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【三章】人魔の王
十六話 カース視点
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俺は最強の魔術師だ。誰よりも魔力を持っている。ムフローネで俺の魔力に敵う奴は存在しねぇ。
5歳の時には世界的に名を轟かせていた。前代未聞の魔力量だと。神に選ばれし存在だと!!
父は俺専用の研究所を用意してくれた。
だが、幼い俺は、まどろっこしくてチマチマした未開発の魔法や魔術の研究なんて興味なかった。俺はただ唯一最強火力の魔法を調べ、のめり込んでいた。弱小魔法ですら凄い火力なのだ。最強の魔法なんて使えば世界を支配できる。
魔力無しの下等生物を一掃して、優秀な魔力だけを残し、理想の世界をつくる。それが俺の目標だ。
しかし、最強の魔法を覚えても、火力は弱小魔法と大きな差がなかった。意味がわからなかった。
俺が天才過ぎて、この世界の魔法が追い付いていないのだ。
そんな時だ。ユンセン国の下等種ルービン王が、大規模な魔術師の引き抜きをしていると知った。魔力が無いくせに規格外の強さで敵を退けるという噂だが、どうせ魔術師を沢山用意しておかなければ何もできないお飾りの王だろう。
魔力を持たない奴に従う魔術師なんているはずねぇ!!
だが、俺の予想は外れ、どんどん優秀な魔術師達がユンセンに集結していった。
魔力を持たない奴の用意する施設なんて、魔術師達が不満を持ってすぐに逃げ出す。どうせなんの価値もわからず魔術師をゴミの様に扱っているはずだ。
しかし、その予想も外れた。みるみるうちにユンセンは魔術大国として名を馳せた。
何故だ!? 王が下等種なのにどうしてそんなに上手くいっているのか理解できなかった。
何より理解できないのは、俺に一切の打診がない事だ。
俺は誰よりも膨大な魔力を持つ、最高、最強の存在だぞ!? 喉から手が出る程ルービンは俺を欲しているはずだ!!
だが、ふと気付いた。俺はまだ魔術師の資格を取っていなかった。そうだ、あの下等種は『魔術師』を集めているのだ。声を掛けたくても掛けられないだけだ。
全く世話の焼ける下等種だ。まあ、声を掛けた所で華麗に断ってやるがな。
手っ取り早く基礎である召喚魔術で俺は魔術師の資格を取ることにした。いちいち難しい術式を必要とせず、純粋に注いだ魔力量に応じた生物を呼び出せる新しい簡易術式だった。
魔術師レベルなら誰でも勉強せずとも簡単に召喚魔術が使えるようになり、召喚魔術界で革命が起きた。
なのに待てど暮らせどルービンから声は掛からなかった。
──そうか、まだ俺が若過ぎるせいだ。15歳という若い才能に嫉妬しているに違いない。そう思った矢先、13歳の魔術師がスカウトされ、次の年には8歳の魔術師がスカウトされていた。
13歳のクワルクは、俺と同じ魔力主義者だったではないか。それが何故下等種に膝をついた!?
どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!!!!
いや、待て。
ムフローネは魔力無しとは接触しない方針だ。ルービンがどれだけ俺に声を掛けたくてもムフローネの王子だし、そんな無礼な真似できないのだ。下等種はしっかり身の程を弁えているだけだから仕方ない。
それならば、俺が直々に話す機会を与えてやろう。
5年に一度開かれる各国の王族が集う会談に、俺は王子として参加した。この会談では誰もが対等なのだ。ルービンも余計な手続きを必要とせず気軽に俺をスカウトできる。
俺は何度もルービンとすれ違った。なのに、一言も声を掛けてこない。いくらこの場が対等を謳っているといえど、やはり高位の存在である俺に声を掛けるのは恐れ多いのだろう。
仕方ないから声を掛けてやった。この俺がだ。
「おい」
呼ぶとルービンは俺を見た。バケモノみたいに体がでけぇ。俺の背が低い訳でもないのに、かなり顔を上げなければいけなかった。腹が立つから見下ろすなと言おうとしたが、その前にルービンは屈んで俺の視線に合わせた。
「はい」
ルービンは微笑んだ。息が止まるかと思った。首が太くて同じ人間に思えない程ムキムキなオッサンなのに、下等種なのに、その笑顔を見た瞬間、心臓が破裂するかと思うくらいバクバクと激しく動いていた。
「とっ……特別に、俺と話す許可を出そう」
「お気遣い痛み入ります、カース・マルツゥ王子。ムフローネ魔術界の第一人者である貴方にお声掛け頂けて大変光栄に御座います」
なんだ、やはり俺を知っているではないか。この機会を与えたのだから逃すんじゃないぞ。まあ、断るがな。
「益々の御活躍をお祈り申し上げます。それでは、また会談でお会いしましょう。失礼致します」
ルービンはそれだけの言葉で礼をして去っていた。
何故だ、何故だ、何故だ!?
ここまで俺がお膳立てしてやったのに。どういうことだ。
俺がまだ王子だからか?
王になれば良いのか?
魔術師を集め過ぎて困っているのか?
ユンセンの魔術師を減らせば、俺が必要になるのか?
なあ、おい。俺を見ろ、ルービン!!!!
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