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【四章】王と魔王
五話 マルチェット視点
しおりを挟む「今の私は眷属であるがゆえ、カースの意思に反する行動はできない。パニール襲撃を止める事もできなかった役立たずだ。本当にすまなかった」
狼の姿ではさまにならないが、私は頭を下げた。
「息子の責任は親の責任だ。許されない事をしたのはわかっているが、どうか、カースの前にまず私に制裁を……それからカースへの処罰を決めて欲しいのだ」
息子の減刑を求めたいわけではない。ただ、私も共に裁いて欲しい。そう付け加え、更に頭を下げた。ルーシャンは私の前で屈み、カースから預かった手紙を拾った。
「俺は……許す気は無いが、別に恨んでもいない。悪魔召喚という明確な原因があったにせよ、疫病など、人ではどうしようもない事は常にいつの時代でも起きる可能性がある。起きた事を誰かのせいにしていては、いつまでも解決しないからな」
そう言ってルーシャンは私の頭を撫でた。その優しさは、私にとってどんな罰よりも辛かった。
「まあ、これ以上の被害は御免だからな。カースには多少の罰を与え、反省はしてもらうつもりだ。マルチェットにはカースのアフターケアを頼みたい。きっと荒れるから」
「……感謝する。本当に、ほんとうに、すまなかった」
私が顔を上げると、ルーシャンは笑っていた。
「子育てとは、ままならんものだな」
「ああ……そうだな……」
ルービンの養子だった子供は、血の繋がりがないのにルービンそっくりになった。親の背中を見て育つとはよく言ったものだ。カースも私の背中を見て育ち、心の弱さまでそっくりになってしまった。
ルーシャンは私に一つ質問した。
「マルチェット。何故カースに父の意識があると教えないんだ?」
「……私は、親としてカースを正しく導く事ができなかった。ありのままの息子を見てやる事ができなかった。だが、ただの狼のマルとしてなら、ちゃんとカースを見てやれる気がして」
「……そうか。わかった」
これ以上口を出す事はないとでも言うように、ルーシャンは力強く頷いた。
私は許された訳ではないが、恨まれてもいないという安心感もあり、つい、本音が口から零れていた。
「私は……王として、子を持つ親として、そなたを尊敬している」
「えっ……」
私の突然の言葉に、ルーシャンは顔を赤くして固まった。昔のルービンならば、表情一つ変えずに受け流していただろう。生まれ変わった事で人間らしくなったようだ。何故かそれが我が事のように嬉しく感じた。
「ふはは、マルチェットならば死んでも言わないだろう?」
「……うん、まあ、確かになぁ」
ルーシャンは顔を手で扇いでいるが、まだまだ頬が赤い。隙を見せるようになったのは良い傾向だ。ルービンの時の様にもう一人で全てを抱え込む事は無いだろう。私が心配する事は何一つ無い。
「マルチェットは死んだ。私はマルとして生きる。今後、もう言葉を話すつもりはない」
「ああ。マル、また来いよ」
謝らせてくれてありがとう。話を聞いてくれてありがとう。
私はその気持ちを全力で叫びながら森へ駆け出した。
「アオーン!」
精一杯の感謝の叫びは、木霊してゆっくりと空へ吸い込まれていった。
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