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第37話 公爵への報告
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「閣下!お待ちしておりました!」
カルトメリ・ワーレンバーグ公爵が宿に着くと、オルギュール・ビルギイトが先に到着していた。
クリスパ伯爵家を離れたオルギュールは、馬車の護衛を部下達に任せてカルトメリへの報告に急いだためだ。
「贈り物は先ほど無事に届けてまいりました」
「うむ、ご苦労」
「それと追加で報告しておきたいことがございます」
「何かあったのか?」
オルギュールがカルトメリに近づく。
「アラーナ・クリスパ様でございますが、あいにく領内の視察に出かけているとのことで、お会いできませんでした」
「そうか…」
カルトメリはいくぶん気落ちした顔を見せる。
「資料には“クリスパの宝石”などとあったが、女に疎いそなたの目からどう見えるかを聞きたかったな」
オルギュールは「さようでございましたか」苦笑する。
意識的に遠ざけてきたわけではないものの、これまでのオルギュールは女と縁遠かった。
普段、女性と会話することすら、オルギュールにとってまれである。
公爵家においてテレシア・リフォリア子爵令嬢から声をかけられることは何度もあった。
また公爵家に仕える侍女らと会話することも少なくない。
ただし、それらは必要があっての会話で、他愛ないおしゃべりとは異なる。
そんなことを思い返していると、オルギュールの頭の中にパルマの顔が浮かんだ。
クリスパ家においてパルマとの交流は、オルギュールにとって女性との久しぶりの会話だった。
「どうした?何かあったのか?」
珍しくぼんやりしていたオルギュールをカルトメリが不思議に思う。
オルギュールは我に返る。
「ああ、申し訳ありません。実は…」
帰りがけにクリスパ領で起きた事件を話した。
「そこでタルバン・クリスパ伯爵自ら現地に向かわれるとのことです」
「まあ、被害がないのであれば何よりだ」
「しかし、明日お会いできないかもしれない、と」
「やむを得んだろう」
「さようでございますか?」
「ワーレンバーグ公爵家であれば、私の代わりにそなたや別の者が出向くこともできるだろうが…」
「はい」
「クリスパ伯爵家では使用人が4人しかいないのだからな」
カルトメリから「4人しか」と聞いたオルギュールはクリスパ家のことを思い出す。
中年の男女、若い男、そしてパルマ。
「確かに4人でした」
「おそらく、その4人は明日の私を迎える準備で忙しいのだろう」
「はい」
「であれば、比較的手の空いている伯爵自ら出向いてもおかしくない」
「そうですな」
「被害が無くても伯爵自らが行くことで、領民達への印象も良いだろうしな」
「おっしゃる通りです」
自分も領内の視察を増やそうかなどと考えているカルトメリにオルギュールが尋ねる。
「で、あれば公爵閣下」
「うん?」
「贈り物の量をもう少し減らした方が良かったのでは?あの量を4人で片づけるのは大変そうでした」
「…そうだなあ」
厳しい指摘を受けてカルトメリは頭を抱える。
「明日会った時に謝っておくか」
「謝ることまでする必要ないと思いますが、何かの折に4人にねぎらいの言葉をおかけしても良いかと」
「うむ、忘れないようにしておこう」
その日の夜、カルトメリは贈り物のどれを減らすべきだったか悩んでしまい、遅くまで眠りにつくことができなかった。
カルトメリ・ワーレンバーグ公爵が宿に着くと、オルギュール・ビルギイトが先に到着していた。
クリスパ伯爵家を離れたオルギュールは、馬車の護衛を部下達に任せてカルトメリへの報告に急いだためだ。
「贈り物は先ほど無事に届けてまいりました」
「うむ、ご苦労」
「それと追加で報告しておきたいことがございます」
「何かあったのか?」
オルギュールがカルトメリに近づく。
「アラーナ・クリスパ様でございますが、あいにく領内の視察に出かけているとのことで、お会いできませんでした」
「そうか…」
カルトメリはいくぶん気落ちした顔を見せる。
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意識的に遠ざけてきたわけではないものの、これまでのオルギュールは女と縁遠かった。
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ただし、それらは必要があっての会話で、他愛ないおしゃべりとは異なる。
そんなことを思い返していると、オルギュールの頭の中にパルマの顔が浮かんだ。
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「どうした?何かあったのか?」
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オルギュールは我に返る。
「ああ、申し訳ありません。実は…」
帰りがけにクリスパ領で起きた事件を話した。
「そこでタルバン・クリスパ伯爵自ら現地に向かわれるとのことです」
「まあ、被害がないのであれば何よりだ」
「しかし、明日お会いできないかもしれない、と」
「やむを得んだろう」
「さようでございますか?」
「ワーレンバーグ公爵家であれば、私の代わりにそなたや別の者が出向くこともできるだろうが…」
「はい」
「クリスパ伯爵家では使用人が4人しかいないのだからな」
カルトメリから「4人しか」と聞いたオルギュールはクリスパ家のことを思い出す。
中年の男女、若い男、そしてパルマ。
「確かに4人でした」
「おそらく、その4人は明日の私を迎える準備で忙しいのだろう」
「はい」
「であれば、比較的手の空いている伯爵自ら出向いてもおかしくない」
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「被害が無くても伯爵自らが行くことで、領民達への印象も良いだろうしな」
「おっしゃる通りです」
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