私が豚令嬢ですけど、なにか? ~豚のように太った侯爵令嬢に転生しましたが、ダイエットに成功して絶世の美少女になりました~

米津

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第一章

4. さあ、入学式

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 シャングリア王国の東方に位置する、とある島。
 決して小さくない島の半分以上がシューベルト王立学院の敷地だった。
 そこで、13歳から15歳までの将来の王国を担う優秀な者たちが勉学を励む。

 そして、王国の威信を示すかのように大きな城……のような校舎が建っている。
 その横には併設された大聖堂がある。
 その大聖堂にて、シューベルト王立学院の入学式が行われていた。

 聖堂の前方、生徒たちの前で学院長アランが挨拶をしている。
 お偉いお偉い学院長のお言葉だ。

 40歳という若さで、多くの者が羨むシューベルト王立学院の長となったアランは出世街道を突っ走ってきた。
 そんな彼にも大きな悩みごとがあった。
 それは年々毛髪が薄くなっていること!
 ……もあるが、他の悩みである。

 その悩みというのが、ほとんどの生徒が学院長の話を聞いてくれないことだ。

 学院に入学してくる生徒のほとんどが貴族の子息、子女である。
 プライドが高い子どもたちの集まりなのだ。

 そんな彼らが大人しく学院長の話を聞くわけもなく。
 学院長の悩みの種でもあった。
 相当なストレスがかかった結果、円形脱毛症が進行……。
 まだ40歳なのに……可哀想な人である。

 そんなアランだが、今日の入学式は気合が入っていた。
 いつもよりも倍……いや、三倍の熱が籠もっている。

 その理由は、新入生の一人に精霊と見間違うほどの美少女がいたからだ!
 少女の絹糸のような白銀の髪が大聖堂の照明に照らされてキラキラと煌く。
 空の碧さを彷彿させる碧眼。
 桃色のふっくらした唇。
 きめ細やかな肌はまさに精霊そのもの。

 そう、学院長は13歳の少女に見惚れていたのだ!
 もちろん、学院長には少女を愛好するような趣味はない。
 断じてロリコンではない。
 しかし、あまりにも少女が美しすぎるせいで彼は心を奪われていた。
 彼女のためならロリコンになるのも吝かではない、とアランは思っているのだが……。

 と、それはさすがに名誉あるシューベルト王立学院の長として大変不名誉なことである。
 自重してもらいたいものだ。
 だが、それほどまでに少女は美しかった。

 おわかりだろうか。
 その少女こそ、フローラ・メイ・フォーブズである!

 アランが熱を込めて話していたのは、何もフローラが美少女だから、という理由だけではない。
 フローラが誰よりも真剣にアランの話を聞いていたのだ。

 ――今までこれほどまでに自分の話を聞いてくれた生徒がいるだろうか? ……いや、いない!
 
 学院長は胸を熱くする!
 少女の透き通るような碧眼に見つめられ、アランはぐっと手に力を込めた。

 フローラの美貌に夢中になっているのは何もアランだけではない。
 先生、生徒、さらには保護者までもがフローラを見つめていた。
 彼らはフローラを見て、どこの家の者かを考えていた。

 社交界に出ている貴族の令息令嬢はフローラの姿を見たことがなく。
 しかし、フローラの醸し出す雰囲気はどうみても高貴なモノであった。
 そうとなれば、貴族であっても社交界に出られない事情があった人物だ、と彼らは推測した。

 しかし、彼女が第一王子の誕生日会で伝説(もちろん悪い意味の伝説)を残した豚令嬢だとは、誰も予想だにしなかった。

 そして、シューベルト王立学院の生徒会長であり、かつシャングリア王国の第一王子でもあるハリー・エル・シャングリア。
 金髪の麗しき青年だ。
 彼もフローラを見ていた。
 ただし、ハリーの場合は他の先生生徒とは視点が異なる。
 彼が感心をしていたのはフローラの態度だ。

 誰も学院長の話を真剣に聞いていない中、フローラだけはしっかりと話を聞いていた。
 その姿に感心するが、特にハリーが感心したポイントは、

「ここでは身分関係なく、誰もが平等である!」

 と学院長が言ったときに、フローラの学院長を見る目が強くなったことだ。
 平等な教育というのはシューベルト学院が掲げる理念の一つだ。
 貴族も平民も関係なく、みなが等しい立場で勉学に励む。
 しかし実際は平等とは言い難く。
 貴族は平民を見下す者が多く、さらに貴族の中でも高位貴族と下位貴族で明確に立場の差が出ていた。
 理想と現実のギャップが生まれているのが、この学院の現状だ。

 そんな状況を憂いているのか、少女は学院長が平等と言った瞬間に目にぐいっと力を込めていた。
 ハリーはそんなフローラの姿勢を見て感嘆したのだ。

 と、これが周囲からみたフローラの評価であるが……。
 もちろん、彼女はそんな高尚なことは一切考えていない。
 彼女が考えていたのは、

 ――学院長、ヅラが取れそうですよ、ヅラが! おっと、だめだ! そんなに力説したらヅラが取れるだろうが!

 というモノだった。
 そう、フローラが熱心に見ていたのは学院長の顔……の少し上のヅラだった。

 入学式が始まった瞬間に彼女は学院長のヅラに気づいた。
 そこから、フローラはずっと学院長のヅラが取れないか心配していたのだが、学院長が話し始めてから、さらに心配になった。
 学院長が話に力を入れすぎて、ヅラが取れそうになっていたからである。

 そして、

「ここでは身分関係なく、誰もが平等である!」

 と言ったタイミングはちょうど外から風が吹いた瞬間である。

 ――やばい! そんな風が吹いたら学院長のヅラが取れるじゃないか! やめてくれ。ここで、彼に恥をかかせるんじゃない!

 と本気で心配していた。
 フローラは学院長の話など一切耳に入っておらず、ただただヅラを心配していただけなのだ。

 それを知らないハリーはフローラのことを学院の現状を憂いている少女だと思った。
 憂いているのは学園の現状ではなく、学院長の頭の現状なのだが……。

 学院長はフローラのことを、真摯に話を聞いてくれる心優しい少女だと思っていた。
 ヅラを心配してくれるという点では、フローラが心優しい少女であることに間違いはない。
 そう、間違いはないのだが……フローラと学院長との間には微妙なズレがある。

 誰もフローラの内心を知らないことが幸か不幸か。
 そうして熱のこもった学院長の話が終わり。
 フローラは無事にシューベルト王立学院に入学を果たしたのだ。
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