黒い森で魔女は微睡む

稲村うお

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黒い森の魔女

魔女 と 小さな客

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ダグルシュ王国北西部。
隣国との国境から少し離れた場所に黒い森は位置している。

魔物が出るなどと恐れられてはいるものの、森の中でも比較的町に近い手前の部分までは普通の人間でも入ることが許されているとされていた。
これには「より深い場所に比べればまあ安全」という意味合いも確かにあったのだけれども、深いところまで入ることができる人間がそもそもそう多くはないことが主な理由でもあった。

ここに住む魔女______彼女は人間と交わることをあまり良しとしていない。
人間嫌いとの噂もあるが実の所、彼女は人間が苦手だった。コミュニケーションというものが下手なのだ。

そのため、魔女は森の入口辺りに生息している妖精に定期的に対価を払うことで自分の居住域にまで人間が入ってこないよう見張りを頼んでいたのだが、基本的には一応約束を守る彼らは時々人間を魔女の元へ意図的に辿り着かせた。
妖精は気まぐれな存在なのだ。

騎士が街へと帰っていき、とっぷりと日が暮れた頃。
すっかり静かになった魔女の家のドアを誰かがとん、とん、と弱々しくノックした。

「……どちら様で?」
「ま、魔女さんはいらっしゃいますか!」

高い子供の声がドアの向こうから聞こえてきた。
硬さを帯びたその声に魔女は、少し戸惑いながらドアノブに手を伸ばした。

「入って。要件はそれから聞きます」

三日月の輝く晩、拳を握りしめた小さな客人はドアから覗いた魔女の顔をぎっと力いっぱいに見上げていた。
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