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【三章】人魔の王
二十四話
しおりを挟む「ルーシャン、大丈夫かい? そろそろやめておこうか?」
性器を抜いたエダムが、うつ伏せになってボーッとしている俺の顔を横から覗き込んでくる。
気遣いはとてもありがたい。
しかし、本当に今更なのだが、皆がいつも俺を中心に動く事が気になってしまう。
王だったからそれに違和感は無かった。今もまた王という地位にはついたものの、せっかくルーシャンという別の存在になったのだ。ルービンだった頃とは違う関係を築きたい。
主従というより、支え合う友の様な。つまり、あまり俺に対して遠慮して欲しくないのだ。
四人も人魔になったのだから、エダムもクワルクも性欲が強くなっているはずだ。俺ばかり満たされて、四人に我慢を強いるのは嫌だ。皆が満足する範囲を知りたい。全て受け止めるから、余すところなく俺にぶつけて欲しい。
それはとても我儘な感情だ。
四人が俺以外でその欲を満たすのが嫌だと思ってしまった。
今までの俺は、惚れた腫れたは個人の自由だと思っていた。性欲処理方法に口を出すなんて考えたこともない。
しかし、もしも今、四人の誰かが歓楽街に通うと言えば止めたくなる。
本気を出したシャウルスに四人が惚れてしまうのも嫌だ。
どうやらこの短い間に新たな人、人魔、魔物、悪魔といった存在に触れた事で独占欲が生まれたらしい。
いや、それくらいずっと生前からもあったのだろう。ただ俺が王であろうとして、そういった感情を殺していただけだ。
もしも、俺では太刀打ちできない力で四人を奪われたら?
愚かな俺は今まで、横からかっ攫われる可能性を考えていなかった。
塔の時のように自ら手放す事だけは考えていたのに、見捨てられたり、誰かに奪われるなんて想像もしていなかった。
なんという傲慢さだろう。一つ間違えれば俺だってカースのようになりかねない。
新しい世界を知り、俺がこれまで見えていなかったものが見えるようになった。
その一番大きなものは『愛』だと思う。
四人の告白もそうだし。カンタルの変化もそうだ。目覚めた俺に、沢山の愛を与えてくれた。
カースも行動は間違えてはいるものの、俺への愛である事に違いはない。間違わなければ応えてやれたかもしれない。でも、もうそれは不可能な所まできてしまっている。
俺も間違ってしまわないように、ちゃんと今の気持ちを伝えなければならないと思った。
「やめない。クワルクがまだ大きいままだし、エダムだって萎えてない」
チラリと視線で二人の下半身を確認すれば、立派なものが聳え立っている。
欲情されている事が心から嬉しいと思ってしまう。それは俺の表情にも出ていたはずだ。
しかし、エダムはシーツを掛けてその欲望を覆い隠してしまった。
「放っておいたら治まるよ。僕達は穢れに最も馴染んでいる存在だから、人魔化の影響は思ったより無いんだ。もうルーシャンの中に魔力も貯まったし、ゆっくり休もう?」
エダムがお開きの空気を出し始めるが、まだ俺の話は終わっていない。俺は二人の腕を掴んでベッドから出るなという意思を伝える。
「……エダムとクワルク個人の意見を聞かせてくれ」
「と、言うと……?」
「単純に、もっと俺とヤりたいか、ヤりたくないかだ」
俺の言葉にクワルクとエダムが顔を見合わせ、驚きを共有しているようだ。俺は話を続ける。
「悪魔に触れられて思ったよ……お前達だから、こういう事がしたいんだと。誰でも良い訳じゃない。お前達とは心が満たされる……これが恋愛感情なのかもしれないと、少しわかってきた。フィオーレに感謝はしたくないが、違いを知れたのは良かったかもしれない……」
「おおおおお、お、お、王……!?」
クワルクが動揺している。俺らしくない事を言っていると思う。
己の感情だけでものを言う事がルービンの時には本当に無かったから。でももう言葉を止められなかった。
「俺ばかりに気を使っているお前達には、いつも我慢を強いていると思う。人魔の性欲も、他で発散するくらいは自由にさせてやりたいが、今の俺は昔のように心を殺すのが難しい。その……こんな事、俺が言える義理はないが、お前達が俺以外の誰かとするのは嫌だ……。可能なら……俺、だけにしてくれないだろうか……?」
どうしよう、自らの願いを吐露する事が性行為よりも恥ずかしいとは思わなかった。歯切れが悪くなるし、二人の顔を見る事ができない。顔が熱い。沈黙が怖くてとにかく言葉を発さなければと思ってしまう。
「か、可能な範囲でいいんだ……俺の体は一つしかないし、全員を満足させるなんて出来ないのはわかっている……だから、なんの強制力もないのだが……ど、どうしても、伝えたくて……」
必死にうつむき気味に言い募っていると、二人の様子がおかしい事に気付いて顔をあげた。
「ん゛っ……いえ、あの……ま、まさか……王からそのようなお言葉を頂けるとは……」
「んぐッ……失礼……」
クワルクとエダムが小さく呻き、目元を手で覆って上を向いた。
な、泣いてる……。
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