしている訳ではない。
ルーシャンはカードを使って穢れを自分に移していたが、受信機のような物が体内にあるはずだ。それがあると周囲から穢れを意図せず吸い取ってしまう可能性が高いため、クワルクが取り除いてくれるのだ。
「ん……ッ……ん」
眠っているルーシャンが身じろいだ。クワルクが唇を離すと、赤色の宝石を咥えていた。さすがクワルク、作業が早い。
「リヴァロも頑張ってください」
クワルクと場所を交代し、俺は自分で改良したカンタルの薬を口に含み、ルーシャンに口移しした。薬の流れをガイドに、俺はルーシャンの体内にある正確な魔核の位置を把握し、口内から魔力を流し込む。
俺達の穢れを取り込み、魔核を中心に穢れを凝固させている。
これを溶かす事ができるのがカンタルの薬なのだが、あまりに固くなり過ぎていれば薬だけでは溶けない。俺は直接、凝固した部位に魔力で干渉して薬の範囲以上の効果を出すのが役目だ。
ルーシャンのヘソの下辺りに手を添え、少し力を籠めるとルーシャンの体が小さく跳ねた。
「はぁっ……あ、ん……んぅ……」
ルーシャンの中から溶けた穢れが流れ出てくるのがわかる。俺はしっかりそれを口で受け取った。飲み込み続け、まるで酒に酔ったみたいにフワフワしてきた時に、エダムが俺をルーシャンから引き剥がした。
「これ以上は危ないよ。交代だ」
「ッ……あ……サンキュ、助かった」
可能な限り魔核にこびりついた穢れを剥がせたと思う。あとは三人にも受け取ってもらうだけだ。
王は全て自分だけで背負い込もうとした。まるで自分を罰するように。
だけど、俺達はそれを受け入れる事はできない。また、王と共に生きたいのだ。側にいて、貴方を幸せにしたい。
「う……久し振りの感覚……ウルダ、よろしく」
「わかった」
エダムも穢れに酔ったようでフラフラしている。それでも昔みたいに極端な肉体の変化がない。カンタルの薬の効果の凄さを実感する。
交代したウルダがルーシャンに口付けた時、ルーシャンの頬の割れが無くなっている事に気付いた。ルーシャンの穢れは着実に減ってきている。
次にウルダがクワルクと交代する頃には、ルーシャンの黒かった脚も元通りになっていた。クワルクの番も終わり、最終的にはルーシャンの赤い宝石のような角だけが残った。俺達も宝石のような角が生えただけで済んだ。形も色も違うけど、お揃いのようで嫌な変化ではなかった。
精神面に変化があるようにも感じない。最低限の変化で穢れを分け合う事に成功したと言える。
俺はルーシャンの眠りを解く魔法をかけた。効果が出るまでの時間はほんの数秒だったはずなのに、とても長い時間に感じた。
ルーシャンの瞼がゆっくりと開く。
パチパチと数度瞬きをし、気だるげにルーシャンが体を起こした。
「ルーシャン……」
俺が名前を呼ぶと、こちらを向いた。それからルーシャンはウルダを見て、エダムを見て、クワルクを見た。
ルーシャンが再び俺の顔を見て、しっかりと俺達四人の姿を確認した上で、こう言った。
「お前達は、誰だ……?」
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