42 / 64
<後編>
第42話 春を祝う5 提案
しおりを挟む
「もしかして……クリスタラー家に縁があったんだね? 務めていたことがあり、王家に嘘をついて自分の身が危なくなるとしても返したい恩がある。だから令嬢のことも知っていた。それなら、男爵や侍従と信頼関係があるのも頷けるし、最初から令嬢に同情的だったのも、令嬢を知っていたからと納得できる」
え、そっち?
お兄様と目が合う。
なんか良く思われすぎだ。王家に嘘をついてまでの忠義のメイドになっとる。
「クリスタラー令嬢は到着された時に倒れられたというから、まだ体調が悪いんだね。王族に身を偽ったら自身だって危うくなるのに、君が代わりに出なくちゃならないほど、どうしても夜会に出る必要があったのかい?」
お兄様に確認を取らずにわたしは口を出した。
「……答えたくありません」
拒否する。どう言い逃れても嘘になるから。できれば皆様に嘘は少なくありたい。
魔力でも神力でも体格でもわたしって認識されている。もうこれは逃れようがない。
それはそう思っていたんだけど……。
身を偽っていたなって暴き立てる気でもなかったみたいだし、だったらただ見逃してくれればいいのに、わざわざ言ってきたということは、何かがあるんだ。
リリアンが夜会でファニーに扮したことはバレたんだ、それは受け入れる。
「あ、先ほどは助けていただき、ありがとうございました。助かりました」
「倒れたから、驚いた。大丈夫なのか?」
青い瞳が心配そうにわたしを見る。
ああ、それで最初に大丈夫か聞いてくださったのか。
「すみません。皆様と顔を合わせるわけにいかなかったので、気を失ったフリをしました」
「……なら、よかった」
怒るかと思ったが、そんなことはなく、皆様わたしの無事が良いとしてくださっている。
う、後ろめたい。
「お尋ねします。クリスタラー男爵とリリアンは恋人同士なのですか?」
「はぃ?」
マテュー様に聞かれて声が裏返った。
「それとも、そちらの侍従の方とでしょうか?」
わたしとお兄様とトムお兄様は顔を見合わせた。
なんだってそんな笑えない誤解が。
「あまりに親しげなので」
お兄様はふっとわたしをみつめて微笑む。
「ええ、とても大切な娘《こ》です。ですから、生半可な覚悟では近づかないでくださいね」
そう言ってわたしの手を持って手の甲にチュッと口づけした。
お、お兄様、何やってくれちゃってるの。
よく私の姫君だとか言って手やほっぺにチュッチュしてたけどさ。もう子供じゃないんだから!
お父様が私の小さな姫君と言ってチュッチュしまくっているのを見てたから、父を亡くしたわたしにそうしてくれたんだと思う。
そんなところを見ると、すぐに別れてしまったが嫁いできたお義姉様が嫌そうに顔を背けていた。いらんことまで思い出した。お義姉様には悪いことをしたと思う。あの時のわたしは、お義姉様にお兄様を取られてしまうのが怖かったから、お兄様がわたしに構ってくださると安心して、嬉しくて。そんなふうだったから、お義姉様はさぞかし居心地が悪かったと思う。だからふたりが別れたのはわたしのせいでもあるだろう。お兄様の幸せをわたしは奪ったんだ。
でも、いくら怒り心頭でも借金まみれにするというペナルティーを置き土産にしたのは天晴れで、お兄様の手におえる方ではなかったかもしれないと勝手な感想をいだいている。
ともう片方の手をトムお兄様が持ち上げて、愛おしそうにキスを落とす。
「とても大事な娘《こ》です」
ト、トムお兄様まで、何やってくれちゃうの!? 恥ずかしくて爆発しそうだ。
皆様もこちらを半開きの目で見ている。
「その大切なリリアンに身を偽らさせて夜会に出て。そこまでして、令嬢を外に出したくないのですか?」
皆様は以前にわたしがクリスタラー家で働いたことがあると思われたみたいだ。お兄様はゴホッと喉を整える。
「……それは違います。姪は本当に寝込んでいるのです。そこで、お付きメイドの彼女にファニーのフリをするようお願いしたのです」
「なんだってそんなことを?」
「わからないんですか? 原因はあなたたちです」
「私たち?」
「ファニーは外に出たことがない子です。緑を持っていなくても敏感で繊細なのか、多くの人がいる場所では気を失います」
まま、ミリアだね。
「そんなあの娘に縁談が舞い込んだ。16歳ですからね、世間では遅いぐらいでしょう。でもお相手がどこにも接点のない上流貴族の方々でした。断っても茶会や夜会の誘いが来て、止めに春の夜会だ。断れない、ね。もう、これは怯えるでしょう。元々丈夫じゃないのに、そんな精神状態の上、長旅で、今も眠っております。本当に体調が悪いが、そこで夜会でも参加しなかったら、医者に診せるだのいってファニーに何かするんじゃないかと思いましてね」
「そんなに思い詰めさせていたんですね。令嬢には直接謝ります。でも、それとリリアンの身を偽らせることは違いますよね? 彼女に罰が下されたらどうする気ですか?」
テオドール様が尋ねる。
「全ては私の責です。彼女は守ります」
……お兄様……。
お兄様、わたしに罰がくだるって言ったら、本当に身を挺して守ってくれそうだ。
わたしが巻き込んでいることなのに。
「男爵、提案があります」
タデウス様がお兄様を見据える。
「なんでしょう?」
「僕たちにも一口乗らせてください。それにより、リリアンに罰がくだされることはなくなります。逆に協力者として褒美も出ましょう」
わたしとお兄様は顔を合わせる。
「令嬢は体が弱い。でも僕たちはあちらの言う通りに賭けにのっているところを見せつける必要がある。だから、春の夜会の間、リリアンにクリスタラー令嬢の身代わりをしてもらうのです」
それか。夜会でわたしがファニーの代わりにパーティに出ているのに気付いて、それを提案するために王子様たちはここに来たんだ。
「いかがでしょう?」
タデウス様に促される。
言葉に詰まったのは、元々そのつもりというか、ファニーがリリアンだからっていうか、リリアンがファニーっていうか、だからなんだけど。
「リリアン、君をさらに巻き込むことになるが、私たちと令嬢のために協力してもらえないだろうか」
「リリアンがいいというなら、私は反対しないよ」
王子様に頼まれ、お兄様に頭を撫でられる。
協力しようと思っていたこともそうだけど、陛下からいろいろ参加するよう贈り物があったため、春の夜会の行事に参加しなくてはいけなくなっていた。早々に退出しようとは思っていたけれど。
王子様たちにリリアンが扮したファニーと認識されているなら、王子様たちにバレると逃げる必要はないわけだし、バレないようにこちらにも協力してもらえるわけだから、悪いとこないよね。ややこしいような、シンプルなような……。設定は複雑だけど、王子様たちがそう望んでくれるなら、わたしの一人二役はとても楽になる。
「……令嬢のフリをします」
皆様ほっとしたようだ。
「では、明日のお茶会で。クリスタラー令嬢から私たちは婚約を勝ち取るために口説きまくるから、覚悟して欲しい」
は?
「お芝居、ですよね?」
「見破られては困るから、変に芝居くさくしない方がいいだろう」
「まあ、そうだよね。お芝居っていって、リリアンお芝居できる? 僕に一目惚れとかの演技できる?」
「なんでどさくさに紛れてお前に一目惚れなんて筋書きにしてるんだよ」
テオドール様とラモン様の掛け合いが始まる。
「リリアンは深く考えずに、普通に、素直に接してくれればいいよ」
王子様がにっこり微笑む。なんか、信用できない何かが。
逆に信用できる方は、さっきから静かで全然言葉を発していない。
「ファニーには私から話します。それでいいですか?」
皆様は頷かれた。ただその後に各々ファニーと話がしたいとおっしゃる。
ダメだよ、お兄様。彼らは魔力、神力、体型で人を見極められる。わたしが会ったら即バレだ。
目で訴えているのに、お兄様は頷かれた。
えーー、どうするの? と見上げれば、再び頭を撫でられた。大丈夫、心配するなというように。
「男爵」
沈黙を守っていたマテュー様が低い声を出す。
「いくらなんでもリリアンに気軽に触れすぎでは?」
お兄様が手を止める。
「これはレディ、失礼したね」
お兄様が謝ったのはわたしにだ。
「いいえ」
普通の叔父と姪としてはスキンシップが多いかもしれない。
大人の前世の記憶を思い出した後も、現世で両親を亡くしたのは哀しくて、辛くて。広い広いお屋敷にふたりきりで。お兄様に頼り切ってすがっていたからな。未だに頭を撫でてもらうと安心できるし嬉しい。でも今はただのメイドだから、そんなのおかしいね。気をつけなくては。
「リリーは頭撫でられるのが好きなんだね。おいで、僕が撫でてあげる」
「いえ、結構です。撫でられ好きはラモン様じゃありませんか」
「……ラモン、お前、リリアンに頭撫でさせたのか?」
「ん? 膝枕してもらっている時に撫でてもらったんだ」
「お前!」
タデウス様が呆れ果てている。
「リリアン、膝枕なんかしてやったのか?」
「膝枕で頭を撫でたんですか?」
お兄様とトムお兄様の同時ツッコミだ。
「ラモン様が具合が悪くなられてそれで……」
わたしは事情を説明した。
お兄様が目を手で覆う。
「皆様〝ファニー〟に触れないでくださいね。変な噂が立ったら困るので、それからリリアンはその日、皆様方との出来事は、残らず私に報告すること、いいね?」
「はい、わかりました」
その誰だかの賭け相手にみんなで挑むには情報は共有させておかないとね。
わたしはもちろんと返事をした。
皆様とおやすみなさいをして、急いでミリアにご飯を持っていく。ミリアの食べ方って小さい口を一生懸命動かしてもぐもぐしていて、小動物みたいでめちゃくちゃ癒される。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
というと
「ううん、王宮のお料理を食べられるなんて、こんなことでもなければ一生ありつけないわ。ファニーはもう食べないの?」
「うん、わたしはさっきいただいたから。お腹いっぱい」
「そっか」
とまたぱくつくミリアを見て癒されていたのだった。
一緒にお風呂に入って、大きなベッドで一緒に眠った。一応メイド部屋はついているのだけれど。なんだかんだ話しているうちに、いつの間にか寝入ってしまった。
え、そっち?
お兄様と目が合う。
なんか良く思われすぎだ。王家に嘘をついてまでの忠義のメイドになっとる。
「クリスタラー令嬢は到着された時に倒れられたというから、まだ体調が悪いんだね。王族に身を偽ったら自身だって危うくなるのに、君が代わりに出なくちゃならないほど、どうしても夜会に出る必要があったのかい?」
お兄様に確認を取らずにわたしは口を出した。
「……答えたくありません」
拒否する。どう言い逃れても嘘になるから。できれば皆様に嘘は少なくありたい。
魔力でも神力でも体格でもわたしって認識されている。もうこれは逃れようがない。
それはそう思っていたんだけど……。
身を偽っていたなって暴き立てる気でもなかったみたいだし、だったらただ見逃してくれればいいのに、わざわざ言ってきたということは、何かがあるんだ。
リリアンが夜会でファニーに扮したことはバレたんだ、それは受け入れる。
「あ、先ほどは助けていただき、ありがとうございました。助かりました」
「倒れたから、驚いた。大丈夫なのか?」
青い瞳が心配そうにわたしを見る。
ああ、それで最初に大丈夫か聞いてくださったのか。
「すみません。皆様と顔を合わせるわけにいかなかったので、気を失ったフリをしました」
「……なら、よかった」
怒るかと思ったが、そんなことはなく、皆様わたしの無事が良いとしてくださっている。
う、後ろめたい。
「お尋ねします。クリスタラー男爵とリリアンは恋人同士なのですか?」
「はぃ?」
マテュー様に聞かれて声が裏返った。
「それとも、そちらの侍従の方とでしょうか?」
わたしとお兄様とトムお兄様は顔を見合わせた。
なんだってそんな笑えない誤解が。
「あまりに親しげなので」
お兄様はふっとわたしをみつめて微笑む。
「ええ、とても大切な娘《こ》です。ですから、生半可な覚悟では近づかないでくださいね」
そう言ってわたしの手を持って手の甲にチュッと口づけした。
お、お兄様、何やってくれちゃってるの。
よく私の姫君だとか言って手やほっぺにチュッチュしてたけどさ。もう子供じゃないんだから!
お父様が私の小さな姫君と言ってチュッチュしまくっているのを見てたから、父を亡くしたわたしにそうしてくれたんだと思う。
そんなところを見ると、すぐに別れてしまったが嫁いできたお義姉様が嫌そうに顔を背けていた。いらんことまで思い出した。お義姉様には悪いことをしたと思う。あの時のわたしは、お義姉様にお兄様を取られてしまうのが怖かったから、お兄様がわたしに構ってくださると安心して、嬉しくて。そんなふうだったから、お義姉様はさぞかし居心地が悪かったと思う。だからふたりが別れたのはわたしのせいでもあるだろう。お兄様の幸せをわたしは奪ったんだ。
でも、いくら怒り心頭でも借金まみれにするというペナルティーを置き土産にしたのは天晴れで、お兄様の手におえる方ではなかったかもしれないと勝手な感想をいだいている。
ともう片方の手をトムお兄様が持ち上げて、愛おしそうにキスを落とす。
「とても大事な娘《こ》です」
ト、トムお兄様まで、何やってくれちゃうの!? 恥ずかしくて爆発しそうだ。
皆様もこちらを半開きの目で見ている。
「その大切なリリアンに身を偽らさせて夜会に出て。そこまでして、令嬢を外に出したくないのですか?」
皆様は以前にわたしがクリスタラー家で働いたことがあると思われたみたいだ。お兄様はゴホッと喉を整える。
「……それは違います。姪は本当に寝込んでいるのです。そこで、お付きメイドの彼女にファニーのフリをするようお願いしたのです」
「なんだってそんなことを?」
「わからないんですか? 原因はあなたたちです」
「私たち?」
「ファニーは外に出たことがない子です。緑を持っていなくても敏感で繊細なのか、多くの人がいる場所では気を失います」
まま、ミリアだね。
「そんなあの娘に縁談が舞い込んだ。16歳ですからね、世間では遅いぐらいでしょう。でもお相手がどこにも接点のない上流貴族の方々でした。断っても茶会や夜会の誘いが来て、止めに春の夜会だ。断れない、ね。もう、これは怯えるでしょう。元々丈夫じゃないのに、そんな精神状態の上、長旅で、今も眠っております。本当に体調が悪いが、そこで夜会でも参加しなかったら、医者に診せるだのいってファニーに何かするんじゃないかと思いましてね」
「そんなに思い詰めさせていたんですね。令嬢には直接謝ります。でも、それとリリアンの身を偽らせることは違いますよね? 彼女に罰が下されたらどうする気ですか?」
テオドール様が尋ねる。
「全ては私の責です。彼女は守ります」
……お兄様……。
お兄様、わたしに罰がくだるって言ったら、本当に身を挺して守ってくれそうだ。
わたしが巻き込んでいることなのに。
「男爵、提案があります」
タデウス様がお兄様を見据える。
「なんでしょう?」
「僕たちにも一口乗らせてください。それにより、リリアンに罰がくだされることはなくなります。逆に協力者として褒美も出ましょう」
わたしとお兄様は顔を合わせる。
「令嬢は体が弱い。でも僕たちはあちらの言う通りに賭けにのっているところを見せつける必要がある。だから、春の夜会の間、リリアンにクリスタラー令嬢の身代わりをしてもらうのです」
それか。夜会でわたしがファニーの代わりにパーティに出ているのに気付いて、それを提案するために王子様たちはここに来たんだ。
「いかがでしょう?」
タデウス様に促される。
言葉に詰まったのは、元々そのつもりというか、ファニーがリリアンだからっていうか、リリアンがファニーっていうか、だからなんだけど。
「リリアン、君をさらに巻き込むことになるが、私たちと令嬢のために協力してもらえないだろうか」
「リリアンがいいというなら、私は反対しないよ」
王子様に頼まれ、お兄様に頭を撫でられる。
協力しようと思っていたこともそうだけど、陛下からいろいろ参加するよう贈り物があったため、春の夜会の行事に参加しなくてはいけなくなっていた。早々に退出しようとは思っていたけれど。
王子様たちにリリアンが扮したファニーと認識されているなら、王子様たちにバレると逃げる必要はないわけだし、バレないようにこちらにも協力してもらえるわけだから、悪いとこないよね。ややこしいような、シンプルなような……。設定は複雑だけど、王子様たちがそう望んでくれるなら、わたしの一人二役はとても楽になる。
「……令嬢のフリをします」
皆様ほっとしたようだ。
「では、明日のお茶会で。クリスタラー令嬢から私たちは婚約を勝ち取るために口説きまくるから、覚悟して欲しい」
は?
「お芝居、ですよね?」
「見破られては困るから、変に芝居くさくしない方がいいだろう」
「まあ、そうだよね。お芝居っていって、リリアンお芝居できる? 僕に一目惚れとかの演技できる?」
「なんでどさくさに紛れてお前に一目惚れなんて筋書きにしてるんだよ」
テオドール様とラモン様の掛け合いが始まる。
「リリアンは深く考えずに、普通に、素直に接してくれればいいよ」
王子様がにっこり微笑む。なんか、信用できない何かが。
逆に信用できる方は、さっきから静かで全然言葉を発していない。
「ファニーには私から話します。それでいいですか?」
皆様は頷かれた。ただその後に各々ファニーと話がしたいとおっしゃる。
ダメだよ、お兄様。彼らは魔力、神力、体型で人を見極められる。わたしが会ったら即バレだ。
目で訴えているのに、お兄様は頷かれた。
えーー、どうするの? と見上げれば、再び頭を撫でられた。大丈夫、心配するなというように。
「男爵」
沈黙を守っていたマテュー様が低い声を出す。
「いくらなんでもリリアンに気軽に触れすぎでは?」
お兄様が手を止める。
「これはレディ、失礼したね」
お兄様が謝ったのはわたしにだ。
「いいえ」
普通の叔父と姪としてはスキンシップが多いかもしれない。
大人の前世の記憶を思い出した後も、現世で両親を亡くしたのは哀しくて、辛くて。広い広いお屋敷にふたりきりで。お兄様に頼り切ってすがっていたからな。未だに頭を撫でてもらうと安心できるし嬉しい。でも今はただのメイドだから、そんなのおかしいね。気をつけなくては。
「リリーは頭撫でられるのが好きなんだね。おいで、僕が撫でてあげる」
「いえ、結構です。撫でられ好きはラモン様じゃありませんか」
「……ラモン、お前、リリアンに頭撫でさせたのか?」
「ん? 膝枕してもらっている時に撫でてもらったんだ」
「お前!」
タデウス様が呆れ果てている。
「リリアン、膝枕なんかしてやったのか?」
「膝枕で頭を撫でたんですか?」
お兄様とトムお兄様の同時ツッコミだ。
「ラモン様が具合が悪くなられてそれで……」
わたしは事情を説明した。
お兄様が目を手で覆う。
「皆様〝ファニー〟に触れないでくださいね。変な噂が立ったら困るので、それからリリアンはその日、皆様方との出来事は、残らず私に報告すること、いいね?」
「はい、わかりました」
その誰だかの賭け相手にみんなで挑むには情報は共有させておかないとね。
わたしはもちろんと返事をした。
皆様とおやすみなさいをして、急いでミリアにご飯を持っていく。ミリアの食べ方って小さい口を一生懸命動かしてもぐもぐしていて、小動物みたいでめちゃくちゃ癒される。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
というと
「ううん、王宮のお料理を食べられるなんて、こんなことでもなければ一生ありつけないわ。ファニーはもう食べないの?」
「うん、わたしはさっきいただいたから。お腹いっぱい」
「そっか」
とまたぱくつくミリアを見て癒されていたのだった。
一緒にお風呂に入って、大きなベッドで一緒に眠った。一応メイド部屋はついているのだけれど。なんだかんだ話しているうちに、いつの間にか寝入ってしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,294
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる