46 / 125
【二章】四人の魔術師
二十話 婚約者 ウルダ視点
しおりを挟む「ルーシャンの依頼?」
「そう。塔が倒れたら“付近にいるはずの四人の魔術師を保護し、国民として認め、生活の保障をして欲しい”と言われていた。更に“四人は優秀だから仕事を依頼するくらいは構わないが、自由を制限するな”という誓約書まで書かされたんだぞ。どれだけルーシャンは過保護なんだと呆れたものだ」
やれやれと大袈裟に肩をすくめて笑うシャウルスは年相応の子供らしさを覗かせる。
塔から解放した後のわたし達が困らないよう、現王にまで直談判までしているとは。さすがルーシャンと言うべきか。普通ならやらない事だと思うが、自らが王であったからこそ、それが一番やりやすかったのかもしれない。
ルーシャンにとって、シャウルスがわたし達を託すに相応しい相手と見込んでいるのなら警戒は解くべきだろうか。そんな事を考えていると、エダムが一礼してからシャウルスに声を掛けた。
「シャウルス様のご厚意に感謝致します。保護、と仰いましたが、もし可能であればここで居を構えたいと考えているのですが──」
「くはっ! ふふ……っ」
そのエダムの言葉を聞いてシャウルスが噴き出した。
突然の笑い自体に悪い感じはしないが、わたしは首を傾げてしまう。シャウルスは失礼、と数度咳払いをしてから理由を話してくれる。
「笑ってしまって悪かった。いやぁ、きっと四人はそう言うだろうと、ルーシャンがこの土地も買い上げているのだ。本当に予想通りの反応で驚いたよ。そういうことだから、このまま好きにするといい。元より誰も寄り付かない地だから活用して貰えるのはこちらとしてもありがたいくらいだ」
シャウルスが目線で合図をすると、護衛が前に出て一つ一つテーブルに権利書や誓約書を並べていく。全てルーシャンがわたし達の生活のために交渉したものだ。
目を通すと、こちらに不都合の無いようにしっかりと契約が交わされていた。
元よりシャウルスは善人のようだが、それにしてもかなりの好条件が書き連ねてある。若き王を手のひらの上で転がすくらい、我が王ならば難しくなかったという事だろうか。
話が上手すぎるような気がして何か引っ掛かるが、こういうのはエダムとクワルクに任せるに限る。
シャウルスが椅子に座りながらも、膝を動かしてソワソワと落ち着かない様子なのも気になっていた。
「……ところで、ルーシャンはどこだ?」
書類をこちらが確認し終えたあと、シャウルスは今までよりも弾んだ声でそう言った。
「本人から、塔が倒れた後にどこへ行くかは聞いていないのですか?」
クワルクが間髪入れず質問に質問で返した。本来ならば『地下にいます』と答えるべきだろうが、どこまでシャウルスが情報を持っているのかを探るためにあえてそう聞いたのだろう。
シャウルスはこちらの無礼な返しにも気にする事もなく答えてくれた。
「ルーシャンは死ぬつもりだったみたいだからな。余には死体の扱いばかりを細かく話していた。だから死体があるのであればこちらで預かる事になっている」
ルーシャンは自ら取り込んだ穢れが何らかのミスで拡散しないための保険をかけていたようだ。だが、ルーシャンもわたし達も生きているし、取り込んだ穢れの対処も済んでいる。
「そうでしたか。では死体が見つかればお知らせします」
クワルクはいけしゃあしゃあと笑顔でそう言ったが、シャウルスも引くつもりはないらしい。クワルクに負けない笑みでこう言った。
「よろしく頼む。と、言いたいところだが聞き方を変えようか。ルーシャンは生きているんだろう?」
今度は躱されないように直接的にシャウルスが聞いてきた。嘘はつけないのでクワルクは小さくため息をついて頷いた。
「……ええ、生きています」
「会いたい。どうかルーシャンに会わせてもらえないだろうか」
そう真摯に告げられてしまえば、さすがにクワルクも拒否できない。
しかし、クワルクも先程わたしが感じた妙な引っ掛かりを感じているようだ。ニコニコとした笑顔の裏でルーシャンに会わせたくないという感情が伝わってくる。
無駄な抵抗と知りつつクワルクはシャウルスに質問した。
「ルーシャンが生きていた場合のお約束もされているのですか?」
その問いに、シャウルスはニヤリと勝者にでもなったように笑った。
「勿論だ。ルーシャンが生きていれば余の伴侶となる約束をしている。つまり余はルーシャンの婚約者というわけだ」
21
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる