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第115.1話 最後の夜
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【お願いがあるの】
そろそろ休もうかと思った時、寝室に戻ったアラーナがパルマに板を見せる。
「何でしょう?」
頼まれれば命でも捧げる覚悟を持ったパルマ。
しかし「お願い」は、そんな物騒なものではなかった。
【一緒に休んで欲しいの】
とっさにパルマは両手で自分の口を押える。
心臓が口から飛び出すのではないかと思ったから。
それに加えて「やったー」と叫びそうになったから。
「アラーナ様の思し召しでしたら…」
少し恐縮しつつ会釈して受け入れた。
内心では、たいまつをかざしてファイヤーダンスを踊っていたが、それを露わにするパルマではない。
「用意いたしますので、お待ちください」
【いいえ、私も】
いくらかの押し問答があったものの、結局2人してベッドや夜着を支度した。
【お休みなさい】
「お休みなさいませ」
そう言ってもすぐに眠りにつく2人ではない。
アラーナの板がはっきり見えるように、灯りを付けたままだ。
【最後に甘えたくなって】
「そうでしたか…」
【この前と前、一緒に寝たでしょう】
「え、ええ…」
どちらも熟睡したアラーナにパルマがいたずらしていた。
【あの時、良い夢を見たから】
「どんな夢だったのですか?」
「それは、ひ・み・つ」
2人してクスクスと笑う。
「もしかして公爵閣下の夢ですか?」
アラーナが頬を赤らめる。
「明日、こうしてアラーナ様の隣にいるのはどなたでしょうね」
分かっていて尋ねるパルマに、ますますアラーナは顔を赤くする。
【パルマったら、いじわるね】
「申し訳ありません」
口では謝っているが、パルマの顔はいたずらっぽく笑っていた。
アラーナも微笑んだものの、少し寂しい顔に変わる。
【パルマには随分お世話になりました】
「いえ、お世話をした覚えはありません。
パルマは首を振る。
アラーナは不思議そうな顔をした。
「結果としてお世話をしたかもしれませんが、私はしたいようにしただけです」
【そうなの?】
「私にとって一番大事なのがアラーナ様なのです」
【うーん、デュランは?】
パルマは「はん!」と大きく顔を振った。
「あんなのとは比べるまでもありません!」
【そんなこと言わないで】
「アラーナ様が、あんなのをかばうことありません!」
【デュランも頑張っているようですし】
「…まあ、そこまでおっしゃるのであれば…」
パルマが渋々納得した。
「それと、まだまだお世話させていただきますからね」
【それもそうね】
アラーナの結婚に伴い、パルマもワーレンバーグ公爵家に来るのは決まっている。
少なくとも、アラーナの声が戻るまでは。
「私は遠からずアラーナ様の声が戻ると信じています」
【そうだと良いのだけど…】
目を伏せがちにしたアラーナに「絶対です」とパルマは言い切った。
その後も昔話からワーレンバーグ公爵家での将来、そしてカルトメリ公爵との夜の相談など、話は尽きなかった。
「アラーナ様?」
ふとパルマが気が付くと、アラーナのまぶたが落ちて寝息を立てていた。
パルマはアラーナが手にした板をそっと取り上げると、枕元に置く。
丁寧に枕やシーツを整えてから、枕元の灯りを小さく絞った。
「おやすみなさいませ」
パルマも目を閉じた。
……言うまでもなく狸寝入りである。
そろそろ休もうかと思った時、寝室に戻ったアラーナがパルマに板を見せる。
「何でしょう?」
頼まれれば命でも捧げる覚悟を持ったパルマ。
しかし「お願い」は、そんな物騒なものではなかった。
【一緒に休んで欲しいの】
とっさにパルマは両手で自分の口を押える。
心臓が口から飛び出すのではないかと思ったから。
それに加えて「やったー」と叫びそうになったから。
「アラーナ様の思し召しでしたら…」
少し恐縮しつつ会釈して受け入れた。
内心では、たいまつをかざしてファイヤーダンスを踊っていたが、それを露わにするパルマではない。
「用意いたしますので、お待ちください」
【いいえ、私も】
いくらかの押し問答があったものの、結局2人してベッドや夜着を支度した。
【お休みなさい】
「お休みなさいませ」
そう言ってもすぐに眠りにつく2人ではない。
アラーナの板がはっきり見えるように、灯りを付けたままだ。
【最後に甘えたくなって】
「そうでしたか…」
【この前と前、一緒に寝たでしょう】
「え、ええ…」
どちらも熟睡したアラーナにパルマがいたずらしていた。
【あの時、良い夢を見たから】
「どんな夢だったのですか?」
「それは、ひ・み・つ」
2人してクスクスと笑う。
「もしかして公爵閣下の夢ですか?」
アラーナが頬を赤らめる。
「明日、こうしてアラーナ様の隣にいるのはどなたでしょうね」
分かっていて尋ねるパルマに、ますますアラーナは顔を赤くする。
【パルマったら、いじわるね】
「申し訳ありません」
口では謝っているが、パルマの顔はいたずらっぽく笑っていた。
アラーナも微笑んだものの、少し寂しい顔に変わる。
【パルマには随分お世話になりました】
「いえ、お世話をした覚えはありません。
パルマは首を振る。
アラーナは不思議そうな顔をした。
「結果としてお世話をしたかもしれませんが、私はしたいようにしただけです」
【そうなの?】
「私にとって一番大事なのがアラーナ様なのです」
【うーん、デュランは?】
パルマは「はん!」と大きく顔を振った。
「あんなのとは比べるまでもありません!」
【そんなこと言わないで】
「アラーナ様が、あんなのをかばうことありません!」
【デュランも頑張っているようですし】
「…まあ、そこまでおっしゃるのであれば…」
パルマが渋々納得した。
「それと、まだまだお世話させていただきますからね」
【それもそうね】
アラーナの結婚に伴い、パルマもワーレンバーグ公爵家に来るのは決まっている。
少なくとも、アラーナの声が戻るまでは。
「私は遠からずアラーナ様の声が戻ると信じています」
【そうだと良いのだけど…】
目を伏せがちにしたアラーナに「絶対です」とパルマは言い切った。
その後も昔話からワーレンバーグ公爵家での将来、そしてカルトメリ公爵との夜の相談など、話は尽きなかった。
「アラーナ様?」
ふとパルマが気が付くと、アラーナのまぶたが落ちて寝息を立てていた。
パルマはアラーナが手にした板をそっと取り上げると、枕元に置く。
丁寧に枕やシーツを整えてから、枕元の灯りを小さく絞った。
「おやすみなさいませ」
パルマも目を閉じた。
……言うまでもなく狸寝入りである。
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