【R18】兄と2人で公爵様に嫁いでみました【完結】

県田 星

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第85話 純白のドレス

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「これも良く似合うな」

カルトメリの言葉にアラーナが恥じらう。
タルバンが成り代わったアラーナではなく、本物のアラーナだ。
ただし「環境が変わって喉を傷めた」との名目で、大きなマスクをしている。

アラーナの周囲では服飾店の職人が忙しく動く。
布地にわずかなたるみやゆがみも無いように、細かく寸法の手直しを繰り返す。
時には待ち針を刺したり、帳面の寸法を書き直したりして、より完成した衣装を目指していく。

「次はこちらでございます」

職人の1人が白いドレスを差し出した。

「いよいよか!」

ドレスを受け取ったパルマがアラーナの手を引いて、ついたての向こう側に移動する。

布地がすれる音が聞こえると、それまで着ていたドレスが職人に渡された。
職人は待ち針の場所や寸法の修正部分を丁寧に確認しつつ、衣装箱に収めていく。

再び布地のすれる音が聞こえる。

カルトメリは衣擦れの音に耳を傾けながら、衣装に注文を付けていく。

「この色違いを作ってくれ」
「生地はもっと上質なものを」
「ここはレースが欲しいな」
「宝石が目立つように」
「もっと自然な感じにしろ」

カルトメリの注文を職人達が次々と書きとめていく。

「お待たせいたしました」

パルマが手を引いてアラーナが出てくる。
カルトメリの前に立つと、この時ばかりはアラーナもマスクを外した。

「!!!」

カルトメリの動きが止まる。
職人達の手も止まった。

白を主体に作られたドレスは、明るいレースは華やかさを、光沢のあるフリルはきらびやかさを、落ち着いた布地は上品さをかもし出している。いずれもアラーナの栗色の髪や白い肌の魅力を存分に引き立てていた。

何が何でもほめようと考えていたカルトメリですら、「うーむ」とうめき声を漏らすのみ。
待ち構えていた職人達は、何も言えないまま目を大きく見開いていた。

アラーナの手を引いたパルマがドレスの裾を持ち上げつつ、ゆっくりと一回転させる。

「おお!」

期せずしてカルトメリと職人達から同時に歓声が上がった。

カルトメリが「うむ」と大きくうなずくと、職人達は「お美しい」「素晴らしい」と褒め言葉を口にした。

「まるで女神様」
「妖精でしょうか」
「美の化身かと」

そんな言葉を聞いたアラーナの頬がますます赤くなる。
手を引いたパルマも誇らしげな顔を見せていた。

「公爵閣下、いかがでしょうか?」

パルマに促されると、カルトメリはようやく立ち上がってアラーナに近づく。
何も言わないままカルトメリはアラーナのあごに手を当てた。
パルマはアラーナの手を離すと、職人達に顔を反らすよう指を振り、自身もアラーナに背を向けた。

あわてて職人達が後ろを向く。

背中に囲まれた中で、カルトメリはアラーナに軽く口づけすると、耳元で「素敵だ」とささやいた。
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