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【2日目】4/26-②
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授業が終わって、待ち合わせまでに時間があることもまずない。
共に学校を出て、そのまま放課後デート。それが通常のコースであるが、待ち合わせまで二時間もある場合は何をして待てばよいのやら、それを考えることも新しい発見かと、郁はまず、平野公園へと向かった。待ち合わせ時間が差し迫って焦ることのないよう、近場で待機しておく選択をする。
付近には大きな寺社仏閣があり、観光客で賑わう様をぼんやりと眺めたり、ずらりと居並ぶ飲食店から漂う香りを堪能したりと、普段行かない方面であるだけに新たな発見は多々あった。今度行ってみたいと思える店も何軒かあって、郁は携帯に店名をメモする。
平野公園は、住宅地にある。
少し早めに着いたので、小学生や母親に連れられた幼い子供がまだ遊んでいた。滑り台を陣取る訳にはいかず、昨日腰をおろしたベンチに座る。
(まだ、一時間近くあるか)
ぼんやりと携帯を眺めていたら直ぐに経つ時間ではあったが、郁は宿題を済ませてしまうことにした。ベンチを跨ぐようにして座り、少し疲れるが前傾姿勢で英語の宿題を始める。ここへ来がてら近くのカフェを検索してみたが、正直、財布に痛かった。暑くも寒くもない候、ベンチで十分だ。
子供の声が妙に心地良く、邪魔にならず、意外にも宿題は捗った。
陽は傾き、夕暮れ時を告げる。帰り支度を始める小学生の話に耳を傾けていると、一人の子が日曜日に遊園地に行く予定をしているらしく、羨望を一身に受けていた。
(そっか、三連休だ)
忘れてた、と郁は彼らの話を盗み聞きしながらその事実を思い出す。土日と祝日の月曜日で、明日から三連休に入る。郁達の高校では、土曜日に半日授業がある為に明日から休みに入るという感覚はなかったが、今日は三連休を迎える前日の金曜日、テンションは本来マックスだ。
(それが明けたら三日行って、また四連休。最高)
喜びは段々と声高になっていくことで表れ、小学生達は幸せそうに帰路へと向かう。見ているこちらまで幸せな気持ちになる。
彼らの声が遠くなっていき、やはりぽつんと一人残される羽目になると、郁は徐に立ち上がり、滑り台へと向かった。遠くまで見渡せる為、佐藤の到着にも直ぐに気付ける。
車の行き交う音が雑音として聞こえる程度で、辺りは静まり返っている。普段から閑静な住宅街なのだろう、昨日も静かだったことを思い出しながら、郁は茜空を見上げた。
(病院)
しんみりとした心持で一時間後のことを思うと、ざわり、と胸に緊張が走る。
両親が亡くなってからこちら、小さな町医者には風邪で世話になったことはあるものの、大きな病院とは無縁の暮らしをしてきた。否、避けて生きてきた。こうして今でも思い出すことが出来るあの時あの瞬間の光景が、病院という場所に身を置くことでより鮮明に思い起こされることを恐れてきた。
だが、いつまでも病院を避けて通ることは出来ない。
それはいつ何時、ひょっこりと顔を出すか分かったものではない。例えば今この瞬間、志穂が事故にあって病院に運び込まれたと聞かされたとして、病院が怖いから見舞いに行かないという選択をするのか。直ぐにでも駆け付けたい状況の中で、病院に行ったら両親のことを思い出してしまうかもしれない、などという思いが頭を過って、ただの一瞬でも躊躇うことは、郁の中では許されることではない。大切な親友の元へ駆けつけることを躊躇う自分でありたくない。
病院に駆けつけなければならない状況になど、ならぬが良い。しかし、いつ訪れるとも分からないものだ。それが唐突に訪れるものであることを、郁は誰よりもよく知っている。
「お待たせ」
はっと我に返ると、滑り台の下に佐藤が立っていた。いつの間に来たのか、見晴らしの良い所にいた割に、心ここにあらずで視界に入っていなかったらしい。
「あれ、今日は汚くない」
郁が笑うと、佐藤は肩を竦めるようにして噴き出す。
「汚いって、言い方。今日は学習したの。着替え持って行った」
「毎日そうしなよ」
「帰るだけなのに着替えるの、洗濯物増やすだけじゃない? 着替えるとこだってないし」
ジーパンにトレーナーという極めてシンプルな出で立ちではあったが、それでも昨日のことを思えば小綺麗な姿をした佐藤は、昨日と同じ帽子を被っている。
「今日はどこで着替えたの? それに、もてないよ。清潔感、清潔感」
「お手洗い借りた時に着替えたけど、着替えにくかった。彼女が欲しくなったら、有難くご忠告に従う」
郁は滑り台を指でなぞり、佐藤を見遣る。郁の言いたいことを察したのか、佐藤もまた、すっと滑り台を指先でなぞった。
「今日は、滑るんじゃない?」
「じゃあ、行くよー」
郁はスカートの前を押さえて、前のめりになる。乾いた滑り台は想像以上に滑りが良く、郁はひっ、と小さく喉の奥で声を上げた。足をつくことは出来たが、反動で体が前に飛び出す。ぎょっとしたのは佐藤も同じだったようで、三歩後ろに下がった佐藤の体に向かって、郁は頭から突っ込んだ。
「いったぁ!?」
何とか地面にダイブという醜態を晒さずに済んだものの、頭に壁で激突したような衝撃があって、郁はしゃがみ込んで頭を抱える。佐藤は佐藤で無防備な腹に頭突きを喰らい、同じく蹲った。
「食った後だったら吐いてるっ」
佐藤は腹を抱えるようにして悶絶している。郁が頭を摩りながら顔を上げると、想像より遥かに近いところに佐藤の顔があり、驚きのあまり郁は息を詰めた。目が合うと、佐藤は佐藤であちらも驚いたように目を丸くして、一瞬言葉を失い、どっと後ろに座り込むことで距離をとった。顔が物理的に離れて、郁はようやく息をする。
「……そっちは、大丈夫?」
問われて、郁はごくりと唾を飲み込み、心を落ち着かせてから答える。
「あー、まあなんとか。そっちは?」
「痣になる予感がある」
「それはほんと、申し訳ない」
「いえいえ」
ふはっ、と佐藤が笑ったので、郁はほっと胸を撫でおろした。怒ってはいないらしい。
「あー、さてと。調子はどう?」
佐藤は立ち上がりながら、不思議なことを聞いてくる。
「調子って?」
郁も立ち上がり、近くに転がる鞄を拾い上げながら問うた。
「病院、行けそう? 苦手って言ってたから」
「ああ。大丈夫大丈夫。多分」
「多分」
苦く笑いながらも、佐藤は進むべき方へと体を向けた。自然と歩き出すので、郁はそれに続く。
「君は病室の外から、顔だけちらっと見せてくれたらさ、大丈夫だから」
「うん、分かった」
昨日と同じ道を辿って、昨日と同じコンビニに出る。佐藤はやはりコンビニに寄り、郁が外で映画の告知広告をぼんやり眺めている間にリンゴジュースとホットコーヒー、そしてチョコを買って出て来た。
「これ、付き合って貰う御礼」
「あー。ありがとう」
ホットコーヒーを受け取りながら、リンゴジュースを脇に挟んでチョコの包みを開ける佐藤に、郁は問う。
「ほんと、好きなんだね。リンゴジュース」
「んー? ああ、まあ、そもそも好きは好きなんだけど。母親がいつも買ってくれてたやつで」
郁にチョコレートを一つ差し出し、佐藤は自分の口にも一つ放り込み歩き出す。
「これ持ってる俺を見ると、やっぱり子供だなって顔して笑うんだよね」
言われて、はっと郁は言葉を失う。佐藤は笑っているが、なんだかとても重い言葉を投げられたような気がして、次に口にすべき言葉が浮かばない。そんな郁に気付いてか気遣ってか、佐藤はへらっと笑った。
「母親やつれてるから、ほんと、見せるのもなんか申し訳ないんだけど。気にしないで、ほんと。お詫びにさ、何か出来ることある?」
「お詫び?」
「何したらお詫び、というか、御礼かな。……御礼、そう、御礼だ。今日の御礼がしたいから、何でも言って」
御礼、と郁は喉の奥で低く復唱し、空を見上げる。それは、何かご馳走してくれるということだろうか。
「私ね、佐藤君の前に多分二十人くらい? 十日間の彼氏がいたわけ」
「なに、唐突に」
はは、と佐藤は笑う。校内の人間であればともかく、通常は苦い顔をするところではと思ったが、佐藤は気にする様子なく、否、興味がないのかあっけらかんと笑っている。
「その歴代の彼氏達は同じ学校の高校生だったわけね。で、十日間の間には必ず土日があるわけなの」
「そうなるね」
「土日ってなると、ちょっとどこかに出かけようって発想になると思うんだけど、そうはいっても出かけるのってお金がいるわけ。遊園地に行こうってなると、高校生の財布には痛々しいお金が必要よね」
「まぁね」
佐藤が選ぶ道をちらりと見遣り、確認しながら郁は佐藤に続く。
「私、私の分も払ってくれって言いたくないの。自分で出す前提で考えて、どのくらいのお金がかかるか分かるから、自分から遊園地に行きたい、とは言わないの。相手が同じ高校生で、同じような懐具合で、遊園地代出してよなんて図々しくなれないし、自分の懐痛めてまで行きたいかと言われると、そうでもない。だから、こちらから提案しないし、提案されても行かない」
佐藤はんー、と小首を傾げる。
信号で一度立ち止まり、また歩き出す。一歩前を行く佐藤の背を追う郁を、佐藤は信号を渡り終えた場所で振り返った。
「……つまり、同じ懐具合じゃないと思われる一応社会人の俺相手に、遊園地に行きたいから奢ってと言ってみたい?」
郁は噴き出すように笑う。
「あはっ、いや、そうじゃないけど! 深読みしすぎしすぎ!」
「えー? それじゃ何?」
「つまりは、どうしたいとか、何して欲しいとか、聞かれるのがあんまり好きじゃないって話なんだけど。何を言ってもどこに行ってもお金がかかるから、お金がかからない所がいい、って答えるしかない。でも、自宅は困る。じゃあどこよ? って、あっちも困る」
「考えて提案して欲しいって話?」
「私の金銭感覚を披露しつつ、配慮を求めますって話」
佐藤はチョコの包みを順当に開けつつ、郁を見る。もう大丈夫と小さく首を振って辞退を示すと、それをやはり口に放り込む。
「とりあえず遊園地は愚の骨頂って話ね?」
「それはご推察の通りで合ってる」
難しいな、と佐藤が笑うと、郁はホットコーヒーのプルタブをようやく引きながら言う。
「私を喜ばせようと思って、どこに行きたい、何をしたいって聞いてくれるのは嬉しいんだけど。あちらにとっては十日間、一度しかない土日で奮発してでもって気持ちは分からないではないけど、私にしてみると、それが彼氏が代わる度に定期的にくるの。遊園地だの、映画だの、水族館だの? 毎回そんなお金かかる提案されたって、こちらとしては、……ねえ?」
「それって奢るからって言われても、やっぱり嫌なの?」
郁は、今まさに御馳走になっているカフェオレ缶に一度目を落とす。
「ジュースの一本くらいなら有難く頂戴するんだけど、奢られるのは割と抵抗ある方かな。楽しめない」
「お金のかからない有難い彼女って言ったらそうなんだけどねぇ」
「割と難しいでしょ。割り勘がいいけど、お金ないの、って。じゃあどうしろって話で、皆結構頭悩ませてきたわ、歴代彼氏達」
自分でも、自分の面倒な部分であるという自覚はある。
「で、大体どこで過ごす事になるの? 土日」
当然の疑問を投げかけてくる佐藤に、郁は間髪入れずに答える。
「カフェ」
「そうなるわな」
「私もこれに関しては最高の答えが見つからないの。だから、何がしたいって聞かれるのが嫌い。……ううん、嫌いじゃなくて、考えることが最早面倒、が一番近いかな」
なるほどね、と佐藤はチョコをまた一つ、口へ運ぶ。あっという間に食べきったチョコレートの包みを全て、やはりお尻のポケットに突っ込んだ。
「じゃ、これはどう?」
「最高の提案を期待していい?」
「いや、それは困るけど」
はは、と笑いながら、佐藤は肩にかけた鞄を漁る。昨日は手ぶらだったが、今日は脱いだ仕事着が入っていると推察される少し大きめの鞄を提げていた。折り畳みの使いこまれた黒い財布から何かを取り出す。
「タダ券」
佐藤が二枚の紙を郁に向かって差し出してくる。受け取ってみると、映画観賞券だった。
「タダ券……」
想像を超えてくるものを出され、郁は暫し言葉を失う。
「お互いの懐を痛めることなく、奢り奢られ論も発生しない最高のアイテムじゃない?」
確かに無料で映画が見られるという意味では奢られるのと同じだが、目の前でお金が支払われるわけではなく、佐藤自身が懐を痛めているわけでもないとなると、なんとなく、行っても良いかなという気にさせられる。
「どうしたの、これ」
「結構前に貰ったんだけど、行く相手も行く時間もなくて。無駄になるなと思ってたから、使ってくれると有難い」
使用期限が差し迫っているのを確認して、郁は苦く笑う。
「行くなら、明日か明後日しかないね」
「空いてない?」
「そりゃ、空けてるけど」
彼氏がいる週の週末は、基本的に予定を入れないことにしている。土日を開けておくことが、十日間しか付き合わない相手への誠意の形であると、郁の一つのポリシーである。
「予定の合う友達いなかったら、一人で二回って手もある。見たいものがあればだけど」
「え、……佐藤君と行くんじゃなくて?」
「え?」
目を丸くする郁に、佐藤もまたきょとんとした顔をする。
暫しの沈黙が落ち、郁はまじまじとチケットを見つめ、また佐藤に視線を向ける。
「え? 誘われてるんだと思ったんだけど」
「……あ、いや。今日の御礼にと、思って。受け取ってもいいと思えるものだったら、あげようと思っただけ」
しん、とまたしても沈黙が落ちる。
思いもよらない展開に、郁はチケットを見つめながら、次第に可笑しくなってきて噴き出すように笑った。
「普通、彼女に映画のチケット渡して誰か他の人と行けって、そんな話ある?」
「そう言われたらまぁ、そうね」
「佐藤君、私が今彼女だって認識、流石にちょっと薄過ぎない? お母さんの為とは言っても、そっちから声かけてきたんだけど?」
「すみません」
殊勝に頭を下げる佐藤が可笑しくて、郁は威張るように胸を張る。
「罰として、映画に付き合いなさい」
「えー、いつですかぁ」
「彼女にえー、って何よ、えーって!?」
不満そうに言われたのは初めてで、郁は目を剥く。あちらから誘って来ても金銭的な問題で受け入れてこなかったというのに、こちらに受け入れ態勢があり、あちらに行く気がないとはこれいかに。
「うそうそ、いつご所望でしょうかー、彼女さん」
「明日の午後からをご所望です、彼氏さん」
むすっとして言う郁の顔を、佐藤は困ったように笑いながら覗き込んでくる。志穂の言うところの恋人としての誠意のあるなしで言えば、今の発言は明らかに「誠意なし」だ。
「すみません、明日は仕事でして。ナイトだと門限に引っかかるかと思いますので、明後日はいかがでしょうか」
「……じゃあ、日曜の朝一」
「了解しました」
ほっとしたように言う佐藤に、郁は苦く笑う。郁の機嫌を損ねたかと困った顔をしてくれただけで、とりあえず溜飲は下がる。
まさかの無料チケットが出てくるとは夢にも思わなかったが、最近では金銭的な問題もあってお金がかかる遊びは辞退してきただけに、映画なるものが随分と久しぶりで、正直、胸が高鳴る。
「あ、やっぱり朝一じゃなくて。ご飯とか食べながら何見るか一緒に決めようよ。それからでどう? 日曜は一日大丈夫?」
「いいよ。その日は付き合う」
御礼だし、と佐藤は笑う。
「因みに、一日で使えるデート代は幾らを想定してるの?」
「千五百円」
きっぱりと言い放つ郁に、佐藤は茶化すでもなく言った。
「配慮します」
「お願いします」
ふふと郁が笑うと、佐藤も笑った。馬鹿にされるかと身構えたのが嘘のように、佐藤は嫌味のない笑顔のままだ。
今どきの高校生の金銭感覚ではないという自覚はある。そんな金額じゃ何も出来ないと言われたのは一回や二回ではないし、確かにと郁にも思う所はある。だが、アルバイトもしていない郁としては、現実問題として、ない袖は振れない。それをあっさりと眉を顰めるでなく受け入れてくれたのは初めてのことで、佐藤の嫌味ない笑顔は我知らず、郁の心をふわりと軽くした。
共に学校を出て、そのまま放課後デート。それが通常のコースであるが、待ち合わせまで二時間もある場合は何をして待てばよいのやら、それを考えることも新しい発見かと、郁はまず、平野公園へと向かった。待ち合わせ時間が差し迫って焦ることのないよう、近場で待機しておく選択をする。
付近には大きな寺社仏閣があり、観光客で賑わう様をぼんやりと眺めたり、ずらりと居並ぶ飲食店から漂う香りを堪能したりと、普段行かない方面であるだけに新たな発見は多々あった。今度行ってみたいと思える店も何軒かあって、郁は携帯に店名をメモする。
平野公園は、住宅地にある。
少し早めに着いたので、小学生や母親に連れられた幼い子供がまだ遊んでいた。滑り台を陣取る訳にはいかず、昨日腰をおろしたベンチに座る。
(まだ、一時間近くあるか)
ぼんやりと携帯を眺めていたら直ぐに経つ時間ではあったが、郁は宿題を済ませてしまうことにした。ベンチを跨ぐようにして座り、少し疲れるが前傾姿勢で英語の宿題を始める。ここへ来がてら近くのカフェを検索してみたが、正直、財布に痛かった。暑くも寒くもない候、ベンチで十分だ。
子供の声が妙に心地良く、邪魔にならず、意外にも宿題は捗った。
陽は傾き、夕暮れ時を告げる。帰り支度を始める小学生の話に耳を傾けていると、一人の子が日曜日に遊園地に行く予定をしているらしく、羨望を一身に受けていた。
(そっか、三連休だ)
忘れてた、と郁は彼らの話を盗み聞きしながらその事実を思い出す。土日と祝日の月曜日で、明日から三連休に入る。郁達の高校では、土曜日に半日授業がある為に明日から休みに入るという感覚はなかったが、今日は三連休を迎える前日の金曜日、テンションは本来マックスだ。
(それが明けたら三日行って、また四連休。最高)
喜びは段々と声高になっていくことで表れ、小学生達は幸せそうに帰路へと向かう。見ているこちらまで幸せな気持ちになる。
彼らの声が遠くなっていき、やはりぽつんと一人残される羽目になると、郁は徐に立ち上がり、滑り台へと向かった。遠くまで見渡せる為、佐藤の到着にも直ぐに気付ける。
車の行き交う音が雑音として聞こえる程度で、辺りは静まり返っている。普段から閑静な住宅街なのだろう、昨日も静かだったことを思い出しながら、郁は茜空を見上げた。
(病院)
しんみりとした心持で一時間後のことを思うと、ざわり、と胸に緊張が走る。
両親が亡くなってからこちら、小さな町医者には風邪で世話になったことはあるものの、大きな病院とは無縁の暮らしをしてきた。否、避けて生きてきた。こうして今でも思い出すことが出来るあの時あの瞬間の光景が、病院という場所に身を置くことでより鮮明に思い起こされることを恐れてきた。
だが、いつまでも病院を避けて通ることは出来ない。
それはいつ何時、ひょっこりと顔を出すか分かったものではない。例えば今この瞬間、志穂が事故にあって病院に運び込まれたと聞かされたとして、病院が怖いから見舞いに行かないという選択をするのか。直ぐにでも駆け付けたい状況の中で、病院に行ったら両親のことを思い出してしまうかもしれない、などという思いが頭を過って、ただの一瞬でも躊躇うことは、郁の中では許されることではない。大切な親友の元へ駆けつけることを躊躇う自分でありたくない。
病院に駆けつけなければならない状況になど、ならぬが良い。しかし、いつ訪れるとも分からないものだ。それが唐突に訪れるものであることを、郁は誰よりもよく知っている。
「お待たせ」
はっと我に返ると、滑り台の下に佐藤が立っていた。いつの間に来たのか、見晴らしの良い所にいた割に、心ここにあらずで視界に入っていなかったらしい。
「あれ、今日は汚くない」
郁が笑うと、佐藤は肩を竦めるようにして噴き出す。
「汚いって、言い方。今日は学習したの。着替え持って行った」
「毎日そうしなよ」
「帰るだけなのに着替えるの、洗濯物増やすだけじゃない? 着替えるとこだってないし」
ジーパンにトレーナーという極めてシンプルな出で立ちではあったが、それでも昨日のことを思えば小綺麗な姿をした佐藤は、昨日と同じ帽子を被っている。
「今日はどこで着替えたの? それに、もてないよ。清潔感、清潔感」
「お手洗い借りた時に着替えたけど、着替えにくかった。彼女が欲しくなったら、有難くご忠告に従う」
郁は滑り台を指でなぞり、佐藤を見遣る。郁の言いたいことを察したのか、佐藤もまた、すっと滑り台を指先でなぞった。
「今日は、滑るんじゃない?」
「じゃあ、行くよー」
郁はスカートの前を押さえて、前のめりになる。乾いた滑り台は想像以上に滑りが良く、郁はひっ、と小さく喉の奥で声を上げた。足をつくことは出来たが、反動で体が前に飛び出す。ぎょっとしたのは佐藤も同じだったようで、三歩後ろに下がった佐藤の体に向かって、郁は頭から突っ込んだ。
「いったぁ!?」
何とか地面にダイブという醜態を晒さずに済んだものの、頭に壁で激突したような衝撃があって、郁はしゃがみ込んで頭を抱える。佐藤は佐藤で無防備な腹に頭突きを喰らい、同じく蹲った。
「食った後だったら吐いてるっ」
佐藤は腹を抱えるようにして悶絶している。郁が頭を摩りながら顔を上げると、想像より遥かに近いところに佐藤の顔があり、驚きのあまり郁は息を詰めた。目が合うと、佐藤は佐藤であちらも驚いたように目を丸くして、一瞬言葉を失い、どっと後ろに座り込むことで距離をとった。顔が物理的に離れて、郁はようやく息をする。
「……そっちは、大丈夫?」
問われて、郁はごくりと唾を飲み込み、心を落ち着かせてから答える。
「あー、まあなんとか。そっちは?」
「痣になる予感がある」
「それはほんと、申し訳ない」
「いえいえ」
ふはっ、と佐藤が笑ったので、郁はほっと胸を撫でおろした。怒ってはいないらしい。
「あー、さてと。調子はどう?」
佐藤は立ち上がりながら、不思議なことを聞いてくる。
「調子って?」
郁も立ち上がり、近くに転がる鞄を拾い上げながら問うた。
「病院、行けそう? 苦手って言ってたから」
「ああ。大丈夫大丈夫。多分」
「多分」
苦く笑いながらも、佐藤は進むべき方へと体を向けた。自然と歩き出すので、郁はそれに続く。
「君は病室の外から、顔だけちらっと見せてくれたらさ、大丈夫だから」
「うん、分かった」
昨日と同じ道を辿って、昨日と同じコンビニに出る。佐藤はやはりコンビニに寄り、郁が外で映画の告知広告をぼんやり眺めている間にリンゴジュースとホットコーヒー、そしてチョコを買って出て来た。
「これ、付き合って貰う御礼」
「あー。ありがとう」
ホットコーヒーを受け取りながら、リンゴジュースを脇に挟んでチョコの包みを開ける佐藤に、郁は問う。
「ほんと、好きなんだね。リンゴジュース」
「んー? ああ、まあ、そもそも好きは好きなんだけど。母親がいつも買ってくれてたやつで」
郁にチョコレートを一つ差し出し、佐藤は自分の口にも一つ放り込み歩き出す。
「これ持ってる俺を見ると、やっぱり子供だなって顔して笑うんだよね」
言われて、はっと郁は言葉を失う。佐藤は笑っているが、なんだかとても重い言葉を投げられたような気がして、次に口にすべき言葉が浮かばない。そんな郁に気付いてか気遣ってか、佐藤はへらっと笑った。
「母親やつれてるから、ほんと、見せるのもなんか申し訳ないんだけど。気にしないで、ほんと。お詫びにさ、何か出来ることある?」
「お詫び?」
「何したらお詫び、というか、御礼かな。……御礼、そう、御礼だ。今日の御礼がしたいから、何でも言って」
御礼、と郁は喉の奥で低く復唱し、空を見上げる。それは、何かご馳走してくれるということだろうか。
「私ね、佐藤君の前に多分二十人くらい? 十日間の彼氏がいたわけ」
「なに、唐突に」
はは、と佐藤は笑う。校内の人間であればともかく、通常は苦い顔をするところではと思ったが、佐藤は気にする様子なく、否、興味がないのかあっけらかんと笑っている。
「その歴代の彼氏達は同じ学校の高校生だったわけね。で、十日間の間には必ず土日があるわけなの」
「そうなるね」
「土日ってなると、ちょっとどこかに出かけようって発想になると思うんだけど、そうはいっても出かけるのってお金がいるわけ。遊園地に行こうってなると、高校生の財布には痛々しいお金が必要よね」
「まぁね」
佐藤が選ぶ道をちらりと見遣り、確認しながら郁は佐藤に続く。
「私、私の分も払ってくれって言いたくないの。自分で出す前提で考えて、どのくらいのお金がかかるか分かるから、自分から遊園地に行きたい、とは言わないの。相手が同じ高校生で、同じような懐具合で、遊園地代出してよなんて図々しくなれないし、自分の懐痛めてまで行きたいかと言われると、そうでもない。だから、こちらから提案しないし、提案されても行かない」
佐藤はんー、と小首を傾げる。
信号で一度立ち止まり、また歩き出す。一歩前を行く佐藤の背を追う郁を、佐藤は信号を渡り終えた場所で振り返った。
「……つまり、同じ懐具合じゃないと思われる一応社会人の俺相手に、遊園地に行きたいから奢ってと言ってみたい?」
郁は噴き出すように笑う。
「あはっ、いや、そうじゃないけど! 深読みしすぎしすぎ!」
「えー? それじゃ何?」
「つまりは、どうしたいとか、何して欲しいとか、聞かれるのがあんまり好きじゃないって話なんだけど。何を言ってもどこに行ってもお金がかかるから、お金がかからない所がいい、って答えるしかない。でも、自宅は困る。じゃあどこよ? って、あっちも困る」
「考えて提案して欲しいって話?」
「私の金銭感覚を披露しつつ、配慮を求めますって話」
佐藤はチョコの包みを順当に開けつつ、郁を見る。もう大丈夫と小さく首を振って辞退を示すと、それをやはり口に放り込む。
「とりあえず遊園地は愚の骨頂って話ね?」
「それはご推察の通りで合ってる」
難しいな、と佐藤が笑うと、郁はホットコーヒーのプルタブをようやく引きながら言う。
「私を喜ばせようと思って、どこに行きたい、何をしたいって聞いてくれるのは嬉しいんだけど。あちらにとっては十日間、一度しかない土日で奮発してでもって気持ちは分からないではないけど、私にしてみると、それが彼氏が代わる度に定期的にくるの。遊園地だの、映画だの、水族館だの? 毎回そんなお金かかる提案されたって、こちらとしては、……ねえ?」
「それって奢るからって言われても、やっぱり嫌なの?」
郁は、今まさに御馳走になっているカフェオレ缶に一度目を落とす。
「ジュースの一本くらいなら有難く頂戴するんだけど、奢られるのは割と抵抗ある方かな。楽しめない」
「お金のかからない有難い彼女って言ったらそうなんだけどねぇ」
「割と難しいでしょ。割り勘がいいけど、お金ないの、って。じゃあどうしろって話で、皆結構頭悩ませてきたわ、歴代彼氏達」
自分でも、自分の面倒な部分であるという自覚はある。
「で、大体どこで過ごす事になるの? 土日」
当然の疑問を投げかけてくる佐藤に、郁は間髪入れずに答える。
「カフェ」
「そうなるわな」
「私もこれに関しては最高の答えが見つからないの。だから、何がしたいって聞かれるのが嫌い。……ううん、嫌いじゃなくて、考えることが最早面倒、が一番近いかな」
なるほどね、と佐藤はチョコをまた一つ、口へ運ぶ。あっという間に食べきったチョコレートの包みを全て、やはりお尻のポケットに突っ込んだ。
「じゃ、これはどう?」
「最高の提案を期待していい?」
「いや、それは困るけど」
はは、と笑いながら、佐藤は肩にかけた鞄を漁る。昨日は手ぶらだったが、今日は脱いだ仕事着が入っていると推察される少し大きめの鞄を提げていた。折り畳みの使いこまれた黒い財布から何かを取り出す。
「タダ券」
佐藤が二枚の紙を郁に向かって差し出してくる。受け取ってみると、映画観賞券だった。
「タダ券……」
想像を超えてくるものを出され、郁は暫し言葉を失う。
「お互いの懐を痛めることなく、奢り奢られ論も発生しない最高のアイテムじゃない?」
確かに無料で映画が見られるという意味では奢られるのと同じだが、目の前でお金が支払われるわけではなく、佐藤自身が懐を痛めているわけでもないとなると、なんとなく、行っても良いかなという気にさせられる。
「どうしたの、これ」
「結構前に貰ったんだけど、行く相手も行く時間もなくて。無駄になるなと思ってたから、使ってくれると有難い」
使用期限が差し迫っているのを確認して、郁は苦く笑う。
「行くなら、明日か明後日しかないね」
「空いてない?」
「そりゃ、空けてるけど」
彼氏がいる週の週末は、基本的に予定を入れないことにしている。土日を開けておくことが、十日間しか付き合わない相手への誠意の形であると、郁の一つのポリシーである。
「予定の合う友達いなかったら、一人で二回って手もある。見たいものがあればだけど」
「え、……佐藤君と行くんじゃなくて?」
「え?」
目を丸くする郁に、佐藤もまたきょとんとした顔をする。
暫しの沈黙が落ち、郁はまじまじとチケットを見つめ、また佐藤に視線を向ける。
「え? 誘われてるんだと思ったんだけど」
「……あ、いや。今日の御礼にと、思って。受け取ってもいいと思えるものだったら、あげようと思っただけ」
しん、とまたしても沈黙が落ちる。
思いもよらない展開に、郁はチケットを見つめながら、次第に可笑しくなってきて噴き出すように笑った。
「普通、彼女に映画のチケット渡して誰か他の人と行けって、そんな話ある?」
「そう言われたらまぁ、そうね」
「佐藤君、私が今彼女だって認識、流石にちょっと薄過ぎない? お母さんの為とは言っても、そっちから声かけてきたんだけど?」
「すみません」
殊勝に頭を下げる佐藤が可笑しくて、郁は威張るように胸を張る。
「罰として、映画に付き合いなさい」
「えー、いつですかぁ」
「彼女にえー、って何よ、えーって!?」
不満そうに言われたのは初めてで、郁は目を剥く。あちらから誘って来ても金銭的な問題で受け入れてこなかったというのに、こちらに受け入れ態勢があり、あちらに行く気がないとはこれいかに。
「うそうそ、いつご所望でしょうかー、彼女さん」
「明日の午後からをご所望です、彼氏さん」
むすっとして言う郁の顔を、佐藤は困ったように笑いながら覗き込んでくる。志穂の言うところの恋人としての誠意のあるなしで言えば、今の発言は明らかに「誠意なし」だ。
「すみません、明日は仕事でして。ナイトだと門限に引っかかるかと思いますので、明後日はいかがでしょうか」
「……じゃあ、日曜の朝一」
「了解しました」
ほっとしたように言う佐藤に、郁は苦く笑う。郁の機嫌を損ねたかと困った顔をしてくれただけで、とりあえず溜飲は下がる。
まさかの無料チケットが出てくるとは夢にも思わなかったが、最近では金銭的な問題もあってお金がかかる遊びは辞退してきただけに、映画なるものが随分と久しぶりで、正直、胸が高鳴る。
「あ、やっぱり朝一じゃなくて。ご飯とか食べながら何見るか一緒に決めようよ。それからでどう? 日曜は一日大丈夫?」
「いいよ。その日は付き合う」
御礼だし、と佐藤は笑う。
「因みに、一日で使えるデート代は幾らを想定してるの?」
「千五百円」
きっぱりと言い放つ郁に、佐藤は茶化すでもなく言った。
「配慮します」
「お願いします」
ふふと郁が笑うと、佐藤も笑った。馬鹿にされるかと身構えたのが嘘のように、佐藤は嫌味のない笑顔のままだ。
今どきの高校生の金銭感覚ではないという自覚はある。そんな金額じゃ何も出来ないと言われたのは一回や二回ではないし、確かにと郁にも思う所はある。だが、アルバイトもしていない郁としては、現実問題として、ない袖は振れない。それをあっさりと眉を顰めるでなく受け入れてくれたのは初めてのことで、佐藤の嫌味ない笑顔は我知らず、郁の心をふわりと軽くした。
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