学園最強の悪役令息たる俺様への営業妨害〜破滅寸前の家に転生した青年、真面目でヘタレでいい人な事が暴かれていく〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中

文字の大きさ
3 / 25
1章 悪役令息、パーティに参加する

手紙の返信が丁寧すぎる悪役令息(side生徒会)

しおりを挟む
-side ウィリアム-



「そもそも、手紙のリプライが丁寧すぎるんだよね」


 ホワイトワーク学園には、極悪非道の悪役令息がいるという噂だ。黒髪黒目の見た目麗しい顔で、成績優秀ではあるが、高身長で人を威圧し、睨みつける。極めて愛想が悪く、黒い噂の絶えないデズモンド公爵家の嫡男。俺の友である、ジークハルトの事である。
 ……まあ、噂は、あくまでも噂でしかない事が、これからも分かる。


 隠しきれない、真面目で誠実さ。彼の人柄が分かる手紙に、思わず笑みが溢れる。


「ウィリアム、ジークハルト様からお手紙の返事はどうだった?」
「ああ、ヘンリー。彼の事はやはり助けようと思う。決めたよ」


 僕の名前はウィリアム。一応、この国の第二王子だ。今はこのホワイトワーク学園の生徒会室で、生徒会長の仕事の合間にティータイムをしている。
 この前は、友人であるジークハルトが、彼の父親である、ポチ=デズモンドをどうにか追放している事を察したので、援護をしようと手紙を送ったのだ。
 ちなみに、隣にいるのは、俺の護衛役であるヘンリー。赤い髪テンパーで少しチャラそうな見た目の騎士である。


「でもさーー、相手は、あの悪名高き、シュタイン公爵家のジークハルト様だよ?ウィリアムが、親密に連絡をとっていたら、色々な貴族にあらぬ誤解を与えてしまうと思うんだけど……」
「あはは……!そうかもしれないね」
「だったら……!」
「でも、おそらく、彼は悪く無いよ」
「なぜ?」
「だってほら、見てよ、この手紙の返信」


 そう言って、僕は右腕である彼に手紙を見せる。そこには、まるで、仕事で苦労した経験のある、しっかりとした社会人のような、ビジネス形式に沿った、真面目すぎる文章が書かれていたのだ。
 元々、彼はそんなことできる度胸も無いヘタレだと思っていたが、こんなの、送ってくる時点で、疑うのも馬鹿馬鹿しくなるだろう。


「……字がとてつもなく上手いな。それに、返事も丁寧だ。……いや、丁寧すぎないか?文章形式のマナーからも、文章からも、教養を感じ取れる」


 ヘンリーは少し驚いたように、手紙を見る。ふふん。そうだろうそうだろう。彼の字は達筆でとてつもなく、上手いのだ。今時、王宮の文官でもここまで字は上手く無いだろう。教養も、ウィットに富んだ文章を書いていて、彼の手紙を読む度に、僕自身もとても勉強になる。


「だろう?彼は、学園ではヘタレな本性を隠して、舐められえないように、人に近づけさせないくらい怖い悪役オーラを放っているけど、実はとても真面目で良いやつなんだ。それが残念ながら、文章に表れてしまっている」
「ほほう、そんなイメージはなかったな。でも確かに、この文章を見るたびに、隠しきれない良い人オーラというやつがでてる気がする。ははっ……!文章が丁寧すぎる悪役令息というのは、物語でも聞いたことがねえな」
「今回の一件だって、彼は知らないと言っていたし、すでにある程度父親であるポチがやったということの裏も取れている。彼はこの通り真面目だし、すでにこの件もデズモンド公爵家は揉み消せているから、表に出すことなく、ポチを追放するだけで、裏で処理すればいいと思ったんだよ」


 正直、デズモンド家の経済力、軍事力は王家にとっても、失うにはあまりにも惜しい。
 トップが人身売買したのは、見過ごせないが、あの家を取り潰すのはあまりにも庶民への影響が大きすぎるだろう。
 だから、トップを真面目で誠実な彼にするのが、一番穏便な解決の仕方だと僕は思っている。
 そのためには、彼の悪役令息という評判をなんとかしたいんだけど、彼はどうも進んで悪役令息になろうと思ってそうなんだよね。
 自分のことも、“俺様”というし……、なんか、謎に声を作っている気もするんだ。よく、作り声の地声の男性にしては、やや高めの声が出ているし……。うーん。困った。


「なるほど……、彼の今の評判だと、引き継いだ時、他の貴族達からはいろいろ言われるだろうが、こうしたマナーのしっかりとして、苦労をした経験のあることがはっきり見て取れる人間だったら、信頼を勝ち取れそうだし、大丈夫だと。実際に、色々裏では言われているだろうが、それでも彼の成績は、落ちることなく、学年で主席。戦闘訓練を見る限り、メンタルも強そうだしな」
「そうそう。こんな苦労していて、優秀な人を、助けないわけにはいかないだろう?」
「確かに」
「まあ、とりあえず、彼とお茶会をしながら、話をすり合わせるか」
「ほどほどに、手加減しなよ。ウィリアム」
「まあまあ……」


 まあ、彼は頑張って、キャラ作りをしているみたいだけど、周りがそれを理解して付き合えば良いだけの話。手始めに、まずはヘンリーと打ち明けさせてみるか。彼の性格的に多少、荒療治になるのは仕方ない。


-------------------------------
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...