転生したら嫌われデブに!? ~性格の悪いブタ男になってしまったので、態度を改め真面目に生きようと思います~

米津

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第1章 異世界転生編

26. 愛を知ってしまった少女

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 オリヴィアと入れ替わりでミーアが部屋に入ってきた。

 あれ?

 この子、謹慎中じゃなかったっけ?

 まあいっか。

「……アランくん」

 ミーアが扉のところでもじもじしてる。

「ひとまず、こっちに来て話さない?」

「うん……」

 ミーアがゆっくりと俺のもとまで来る。

「今回のこと、本当にごめんなさい」

「いいよ。大したことなかったし」

「嘘です。死ぬところでした」

「でも生きてるし。ほら問題なかったろ?」

「問題ありすぎです。でも……全部私のせいなんですよね」

 ミーアが消え入りそうな声で言う。

「本当に悪いやつは他にいるんだろ? だったらミーアも被害者じゃん」

「違います」

「違わないって」

 ミーアが被害者というのは、学園も認めてることだし、彼女が悪いなんてことはない。

「私がいたからみんな苦しむ。だから私はここを去ろうと思います」

 なるほどね。

 オリヴィアの言っていた通りだ。

「ミーアがいないと俺が困る。俺に一人で昼食食べさせる気?」

「アランくんならすぐに友達ができますよ」

「じゃあ魔力操作を誰が教えてくれるんだ? いいのか? ミーアがいないとまた死にかけるぞ」

「もっと凄い人に教えてもらえばいいです。オリヴィア様とか……」

 まあオリヴィアって魔力操作うまそうだしな。

 実際、瀕死の俺を助けてくれたし。

「でもミーアの代わりにはならない」

「私の代わりなんていらないです」

「なんでわからないかな?」

「なにがですか?」

「俺はミーアと一緒にいたいんだよ。昼食の話も魔力操作の話もただの口実だ。俺はミーアと一緒にいる時間が好きだし、もっともっと仲良くなりたいと思ってる」

 こういうこと面と向かっていうのは恥ずかしいんだよ。

 俺はもっと気楽なノリが好きなんだ。

 こういうちょっと湿っぽいのとか苦手なんだよね。

「だからさ、退学するなんて言うなよ」

「でも迷惑じゃない?」

「でもって言葉はもう聞き飽きた。あとこれ、俺の好みなんだけどさ。実は俺、結構魔族好きだったりするんだよね」

「え? 魔族が好き?」

「うん」

 だって魔族ってまんまエルフなんだよね。

 特徴がほぼ一緒だし。

 耳が長いのとか、長寿なとこととか、魔法の扱いに長けてるとか、木の上が好きとか、排他的な種族とか、風を操ることができるとか、もうエルフじゃん。

 エリフと言ったら、ファンタジーの定番だ。

 そして俺はエルフが好きだ。

 エルフと仲良くなれる最高じゃないか。

「ミーアが残って欲しいってのも、俺がそうして欲しいってだけ。だから迷惑とかそういうのは考えないで欲しい」

「……うん」

「それで、ミーアはどうしたいの?」

 結局、大事なのはミーアの気持ちだと思う。

 俺の気持ちを押し付けるだけなんて良くない。

 いや嘘だ。

 俺の気持ちを押し付けてでも残って欲しい。

 もし残らないと言ったら、泣いて土下座するつもりだ。

「私は……」

 ミーアがじーっと俺の顔を見てくる。

 俺の顔になんかついてる?

 もしかして俺が痩せたから惚れちゃった?

 って、そんなわけないか。

 ミーアが決意したように言ってきた。

「私はアランくんと一緒がいいです」

 おふっ。

 まじか。

 予想の斜め上をいく回答が来た。

 告白みたいな感じでビビるわ。

「つまり、学園に残るってことだよな?」

「ん? アランくんが学園にいるなら」

 あっ、うん。

 俺、どう返答すればいいの?

「まあ当然、俺は学園にいるけど」

「じゃあ学園に残ります」

 う~ん、これで万事解決ってことなのか?

 よくわからん。

「あ~、それと勝手にで悪いんだけど、ミーアを風紀委員に推しといた。ミーアも風紀委員にいれば、もう少し学園生活を楽しめるかなって思ったけど……大丈夫だった?」

「アランくんも風紀委員に入るんですか?」

「そういうことになるな」

「それなら問題ないです」

 あっ、そう?

 まあそれならいいけど。

「じゃあ、これからもよろしくな」

「はい。これからもずっと一緒ですね」

 うん? どういうこと?

 なんか思った方向と違う方向に転がってる気がするけど、気のせいだよな?

 でも、ミーアが退学しないでくれて良かった。

 これからも一緒にご飯を食べる仲間ができたし。

◇ ◇ ◇

 謹慎中、ミーアはずっと部屋の中で悶々としていた。

 ――この感情はなんだろう?

 その人のことを考えるだけで、体が熱くなる。

 熱に浮かされたような、という言葉がピッタリだ。

 ミーアは火照る体を冷ますように、ベッドから起き上がり、窓を開けた。

 風が心地よい。

 けれど、熱は冷めない。

「でもミーアの代わりにならない」

「だからさ、退学するなんて言うなよ」

「実は俺、結構魔族好きだったりするんだよね」

 ミーアはアランの言葉を反芻はんすうする。

 彼の言葉一つひとつが、まるで宝石のように彼女の心にしまわれている。

 命をかけて自分を守ってくれた相手。

 あそこまでミーアに対して真剣になってくれた人は初めてだった。

 ミーアは別に学園に対して未練はない。

 実家に戻るのは嫌だが、そのくらいの気持ちだった。

 だが、アランがいるならば話は別だ。

 逆にアランがいなければ、どこにいようとも一緒だった。

 アランがいれば、どこにいようとも幸せだ。

 はじめは、アランに抱く感情が母に感じていた感情と一緒だと思っていた。

 好きというものに違いがあるとは知らなかった。

 いまミーアが抱いている感情は、母に対して思っていたものとは異なるものであった。

 魔族は人族と違って、繁殖能力が低い。

 人族はそれを「魔族に愛情がないから」だと言う。

 だが、その認識は間違っている。

 魔族の愛情は人間のそれと比べるのもおこがましいくらい、深く重い。

 魔族は一人の相手を深く愛してしまうがゆえ、子供が少ないのだ。

 長い寿命の中でも本当に愛する人は一人だけ。

 生涯で愛する人を見つけられない者も多い。

 必然的に、子供の数も少なくなる。

 どちらかが死別したとしても、新しい相手パートナーを選ぶのは稀だ。

 深い愛情を持つがゆえ、魔族は人間と比べても繁殖能力が低いのだ。

 ミーアはまだ気づいていない。

 アランに対する「好き」が、人族の好きとは大きく異なることを。

 ミーアは窓の外、アランがいるだろう方向に目を向ける。

「ああ、はやくアランくんに会いたいです」

 そう呟いた彼女の横顔は、その幼い見た目に似合わず、大人の雰囲気を醸し出していた。
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