転生したら嫌われデブに!? ~性格の悪いブタ男になってしまったので、態度を改め真面目に生きようと思います~

米津

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第1章 異世界転生編

9. 特別な才能

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「俺がやってみるよ」

 クリラスがコクリと頷き、本を渡してくる。

 本に描かれた魔法陣に触れ、魔力を流してみた。

 すると、魔法陣が赤く光った。

 魔法陣が頭の中に入ってくる。

 以前と同じ感覚だ。

 だが、既に俺の中には発火イグニッションの魔法陣が保存されている。

 そのため、新しく魔法陣が加わることはなかった。

 しばらくすると、本の光が消える。

「ほら、見えた? 魔法陣が起動したよ」

「うん、見えた。赤く光ってたね」

「もう一回やってみなよ。次はできるかもしれないよ?」

「そうだね……。やってみよっかな」

 しかし、その後何度やっても、クラリスが魔法陣を起動させることはなかった。

 クラリスは無詠唱魔法を会得することできず、

「もう、全然できないじゃん!」

 と、拗ねたようにぷくーっと頬を膨らませた。

 普段、教室でみる姿と違って子供っぽい雰囲気だ。

 ちょっと意外。

「なに?」

「いいや、なんでもない」

「あーあ、私も無詠唱魔法使いたかったな」

 そうか。

 クラリスは無詠唱魔法が使えないのか。

 なんでだろう?

 そういえば、この本の作者も無詠唱魔法を使えないって言ってたな。

 何かしらの条件があるってことかなのか?

 ひょっとして俺って特別?

 これはやばい。

 自分が凄いと勘違いしそうになる。

「はあもういいや。ねえ。無詠唱魔法見せてよ」

「いいけど。なんで?」

「昨日はあんまり見えなかったから。ちゃんと見てみたい」

 まあ夜だったしな。

 それに変なやつらに絡まれてたし。

「わかった」

 魔法領域にアクセスし、保存されている魔法陣を取り出す。

 そして空中に魔法陣を描く。

 クラリスの目の前で――ボワッと火が灯る。

「わっ」

 クラリスがびっくりした顔をする。

 彼女の眼前に小さな火を出現させた。

 さらに、クラリスの周辺にいくつもの火を出現させる。

 魔法は魔力が切れるまでその場に残り続ける。

 魔法陣に込めた魔力分だけ、火が燃え続けるということだ。

 10を超える火を出現させる。

 一つ一つは小さな火だから、触っても「あちっ」となる程度だ。

「すごい……。ホントに無詠唱だ」

 クラリスがポツリとつぶやく。

 夕焼けの中、いくつもの火が空に浮かんでいる。

 これ前世だったら、かなりのホラーだよな?

 怪奇現象に火の玉ってのがあるし。

 最初に作り出した火から順番に消えていく。

 最後の火が消えてから、しばらくするとクラリスが俺のほうを向いてきた。

「本当はアランって凄いのに、みんなこのことを知らないんだよね」

「凄い?」

「無詠唱魔法を使える。私だけがアランの凄さを知っている。それってちょっと優越感あるかも」

 クラリスがくすりと笑った。

 この子は天性の人たらしじゃね?

 可愛い顔でそんなこと言われたら「俺に気があるんじゃないの?」と勘違いしてしまう。

 まあ……でも、俺に気があるわけがないか。

 こんなデブでろくでない俺を好きになるなんてあり得ないし、そもそもまだほとんど関わっていない。

「ずっと前から無詠唱魔法を使えてたの?」

「いや最近になってからだよ」

「そうなんだ。もしかして雰囲気が変わったのと何か関係してる?」

 うっ、この子鋭い。

 ちゃんと関係してるけど、敢えていう必要もない。

「特に関係はないよ」

「そっか」

 クラリスは特に気にした様子もなく呟く。

「あとさ。最近のアラン詠唱学の授業で魔法使ってたけど、あれ無詠唱魔法だよね?」

「あ、バレた?」

「やっぱり」

「未だに詠唱魔法使えないんだよね」

「……なんか回りくどいことやってるね。詠唱魔法を使ってるフリするために無詠唱魔法を使うなんて」

「うん。俺も同じこと思ってた」

「無詠唱魔法使えることみんなに言わないの?」

「どっちでもいいかなって感じ。無理に隠すつもりはないけど、広めたいわけじゃないし」

「そっか。これみんなが知れば驚くだろなぁ。きっとアランを見直すと思うよ。今日の授業のときみたいに」

「今日の授業?」

「術式学のときだよ。みんなアランが意外と頭がいいって知って驚いてたから」

 たまたま俺が最近勉強してる分野だったからな。

 正直、詠唱学で質問ぶつけられたら答えられる自信がない。

「私も友達として誇らしかった」

「友達? 俺とクラリスが?」

「うん、そうだよ。私とアランは友達」

 クラリスが当然のように言ってきた。

 すごい、この子。

 たった一日で友達判定か。

 これがクラスの人気者か……。

 人と距離を詰めるのが早いようだ。

 恐れ入ります。

「そっか、友達か……。うん、そうだね」

 テッテレー。

 あらんははじめてのともだちをかくとくした。

 やったぜ!

 これでボッチ脱却だ。

 明日からはもっと学校が楽しくなるかも!
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