200 / 250
第141話 託された手紙
しおりを挟む
「これがタルバン様…」
レビグラス・ブローブ子爵令嬢がクリスパ伯爵家の家族を描いた絵画に見入っている。
ただし10年以上前に描かれたものであり、タルバンもアラーナも10歳そこそこの子供。
「タルバン様のお顔の分かるものはございませんか?」
レビグラスの願いを受けてホルストが物置から持ってきた。
「あいにく最近のものはございませんので…」
アラーナが結婚して以降、そこそこ内装に手を入れ始めているクリスパ家。
それでも貴族の邸宅と言い切るには、そこかしこにボロが目立つ。
新たな絵画を頼むなどは、なかなかに難しい。
しかしレビグラスは絵画に見入ったままだ。
『アラーナ様は結婚している。でもタルバン伯爵なら…』
先日、王都で開催された結婚披露パーティー。
アラーナ(タルバン)を噴水に突き落とそうとして、逆に助けられたのがこのレビグラス。
その時からアラーナ(タルバン)のことが頭から離れなくなっていた。
もっとも、その出来事についてホルストは全く知らない。
「アラーナ様とタルバン様は本当にそっくりですのね」
「それは間違いなく…」
「それで…」
「はい?」
「その…」
「はい?」
「あの…」
「はい?」
「タルバン様は…」
一向に話が進まないのを見かねて、後ろに控えていたレビグラスの侍女が前に出て口を挟む。
「大変失礼ですが、タルバン・クリスパ伯爵様にお相手はおられますか?」
「ちょ、ちょっと、マノリナったら…」
レビグラスが侍女の袖を引く。
が、侍女であるマノリナは気にしない。
「お嬢様にお任せしたのでは、日が暮れてしまいますので」
「それは…」
2人を気にしながらホルストが答えた。
「アラーナ様のご結婚がきっかけで、少なからずお話はございました…」
レビグラスの顔が曇る。
「ただし、これと言ってお決まりになられた方はございません」
レビグラスの顔が晴れる。
そんな主人を見つつ、侍女が話しを続けた。
「もし差支えなければ、その辺りの事情をお伺いしても?」
「ねえ、マノリナ…」
侍女がレビグラスを振り返る。
「お嬢様が気にならないのであれば、これ以上お聞きしませんが?」
「いえ、その…」
ホルストが苦笑しつつも話を続ける。
「とりあえずはクリスパ領の立て直しを優先する、とおっしゃっていました」
「さようですか」
ホルストが両手を上げる。
「貴族のお嬢様をお迎えするのであれば、もう少しきれいにしたいものです」
レビグラスらがホルストに言われて周囲を見る。
誰からともなく「ああ」の声がもれた。
「ワーレンバーグ公爵家から少なからぬ援助があるとお伺いしておりますが?」
「それも含めて、領地や領民の支援を優先させております」
ホルストの言葉を聞いて、レビグラスが「まあ!」と声をあげる。
「とってもお優しいのですね」
「ええ、そうも言えますな」
苦笑するホルストにレビグラスが詰め寄る。
「どうしてもタルバン様にお会いしたいのです」
「それはどうにも…」
押し問答する2人にマノリナが割って入る。
「お嬢様、お手紙を書いてお渡ししてはいかがですか?」
「そうね」
そこからレビグラスがたっぷり思いを込めて書いた手紙をホルストが預かった。
「どうか、よろしくお願いいたします」
「かしこまりました」
馬車を見送ったホルストはラマナイトは休んでいる部屋に戻る。
「どうでした?」
「子爵令嬢様がタルバン様に、と」
ホルストが分厚い封筒を見せると、ラマナイトが微笑む。
「手紙と一緒に送りましょう。タルバン様なら悪いようにはしませんよ」
「ふむ」
ホルストはタルバンとパルマ宛てに手紙を書くと、ワーレンバーグ公爵家の騎士に依頼した。
レビグラス・ブローブ子爵令嬢がクリスパ伯爵家の家族を描いた絵画に見入っている。
ただし10年以上前に描かれたものであり、タルバンもアラーナも10歳そこそこの子供。
「タルバン様のお顔の分かるものはございませんか?」
レビグラスの願いを受けてホルストが物置から持ってきた。
「あいにく最近のものはございませんので…」
アラーナが結婚して以降、そこそこ内装に手を入れ始めているクリスパ家。
それでも貴族の邸宅と言い切るには、そこかしこにボロが目立つ。
新たな絵画を頼むなどは、なかなかに難しい。
しかしレビグラスは絵画に見入ったままだ。
『アラーナ様は結婚している。でもタルバン伯爵なら…』
先日、王都で開催された結婚披露パーティー。
アラーナ(タルバン)を噴水に突き落とそうとして、逆に助けられたのがこのレビグラス。
その時からアラーナ(タルバン)のことが頭から離れなくなっていた。
もっとも、その出来事についてホルストは全く知らない。
「アラーナ様とタルバン様は本当にそっくりですのね」
「それは間違いなく…」
「それで…」
「はい?」
「その…」
「はい?」
「あの…」
「はい?」
「タルバン様は…」
一向に話が進まないのを見かねて、後ろに控えていたレビグラスの侍女が前に出て口を挟む。
「大変失礼ですが、タルバン・クリスパ伯爵様にお相手はおられますか?」
「ちょ、ちょっと、マノリナったら…」
レビグラスが侍女の袖を引く。
が、侍女であるマノリナは気にしない。
「お嬢様にお任せしたのでは、日が暮れてしまいますので」
「それは…」
2人を気にしながらホルストが答えた。
「アラーナ様のご結婚がきっかけで、少なからずお話はございました…」
レビグラスの顔が曇る。
「ただし、これと言ってお決まりになられた方はございません」
レビグラスの顔が晴れる。
そんな主人を見つつ、侍女が話しを続けた。
「もし差支えなければ、その辺りの事情をお伺いしても?」
「ねえ、マノリナ…」
侍女がレビグラスを振り返る。
「お嬢様が気にならないのであれば、これ以上お聞きしませんが?」
「いえ、その…」
ホルストが苦笑しつつも話を続ける。
「とりあえずはクリスパ領の立て直しを優先する、とおっしゃっていました」
「さようですか」
ホルストが両手を上げる。
「貴族のお嬢様をお迎えするのであれば、もう少しきれいにしたいものです」
レビグラスらがホルストに言われて周囲を見る。
誰からともなく「ああ」の声がもれた。
「ワーレンバーグ公爵家から少なからぬ援助があるとお伺いしておりますが?」
「それも含めて、領地や領民の支援を優先させております」
ホルストの言葉を聞いて、レビグラスが「まあ!」と声をあげる。
「とってもお優しいのですね」
「ええ、そうも言えますな」
苦笑するホルストにレビグラスが詰め寄る。
「どうしてもタルバン様にお会いしたいのです」
「それはどうにも…」
押し問答する2人にマノリナが割って入る。
「お嬢様、お手紙を書いてお渡ししてはいかがですか?」
「そうね」
そこからレビグラスがたっぷり思いを込めて書いた手紙をホルストが預かった。
「どうか、よろしくお願いいたします」
「かしこまりました」
馬車を見送ったホルストはラマナイトは休んでいる部屋に戻る。
「どうでした?」
「子爵令嬢様がタルバン様に、と」
ホルストが分厚い封筒を見せると、ラマナイトが微笑む。
「手紙と一緒に送りましょう。タルバン様なら悪いようにはしませんよ」
「ふむ」
ホルストはタルバンとパルマ宛てに手紙を書くと、ワーレンバーグ公爵家の騎士に依頼した。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる