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第二章
40. セリーヌの過去
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セリーヌはフローラと幼い頃からの知り合いだった。
小さい頃のセリーヌは今よりもずっと大人しかった。
人見知りでいつもおどおどしていて、話すのが苦手な内気な少女。
それがセリーヌだった。
「セリーヌはいつもビクビクしてるよね」
そう言ったのはフローラだ。
「ふ、フローラちゃんは自信があって……す、すごいね」
「当たりまえじゃない。私はフローラ・メイ・フォーブズよ。世界一うつくしい少女なのよ!」
当時のフローラはぽっちゃり……というか、かなり太っていた。
間違っても美少女といえるものではなかったが、フローラは自分を美少女だと信じて疑わなかった。
自分で自分のことを世界一の美少女と豪語するのは、さすがフローラと言うべきか……。
その自信満々な姿に、セリーヌは、
「羨ましいなぁ」
とフローラに憧れを抱いていた。
間違った憧れである。
とにかく、セリーヌは自信に満ち溢れているフローラを凄いと思っていた。
「ふふんっ。セリーヌちゃんを私の友達にしてあげる」
「ほんと!?」
「ありがたく思いなさい。世界一のびしょうじょのお友達よ」
「う、うん! ありがとう!」
幼い頃、フローラとセリーヌは友人だった。
人との会話が苦手なセリーヌと人との会話ができないフローラ。
お互いボッチだからこそ二人は通じ合うことができた。
それからしばらく経つ。
「フローラちゃん。ハンカチ作ってきたの。貰ってくれるかな?」
セリーヌはフローラに水玉模様のハンカチを見せる。
可愛らしいデザインだ。
「セリーヌちゃんが作ってくれたの?」
「う、うん。初めてだからあんまりうまくできなかったけど」
「そんなことないわ! すごいわよ! セリーヌちゃんは手先が器用なのね!」
「えへへ、そうかな。ありがとう」
「まあ私はこの美貌があるから、刺繍なんてできなくても問題ないけどね!」
「う、うん。フローラちゃんは可愛いからね」
「そうでしょ、そうでしょ! お兄様やお父様からも世界一かわいいって言われるわ」
かつてのフローラは自信に満ち溢れていた。
そして自分のことを正しく評価できていなかった。
鏡をよく見てみたら、豚のように太った令嬢がいるのに。
なぜか、どうしてか、不思議なことに、フローラは自分を美少女だと思っていた。
この後、フローラは第一王子の誕生日会で盛大にやらかすことになる。
そうしてフローラとセリーヌは疎遠になった。
フローラが家に閉じこもっている間、セリーヌは必死に自分の居場所を探した。
結果としてエリザベスの取り巻きに収まった。
それもすべてフローラのもとで身についた『おだて力』のおかげである。
セリーヌは他人に媚びを売ることを覚えていた。
だからエリザベスの取り巻きになることができた。
と、セリーヌは考えていた。
さらに月日が流れ、シューベルト学院の入学式の日。
エリザベスが取り巻きを連れてフローラのもとに行った。
取り巻きの中にはセリーヌもいた。
誰もフローラが豚令嬢だと気づいていない中、セリーヌだけはひと目見てわかった。
だがフローラの方はセリーヌのことを覚えていなかった。
セリーヌはショックを受けた。
それはフローラに忘れられていること……だけではない。
フローラが美少女になってしまったことに、セリーヌは言い知れぬ不快感を覚えた。
セリーヌは美しくなったフローラを見て嫉妬心を抱いたのだ。
さらにフローラが次々と周囲を虜にしていき……。
セリーヌはフローラに対して憎悪を抱くようになっていた。
――昔は豚だったフローラがどうしてちやほやされるのよ。傲慢で自信過剰でただのデブのくせに。フローラが聖女? ばっかじゃないの。あんなのはブタよ。
セリーヌは昔のフローラと仲が良かったからこそ、今のフローラを認めたくなかった。
自分でも制御できないほどに負の感情が膨れ上がる。
そして、それが頂点に達したのがお茶会のときだ。
セリーヌは同学年で一番華がある男、フレディとカップルになった。
今までパーティの飾りでしかなかった自分が主役になれる日が来た。
そう喜んでいたのに。
カップルがいないフローラを馬鹿にできたのに。
それなのに、エリザベスがフローラの味方をし始めたのだ。
加えて、フローラとノーマンをカップルにしようとエリザベスが提案した。
そんなことになれば、セリーヌは自分の居場所がなくなってしまう。
それだけは嫌だった。
もっと自分を見てほしかった。
そうしてセリーヌは愚かなことを考えた。
悪魔がセリーヌの耳元で囁いたのだ。
「憎きフローラを害しなさい。そうすれば、あなたは満たされます」
その声は自分の内側から来る声だったのか。
はたまた他人の声だったのか。
セリーヌにはわからない。
どうでもいいことだ。
セリーヌは従者にフローラのドレスを汚すように命令した。
作戦は失敗した。
フローラがダンスパーティの華になってしまった。
そうなると、セリーヌなどもはや壁の華でしかなくなり。
セリーヌは苛立ちを抑えきれなくなった。
その後、エリザベスが部屋に来てセリーヌを追い詰めた。
そして、
「夜分遅くに申し訳ありません。フローラ・メイ・フォーブズです」
憎きフローラがセリーヌの前に現れたのだ。
セリーヌはフローラを睨みつけた。
小さい頃のセリーヌは今よりもずっと大人しかった。
人見知りでいつもおどおどしていて、話すのが苦手な内気な少女。
それがセリーヌだった。
「セリーヌはいつもビクビクしてるよね」
そう言ったのはフローラだ。
「ふ、フローラちゃんは自信があって……す、すごいね」
「当たりまえじゃない。私はフローラ・メイ・フォーブズよ。世界一うつくしい少女なのよ!」
当時のフローラはぽっちゃり……というか、かなり太っていた。
間違っても美少女といえるものではなかったが、フローラは自分を美少女だと信じて疑わなかった。
自分で自分のことを世界一の美少女と豪語するのは、さすがフローラと言うべきか……。
その自信満々な姿に、セリーヌは、
「羨ましいなぁ」
とフローラに憧れを抱いていた。
間違った憧れである。
とにかく、セリーヌは自信に満ち溢れているフローラを凄いと思っていた。
「ふふんっ。セリーヌちゃんを私の友達にしてあげる」
「ほんと!?」
「ありがたく思いなさい。世界一のびしょうじょのお友達よ」
「う、うん! ありがとう!」
幼い頃、フローラとセリーヌは友人だった。
人との会話が苦手なセリーヌと人との会話ができないフローラ。
お互いボッチだからこそ二人は通じ合うことができた。
それからしばらく経つ。
「フローラちゃん。ハンカチ作ってきたの。貰ってくれるかな?」
セリーヌはフローラに水玉模様のハンカチを見せる。
可愛らしいデザインだ。
「セリーヌちゃんが作ってくれたの?」
「う、うん。初めてだからあんまりうまくできなかったけど」
「そんなことないわ! すごいわよ! セリーヌちゃんは手先が器用なのね!」
「えへへ、そうかな。ありがとう」
「まあ私はこの美貌があるから、刺繍なんてできなくても問題ないけどね!」
「う、うん。フローラちゃんは可愛いからね」
「そうでしょ、そうでしょ! お兄様やお父様からも世界一かわいいって言われるわ」
かつてのフローラは自信に満ち溢れていた。
そして自分のことを正しく評価できていなかった。
鏡をよく見てみたら、豚のように太った令嬢がいるのに。
なぜか、どうしてか、不思議なことに、フローラは自分を美少女だと思っていた。
この後、フローラは第一王子の誕生日会で盛大にやらかすことになる。
そうしてフローラとセリーヌは疎遠になった。
フローラが家に閉じこもっている間、セリーヌは必死に自分の居場所を探した。
結果としてエリザベスの取り巻きに収まった。
それもすべてフローラのもとで身についた『おだて力』のおかげである。
セリーヌは他人に媚びを売ることを覚えていた。
だからエリザベスの取り巻きになることができた。
と、セリーヌは考えていた。
さらに月日が流れ、シューベルト学院の入学式の日。
エリザベスが取り巻きを連れてフローラのもとに行った。
取り巻きの中にはセリーヌもいた。
誰もフローラが豚令嬢だと気づいていない中、セリーヌだけはひと目見てわかった。
だがフローラの方はセリーヌのことを覚えていなかった。
セリーヌはショックを受けた。
それはフローラに忘れられていること……だけではない。
フローラが美少女になってしまったことに、セリーヌは言い知れぬ不快感を覚えた。
セリーヌは美しくなったフローラを見て嫉妬心を抱いたのだ。
さらにフローラが次々と周囲を虜にしていき……。
セリーヌはフローラに対して憎悪を抱くようになっていた。
――昔は豚だったフローラがどうしてちやほやされるのよ。傲慢で自信過剰でただのデブのくせに。フローラが聖女? ばっかじゃないの。あんなのはブタよ。
セリーヌは昔のフローラと仲が良かったからこそ、今のフローラを認めたくなかった。
自分でも制御できないほどに負の感情が膨れ上がる。
そして、それが頂点に達したのがお茶会のときだ。
セリーヌは同学年で一番華がある男、フレディとカップルになった。
今までパーティの飾りでしかなかった自分が主役になれる日が来た。
そう喜んでいたのに。
カップルがいないフローラを馬鹿にできたのに。
それなのに、エリザベスがフローラの味方をし始めたのだ。
加えて、フローラとノーマンをカップルにしようとエリザベスが提案した。
そんなことになれば、セリーヌは自分の居場所がなくなってしまう。
それだけは嫌だった。
もっと自分を見てほしかった。
そうしてセリーヌは愚かなことを考えた。
悪魔がセリーヌの耳元で囁いたのだ。
「憎きフローラを害しなさい。そうすれば、あなたは満たされます」
その声は自分の内側から来る声だったのか。
はたまた他人の声だったのか。
セリーヌにはわからない。
どうでもいいことだ。
セリーヌは従者にフローラのドレスを汚すように命令した。
作戦は失敗した。
フローラがダンスパーティの華になってしまった。
そうなると、セリーヌなどもはや壁の華でしかなくなり。
セリーヌは苛立ちを抑えきれなくなった。
その後、エリザベスが部屋に来てセリーヌを追い詰めた。
そして、
「夜分遅くに申し訳ありません。フローラ・メイ・フォーブズです」
憎きフローラがセリーヌの前に現れたのだ。
セリーヌはフローラを睨みつけた。
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