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第五章 しん愛編
163. 激化
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アークとファバニールの戦いは激化の一途を辿っていた。
氷がまるで星のように空を覆い尽くし、炎によって落とされる。
砂漠を彷彿とさせる真昼の灼熱と、同様に砂漠を彷彿とさせる真夜中の冷気。
感覚を狂わす。
アークとファバニールは一歩も引かない攻防を繰り広げていた。
ファバニールの咆哮が威嚇を超えて、攻撃となる。
「グオォォォォン――」
事実、ファバニールは咆哮に魔力を込めて攻撃していた。
普通の人間ならば、その咆哮に本能的な恐怖を覚え、体が硬直してしまって一歩も動けなくなるだろう。
しかし、アークには効かない。
アークは鈍感なのだ。
その程度の威嚇攻撃ものともしない。
だがアークの攻撃もファバニールに届いているとはいいづらい状況であった。
「ちっ。硬いやつめ」
巨躯なる生物の体には、無数の傷があった。
どれも致命傷とはいかないが、中には深い傷もあった。
竜の王にここまで傷を負わせたのは、さすがアークというべきか。
しかし、そんなアークでさえもファバニールとの戦いは決して楽なものではなかった。
竜の息吹をまともに受ければ、全身が灼熱に覆われ焼け焦げしてしまう。
もともと一人で戦うには無理がある相手である。
逆に、アークが一人で戦っていなければ甚大な被害が生じていたのも事実であるが……。
アークは一人でよく戦っていた。
しかし、それでも人間一人では限界がある。
アークに限界が訪れていた。
限界に達していた状態から、まさか戦い続けるアークは異常だった。
それはファバニールにとって想定外であった。
その執念に感服さえしていた。
だが想定外であったものの、ファバニールにはまだまだ余力があった。
「はあ……はあ……」
珍しくアークが肩で息をしていた。
いつもは飄々としているアークだが、さすがに危機感を覚えているようだった。
だが、しかし、
「ふははははははっ!」
アークが狂ったように笑った。
正気を失ったのか?
否――。
アークとは、もともと正気を失っているようなものだ。
「ふははははっ! オレはアーク・ノーヤダーマだ! オレが負けることは、絶対にない!!」
こんな状況でもアークはアークだった。
◇ ◇ ◇
強いな。
実に強い。
非常に強い。
オレが今まで戦ってきた中で、間違いなくこの竜は最強といえた。
どうやればこいつを倒せるのか、まったく想像つかん。
魔石は尽きた。
魔力も尽きかけている。
クリスタル・エーテルも持ってきていない。
ニブルヘイム・ゼロが通用する相手でもなれけば、アブソリュート・ゼロが効く相手でもない。
ここまで打つ手がないのは久しぶりだな!
いや、初めてといってもいいだろう!
ふははははっ。
だが、オレは負けないぞ?
負けるわけがなかろう。
オレの魔法はたしかに効いている。
つまり、攻め続ければいつかオレが勝つはずだ!
「ふははははっ! オレはアーク・ノーヤダーマだ! オレが負けることは、絶対にない!!」
ただまあ、このまま戦っても無駄だろう。
というか、魔力も残り少ないから逃げるしかなかろう。
つまり……戦略的撤退だ!
ふははははっ!
逃げるが勝ちというではないか!
さあ、勝ちにいこうではないか!
◇ ◇ ◇
ファバニールはアークの後を追って空を翔ける。
ファバニールの目的は、アークを殺すこと。
それがブリュンヒルデの願いだ。
執拗にアークを追う。
たかが人間一人。
だがファバニールはアークを侮ってなどいない。
アークが人間という尺度で測れない存在であると理解している。
だからこそ全力でアークを殺しにかかった。
事実、ファバニールは少しでも手を抜けば、深手を負わされていた可能性すらあった。
アークをここで確実に仕留める。
アークが人間の中でいくら優秀であると、たとえ人間という枠を超えた存在であると、竜の頂点たるファバニールには敵わない。
生物の頂点たるファバニールには敵わない。
絶対的な暴力。
破壊の権化。
ヘルが他を差し置いても、ファバニールをナンバーズⅠにしたのは、その強さに惚れ込んだからだ。
圧倒的な力がファバニールにはあった。
ナンバー2のイカロスとは決定的な差があった。
そのファバニールがたかが人間一人を敵と見定め、全力で相手をしている時点でアークもまた怪物であり、化け物である。
だが悲しいかな。
生物の違いは残酷だ。
アークはもう満身創痍であった。
立っているのもやっとである。
逃げに徹したとしても、ファバニールから簡単に逃げられるはずもない。
「グオォォォォン」
ファバニールはアークを威嚇するように吠えた。
氷がまるで星のように空を覆い尽くし、炎によって落とされる。
砂漠を彷彿とさせる真昼の灼熱と、同様に砂漠を彷彿とさせる真夜中の冷気。
感覚を狂わす。
アークとファバニールは一歩も引かない攻防を繰り広げていた。
ファバニールの咆哮が威嚇を超えて、攻撃となる。
「グオォォォォン――」
事実、ファバニールは咆哮に魔力を込めて攻撃していた。
普通の人間ならば、その咆哮に本能的な恐怖を覚え、体が硬直してしまって一歩も動けなくなるだろう。
しかし、アークには効かない。
アークは鈍感なのだ。
その程度の威嚇攻撃ものともしない。
だがアークの攻撃もファバニールに届いているとはいいづらい状況であった。
「ちっ。硬いやつめ」
巨躯なる生物の体には、無数の傷があった。
どれも致命傷とはいかないが、中には深い傷もあった。
竜の王にここまで傷を負わせたのは、さすがアークというべきか。
しかし、そんなアークでさえもファバニールとの戦いは決して楽なものではなかった。
竜の息吹をまともに受ければ、全身が灼熱に覆われ焼け焦げしてしまう。
もともと一人で戦うには無理がある相手である。
逆に、アークが一人で戦っていなければ甚大な被害が生じていたのも事実であるが……。
アークは一人でよく戦っていた。
しかし、それでも人間一人では限界がある。
アークに限界が訪れていた。
限界に達していた状態から、まさか戦い続けるアークは異常だった。
それはファバニールにとって想定外であった。
その執念に感服さえしていた。
だが想定外であったものの、ファバニールにはまだまだ余力があった。
「はあ……はあ……」
珍しくアークが肩で息をしていた。
いつもは飄々としているアークだが、さすがに危機感を覚えているようだった。
だが、しかし、
「ふははははははっ!」
アークが狂ったように笑った。
正気を失ったのか?
否――。
アークとは、もともと正気を失っているようなものだ。
「ふははははっ! オレはアーク・ノーヤダーマだ! オレが負けることは、絶対にない!!」
こんな状況でもアークはアークだった。
◇ ◇ ◇
強いな。
実に強い。
非常に強い。
オレが今まで戦ってきた中で、間違いなくこの竜は最強といえた。
どうやればこいつを倒せるのか、まったく想像つかん。
魔石は尽きた。
魔力も尽きかけている。
クリスタル・エーテルも持ってきていない。
ニブルヘイム・ゼロが通用する相手でもなれけば、アブソリュート・ゼロが効く相手でもない。
ここまで打つ手がないのは久しぶりだな!
いや、初めてといってもいいだろう!
ふははははっ。
だが、オレは負けないぞ?
負けるわけがなかろう。
オレの魔法はたしかに効いている。
つまり、攻め続ければいつかオレが勝つはずだ!
「ふははははっ! オレはアーク・ノーヤダーマだ! オレが負けることは、絶対にない!!」
ただまあ、このまま戦っても無駄だろう。
というか、魔力も残り少ないから逃げるしかなかろう。
つまり……戦略的撤退だ!
ふははははっ!
逃げるが勝ちというではないか!
さあ、勝ちにいこうではないか!
◇ ◇ ◇
ファバニールはアークの後を追って空を翔ける。
ファバニールの目的は、アークを殺すこと。
それがブリュンヒルデの願いだ。
執拗にアークを追う。
たかが人間一人。
だがファバニールはアークを侮ってなどいない。
アークが人間という尺度で測れない存在であると理解している。
だからこそ全力でアークを殺しにかかった。
事実、ファバニールは少しでも手を抜けば、深手を負わされていた可能性すらあった。
アークをここで確実に仕留める。
アークが人間の中でいくら優秀であると、たとえ人間という枠を超えた存在であると、竜の頂点たるファバニールには敵わない。
生物の頂点たるファバニールには敵わない。
絶対的な暴力。
破壊の権化。
ヘルが他を差し置いても、ファバニールをナンバーズⅠにしたのは、その強さに惚れ込んだからだ。
圧倒的な力がファバニールにはあった。
ナンバー2のイカロスとは決定的な差があった。
そのファバニールがたかが人間一人を敵と見定め、全力で相手をしている時点でアークもまた怪物であり、化け物である。
だが悲しいかな。
生物の違いは残酷だ。
アークはもう満身創痍であった。
立っているのもやっとである。
逃げに徹したとしても、ファバニールから簡単に逃げられるはずもない。
「グオォォォォン」
ファバニールはアークを威嚇するように吠えた。
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