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第161話 明暗それぞれ
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「そろそろ出発のお時間です」
デュランの言葉にタルバンが「ああ」と返事をした。
「無事に育っているようで良かったよ」
タルバンがヤギの頭を撫でる。
見知らぬ人にも抵抗がないらしくタルバンの手に顔を擦り付けてくる。
「ありがとうございます」
パシュミール種のヤギを預かる農夫が安堵した。
「最初こそどうなることか心配しましたが、これまで飼っていたヤギとあまり変わりませんでしたので」
「そうか」
ヤギの数を増やし、並行して織物を作る体制を整える。
安定した布地の生産に至るまでには、まだ何年もかかるだろう。
それでも足掛かりはできた。
考え込むタルバンに農夫が尋ねる。
「こちらの雄ヤギと他の雌ヤギとで交配させてみましょうか?」
「ふむ、面白いかもしれないな。余裕があれば試してくれ」
「わかりました」
「これからもよろしく頼む」
「はい」
タルバンは農夫の手を強く握ってヤギ小屋を後にした。
デュランとともに馬車へと向かう。
「これで最初の目途が立ったな」
「そうですね」
ココット商会から入手した4つの農作物とヤギ。
瓜と芋の先行きは明るい。
飢えを満たすのはもちろん、甘味の材料としても使えるだろう。
さらに収穫量次第ではあるが、来年にも酒造りに取り掛かれるかもしれない。
「芋の酒と瓜の酒が売れるかどうかだな…」
そこはもうしばらく先の問題だろう。
ソバは大小、黒茶の4種類に分けての種蒔きをもう1年続けてみよう。
何か変化があるかもしれない。
「変化がなければ…、取り止めか」
豆は様子見。
育ちも味も、取り立てて良くもなく悪くもなかった。
近親種でもう少し際立った特徴の豆を探しても良さそうだ。
そしてパシュミール種のヤギも無事育っている。
年が明けて子ヤギが生まれればバンバンザイだろう。
「農業以外で何か見つかると良いのだが…」
林業や鉱業は望み薄。
漁業もダメだ。
そもそもクリスパ領は海に面しておらず、魚が豊富に取れる川や湖もない。
観光や保養地としての開発も難しい。
仮に温泉が見つかったとしても、温泉の1つくらいでは、後発地として追いつけそうにない。
「何か作れると良いんだが。それこそヤギが増えるのを待つしかないか」
「公爵家に戻ったら、また文献を探してみましょう」
「そうだな」
クリスパ領を見回して深呼吸する。
見慣れたものながら景色は良いし、空気も確かにおいしかった。
----------------------------------------------------------------------------------------------
クリスパ領の再興編はここまでとします。
次話から収束に向けて、これまでと同様の更新ペースで1カ月くらいの予定です。
「いつの間にこうなったの?」
「この2人何でくっついたの?」
「いきなりおかしくない?」
少なからずそんな設定や内容があります。
極端に端折った結果ですので、ご了承ください。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
デュランの言葉にタルバンが「ああ」と返事をした。
「無事に育っているようで良かったよ」
タルバンがヤギの頭を撫でる。
見知らぬ人にも抵抗がないらしくタルバンの手に顔を擦り付けてくる。
「ありがとうございます」
パシュミール種のヤギを預かる農夫が安堵した。
「最初こそどうなることか心配しましたが、これまで飼っていたヤギとあまり変わりませんでしたので」
「そうか」
ヤギの数を増やし、並行して織物を作る体制を整える。
安定した布地の生産に至るまでには、まだ何年もかかるだろう。
それでも足掛かりはできた。
考え込むタルバンに農夫が尋ねる。
「こちらの雄ヤギと他の雌ヤギとで交配させてみましょうか?」
「ふむ、面白いかもしれないな。余裕があれば試してくれ」
「わかりました」
「これからもよろしく頼む」
「はい」
タルバンは農夫の手を強く握ってヤギ小屋を後にした。
デュランとともに馬車へと向かう。
「これで最初の目途が立ったな」
「そうですね」
ココット商会から入手した4つの農作物とヤギ。
瓜と芋の先行きは明るい。
飢えを満たすのはもちろん、甘味の材料としても使えるだろう。
さらに収穫量次第ではあるが、来年にも酒造りに取り掛かれるかもしれない。
「芋の酒と瓜の酒が売れるかどうかだな…」
そこはもうしばらく先の問題だろう。
ソバは大小、黒茶の4種類に分けての種蒔きをもう1年続けてみよう。
何か変化があるかもしれない。
「変化がなければ…、取り止めか」
豆は様子見。
育ちも味も、取り立てて良くもなく悪くもなかった。
近親種でもう少し際立った特徴の豆を探しても良さそうだ。
そしてパシュミール種のヤギも無事育っている。
年が明けて子ヤギが生まれればバンバンザイだろう。
「農業以外で何か見つかると良いのだが…」
林業や鉱業は望み薄。
漁業もダメだ。
そもそもクリスパ領は海に面しておらず、魚が豊富に取れる川や湖もない。
観光や保養地としての開発も難しい。
仮に温泉が見つかったとしても、温泉の1つくらいでは、後発地として追いつけそうにない。
「何か作れると良いんだが。それこそヤギが増えるのを待つしかないか」
「公爵家に戻ったら、また文献を探してみましょう」
「そうだな」
クリスパ領を見回して深呼吸する。
見慣れたものながら景色は良いし、空気も確かにおいしかった。
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クリスパ領の再興編はここまでとします。
次話から収束に向けて、これまでと同様の更新ペースで1カ月くらいの予定です。
「いつの間にこうなったの?」
「この2人何でくっついたの?」
「いきなりおかしくない?」
少なからずそんな設定や内容があります。
極端に端折った結果ですので、ご了承ください。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
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