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第2章 風紀委員編
30. テトラ・フォード
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少女が廊下を静かに歩く。
彼女の名はテトラ・フォード。
フォード家の長女であり、アランの妹である。
その美しい容姿と傑出した才能から、否が応でも注目を集める少女だ。
「テトラ様……」
一人の少年がうっとりした顔でテトラを見つめる。
彼女の姿に見とれる生徒もちらほら。
作り物かと疑ってしまうほどの整った顔立ち、知的な印象を与える切れ長の目、スラッとした体型。
そしてフォード家長女としての、毅然とした立ち振舞。
人を引き付ける魅力を、彼女は十分以上に兼ね備えていた。
だがそんなテトラを批判的に見るものも少なくない。
「人形姫様か。マジで何考えてんのかわかんねーよな。本当に人形なんじゃね?」
ぼそっと男子生徒が呟く。
人形姫。
それはテトラを指す言葉である。
人形のような美しさと、人形のように一切表情を変えたないことから、人形姫と呼ばれている。
実際、テトラが笑った姿を見たものは一人もいない。
笑うどころか喜怒哀楽のすべてを表情に出さない。
一切の無である。
表情だけでなく、感情もほとんど動かない。
それが社交性ゼロと言われる所以である。
テトラがちらっと、悪口を言ってきた生徒を見る。
その少年は「うわ」と小さく悲鳴を上げ、ささーっと逃げていった。
彼女は談話室にある椅子に座った。
「この前できたカフェ、思った以上に良かったよ」
「え、どんな感じ?」
テトラから少し離れたところで女子生徒二人組が会話をしている。
「内装がおしゃれで、何よりもイケメンが多かった」
「それは行くしかない」
「ただ味はちょっと微妙かも」
「そのくらいは許容範囲内よ」
テトラは耳がよい。
魔族も耳が良いとされるが、それと同じレベルで耳が良い。
彼女らの声が自然と耳に入ってくる。
――カフェですか……。そういえば商業区に新しいカフェがオープンしたらしいですね。私は全く興味ありませんが。
3週間前に商業区の西エリアでオープンしたカフェがある。
しかし、彼女からすればどうでも良い情報であり、すぐに魔法生物学の本に意識を切り替える。
「一年ってあんまりいい人いないよね」
「たしかに。上と比べるとパットしない」
いつの間にか、少女たちの会話が恋愛に移っていた。
こういう女子トークをする人たちの気持ちが、テトラには理解できない。
そもそも彼女には、誰かの気持ちを理解することができない。
「強いて言うなら、アラン様がちょっと気になるかも」
――アランって兄様のことでしょうか?
テトラは兄の名前を聞き、わずかに反応を示す。
相変わらず無表情であるが。
「でも魔族とつるんでるのが……あっ」
突然、二人組が席を立ち、慌てた様子で席を離れていく。
テトラは再び魔法生物学の本を読み始めた。
しかし、あまり集中できそうになかった。
彼女には友達がいない。
自分が友達と楽しく話しているところを想像できない。
「はあ……」
気がつくと、テトラはため息をこぼしていた。
それが何に対するため息なのか、彼女にはわからなかった。
ただ胸の中にもやもやした感情が募る。
と、そのタイミングで――
「なんか困ってるのか?」
テトラは声のしたほうを見て、驚く。
「………………は?」
久しぶり、彼女は素の声が出してしまった。
そこにはアランがいた。
◇ ◇ ◇
妹を風紀委員に入れるというミッションが俺にくだった。
オリヴィアの説得も虚しく、ジャンが風紀委員を辞めてしまったからだ。
オリヴィアさん、もうちょっとがんばってくださいよ。
いやまあ俺のせいなんだけどさ。
俺を一人にしないでくれ。
なんか、風紀委員ってマジでやること多いらしんだよ。
風紀委員はかなりの権限を持ってるみたいだし。
てかさ、学校も風紀委員に色々と任せすぎじゃない?
俺たち学生だよ?
学生にそんな権限持たせていいの?
俺みたいに変なやつが風紀委員長になったら破綻するからね?
ってまあ、これもゲームの都合上そうなってるんだろうけどさ。
校内の乱れた風紀を整えるって、なんかエロゲにありそう……。
やっぱここはエロゲの世界?
風紀を乱す者に罰則として、不埒なことをやらせるって展開だ。
ってことは俺、風紀委員長になればやり放題じゃん。
サイコー!
……んなわけないよな。
妄想は頭の中だけにしときます、はい。
でも、現実逃避もしたくなりますよ。
「無理ゲーでしょ、これ」
冷静になって考えたら、妹を風紀委員に入れるとか無理だと気づいた。
いや冷静になる前から気づいてたけどね。
あの子、風紀委員とか絶対興味なさそうだもん。
風紀委員? なにそれおいしいの? みたいな反応をされる気がする。
まあでも、声かけるだけ声かけてみるか。
どうせムダだろうけど。
妹を探すと、すぐに見つかった。
学校の談話室にいた。
この子、人との関わりは拒絶するくせに、なんで談話室にいるの?
なにがしたいの?
まあ見つけやすくて助かるけど。
俺は妹の横に座る。
すると、
「はあ……」
ため息を吐かれた。
あれ、それって俺へのため息ですか?
いや違う気がする。
俺の存在に気づいてないっぽい。
「なんか困ってるのか?」
妹の顔が俺のほうに向く。
相変わらず無表情だ。
マジで人形のようだな。
「は?」
え?
は? ってなに?
普通にこわいんだけど。
「えっと……良かったらお兄ちゃん話が聞くよ?」
俺ってこんなキャラだっけ?
違うよな。
妹とほとんど会話してこなかったし、こういうときどう接すればいいかわからん。
でも、少なくとも「お兄ちゃん」はないだろ。
俺の記憶では、妹に対してもっと尊大に振る舞っていた。
「…………」
無言で睨まれる。
怖い。
ごめんなさい。
調子に乗りました。
以後、気をつけます。
「…………」
やべぇよ。
会話を続けらえる気がしねぇよ。
こういうときはどうすればいいんだ?
まずは世間話かな?
世間話ってなに話せばいいんだっけ?
「え~っと今日は天気いいですね」
「…………」
ダメだった~!?
そりゃあそうだよな。
天気の話とかどうでもいいよな。
あと今日曇りだし。
なんなら雨降りそうだし。
「最近学校はどうだ?」
「…………」
これもだめかよ!?
てか連続で無視するのはやめてくれない?
メンタルブレイクするんだけど……。
妹と仲良くする方法がわからない。
ヤ○ー知恵袋にでも投稿しようかな?
「…………」
妹に無言で睨まれる。
その変な人を見るような目、やめてくれない?
フツーに傷つくんだけど。
いや、まじでどうすればいいの?
そういえばクラリスが新しくできたカフェの話してたな。
若い子ってカフェとか好きそうだし、誘ってみるとか?
いやいや妹がカフェに興味あるとは思えん。
まあでも、当たって砕けろだよな。
「最近、西エリアにカフェができたんだけど……」
探りを入れてみる。
すると妹の眉がピクッと動いた。
ん、いまちょっと反応したぞ?
ワンチャンあるかも。
「今度一緒に行かないか?」
いや無理だよな。
わかってる。
こんなの誘い乗るはずがない。
「……わかりました」
「え? いまなんて?」
「一緒に行ってあげます」
まじか。
え……これ冗談じゃないよね?
どういう風の吹き回しだ?
まあ、なんにしても良かった。
カフェに一緒にいく程度には嫌われてないらしい。
彼女の名はテトラ・フォード。
フォード家の長女であり、アランの妹である。
その美しい容姿と傑出した才能から、否が応でも注目を集める少女だ。
「テトラ様……」
一人の少年がうっとりした顔でテトラを見つめる。
彼女の姿に見とれる生徒もちらほら。
作り物かと疑ってしまうほどの整った顔立ち、知的な印象を与える切れ長の目、スラッとした体型。
そしてフォード家長女としての、毅然とした立ち振舞。
人を引き付ける魅力を、彼女は十分以上に兼ね備えていた。
だがそんなテトラを批判的に見るものも少なくない。
「人形姫様か。マジで何考えてんのかわかんねーよな。本当に人形なんじゃね?」
ぼそっと男子生徒が呟く。
人形姫。
それはテトラを指す言葉である。
人形のような美しさと、人形のように一切表情を変えたないことから、人形姫と呼ばれている。
実際、テトラが笑った姿を見たものは一人もいない。
笑うどころか喜怒哀楽のすべてを表情に出さない。
一切の無である。
表情だけでなく、感情もほとんど動かない。
それが社交性ゼロと言われる所以である。
テトラがちらっと、悪口を言ってきた生徒を見る。
その少年は「うわ」と小さく悲鳴を上げ、ささーっと逃げていった。
彼女は談話室にある椅子に座った。
「この前できたカフェ、思った以上に良かったよ」
「え、どんな感じ?」
テトラから少し離れたところで女子生徒二人組が会話をしている。
「内装がおしゃれで、何よりもイケメンが多かった」
「それは行くしかない」
「ただ味はちょっと微妙かも」
「そのくらいは許容範囲内よ」
テトラは耳がよい。
魔族も耳が良いとされるが、それと同じレベルで耳が良い。
彼女らの声が自然と耳に入ってくる。
――カフェですか……。そういえば商業区に新しいカフェがオープンしたらしいですね。私は全く興味ありませんが。
3週間前に商業区の西エリアでオープンしたカフェがある。
しかし、彼女からすればどうでも良い情報であり、すぐに魔法生物学の本に意識を切り替える。
「一年ってあんまりいい人いないよね」
「たしかに。上と比べるとパットしない」
いつの間にか、少女たちの会話が恋愛に移っていた。
こういう女子トークをする人たちの気持ちが、テトラには理解できない。
そもそも彼女には、誰かの気持ちを理解することができない。
「強いて言うなら、アラン様がちょっと気になるかも」
――アランって兄様のことでしょうか?
テトラは兄の名前を聞き、わずかに反応を示す。
相変わらず無表情であるが。
「でも魔族とつるんでるのが……あっ」
突然、二人組が席を立ち、慌てた様子で席を離れていく。
テトラは再び魔法生物学の本を読み始めた。
しかし、あまり集中できそうになかった。
彼女には友達がいない。
自分が友達と楽しく話しているところを想像できない。
「はあ……」
気がつくと、テトラはため息をこぼしていた。
それが何に対するため息なのか、彼女にはわからなかった。
ただ胸の中にもやもやした感情が募る。
と、そのタイミングで――
「なんか困ってるのか?」
テトラは声のしたほうを見て、驚く。
「………………は?」
久しぶり、彼女は素の声が出してしまった。
そこにはアランがいた。
◇ ◇ ◇
妹を風紀委員に入れるというミッションが俺にくだった。
オリヴィアの説得も虚しく、ジャンが風紀委員を辞めてしまったからだ。
オリヴィアさん、もうちょっとがんばってくださいよ。
いやまあ俺のせいなんだけどさ。
俺を一人にしないでくれ。
なんか、風紀委員ってマジでやること多いらしんだよ。
風紀委員はかなりの権限を持ってるみたいだし。
てかさ、学校も風紀委員に色々と任せすぎじゃない?
俺たち学生だよ?
学生にそんな権限持たせていいの?
俺みたいに変なやつが風紀委員長になったら破綻するからね?
ってまあ、これもゲームの都合上そうなってるんだろうけどさ。
校内の乱れた風紀を整えるって、なんかエロゲにありそう……。
やっぱここはエロゲの世界?
風紀を乱す者に罰則として、不埒なことをやらせるって展開だ。
ってことは俺、風紀委員長になればやり放題じゃん。
サイコー!
……んなわけないよな。
妄想は頭の中だけにしときます、はい。
でも、現実逃避もしたくなりますよ。
「無理ゲーでしょ、これ」
冷静になって考えたら、妹を風紀委員に入れるとか無理だと気づいた。
いや冷静になる前から気づいてたけどね。
あの子、風紀委員とか絶対興味なさそうだもん。
風紀委員? なにそれおいしいの? みたいな反応をされる気がする。
まあでも、声かけるだけ声かけてみるか。
どうせムダだろうけど。
妹を探すと、すぐに見つかった。
学校の談話室にいた。
この子、人との関わりは拒絶するくせに、なんで談話室にいるの?
なにがしたいの?
まあ見つけやすくて助かるけど。
俺は妹の横に座る。
すると、
「はあ……」
ため息を吐かれた。
あれ、それって俺へのため息ですか?
いや違う気がする。
俺の存在に気づいてないっぽい。
「なんか困ってるのか?」
妹の顔が俺のほうに向く。
相変わらず無表情だ。
マジで人形のようだな。
「は?」
え?
は? ってなに?
普通にこわいんだけど。
「えっと……良かったらお兄ちゃん話が聞くよ?」
俺ってこんなキャラだっけ?
違うよな。
妹とほとんど会話してこなかったし、こういうときどう接すればいいかわからん。
でも、少なくとも「お兄ちゃん」はないだろ。
俺の記憶では、妹に対してもっと尊大に振る舞っていた。
「…………」
無言で睨まれる。
怖い。
ごめんなさい。
調子に乗りました。
以後、気をつけます。
「…………」
やべぇよ。
会話を続けらえる気がしねぇよ。
こういうときはどうすればいいんだ?
まずは世間話かな?
世間話ってなに話せばいいんだっけ?
「え~っと今日は天気いいですね」
「…………」
ダメだった~!?
そりゃあそうだよな。
天気の話とかどうでもいいよな。
あと今日曇りだし。
なんなら雨降りそうだし。
「最近学校はどうだ?」
「…………」
これもだめかよ!?
てか連続で無視するのはやめてくれない?
メンタルブレイクするんだけど……。
妹と仲良くする方法がわからない。
ヤ○ー知恵袋にでも投稿しようかな?
「…………」
妹に無言で睨まれる。
その変な人を見るような目、やめてくれない?
フツーに傷つくんだけど。
いや、まじでどうすればいいの?
そういえばクラリスが新しくできたカフェの話してたな。
若い子ってカフェとか好きそうだし、誘ってみるとか?
いやいや妹がカフェに興味あるとは思えん。
まあでも、当たって砕けろだよな。
「最近、西エリアにカフェができたんだけど……」
探りを入れてみる。
すると妹の眉がピクッと動いた。
ん、いまちょっと反応したぞ?
ワンチャンあるかも。
「今度一緒に行かないか?」
いや無理だよな。
わかってる。
こんなの誘い乗るはずがない。
「……わかりました」
「え? いまなんて?」
「一緒に行ってあげます」
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え……これ冗談じゃないよね?
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