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神様はいるの?本当に?
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ピピピピッ!ピピピピッ!ピピp…
バンッ!!
今日も朝が来た…。目を覚ませばいつもの部屋。窓を開ければいつもの景色。
「あれ?」
ベランダに鳩がとまっていた。こんな白い鳩をみると…つい、あのことを思い出す。
「もう…糞落としたらゆるさなんかんね」
あの日をなぜか、懐かしんでしまう。
「さっ…準備しよ」
いつもと変わらない…。
髪を整えて、顔を洗い、歯を磨き、服を着替えて、朝食をすませる。
「よし!準備OK!」
トントンッ
自分の部屋を出て、隣りの部屋をノックするけど…もう出てくる人はいないか。
今日は初出勤の日…ドキドキが止まらない。
今日はどんな新しい発見ができるかな。
今日はあの人とどんな話をするのかな。
今日は誰と会えるかな。
…そんな当たり前な事を考えるのが。明日を迎える事が何より楽しい。
明日がくることを嫌っていたあの頃の私に…それを教えてくれたのは……
あなたは私の前にもう現れないことぐらい知っている。あなたと過ごしたあの日々が戻って来ないことも。だからこそ…前を向いて。自分らしく生きていこう。あなたがいなくたって。そう思っていた。
でも…今でもあなたの笑顔を、あなたの声をまだ探してる自分がいる…
変でしょ?
~神様はいるの?本当に?~
「ねぇ!りじちょうせんせ!!クリスマスだね!!」
まだ7歳の希美(のぞみ)はエフェルト教会の孤児院に暮らす子供の1人。その年のクリスマス。理事長の白百合(さゆり)の膝の上に座り、満天の星空を丘の上で眺めていた。
「そうねぇ!今日はイエス様の誕生日なのよ!だからキリスト教徒は盛大に祝うのよ」
「そっかぁ!あ、でもイエス様は神の子なんだよね!?神様もイエス様も見えないよ??どこにいるの!?」
「うーん…そうね!神様はあなたの心の中にいるのよ?あなたが本当に寂しい時や助けて欲しい時、きっと助けてくれるわ!」
「本当!?」
「本当よ!いい?この世のすべては主によって我々に与えられたお恵なの。ものもそうだけど人生の試練もね。だって希美に親がいないのは嫌だろうけど、そうじゃなかったら私やシスター、神父様達は希美とあえなかったのよ?」
「本当だぁ!すごい!よし!あ~めん!」
「アーメン(主よ…どうかこの子に幸せな未来が待っていますように)」
アーメン…
その言葉を口にしなくなってもう何年になるだろう…
ピピピッ!ピピピッ!ピピ…バンッ!!
「まだ眠い…よいしょっ。」
希美が時計をみると5時半をさしていた。
まだボヤッとした意識の中…体をベッドから起こし、窓をあけた。
「う~ん!!…ん?」
窓をあけた目の前に自分をじっとみる鳩が1羽いた。なぜかその鳩は人間が目の前にきても逃げないのだ。奇妙なぐらいその場を離れずただ首を傾げたり目をパチクリさせるだけだ。
「糞落としたら…ゆるさんかんね。」
目をギロリとさせて鳩を睨むと鳩は突然
バサッ!!
翼をはばたかせて遠くへ行ってしまった。
「へんなの。」
テレビをつけて表示時計を確認する…と…
「へ?」
表示時計は8時半になっている。
「え…」
自分の目覚ましは6時半をさしている。
「あ…。」
食堂への集合時間は8時半d……
「やばい」
ボサボサの髪をくしでとかし、制服に着替えた。
あの日から10年…もう高校三年生になる。今日は一学期始業式だ。
三年の印である青の腕輪を付け、小さい頃から変わらぬ三つ編みで髪を束ねた後、寮の食堂へ向かった。
食堂に入るといつもと同じ顔達がいつもと同じ祈りの言葉を唱えている。
ガタンッ!
急いで自分の席に座りパンにジャムを塗り口にはこんだ。
すると…
「おは!のぞみん!なんだねぼうか?」
博人がとなりに急に座ってニコニコしながら話しかけてきた。博人は希美の小さな頃からの友達である。いわば幼なじみだ。
「うむふぁい。ひふぇて。(訳/うるさい。消えて。)」
「ひ!酷くない!?前は『ひろくん!』って呼んだりしてめぐりんと2人でベタベタt…っておい!!」
サラッと博人の話を無視し、急ぎ足で席を立った。
「のぞみん食後の祈りは!?」
「めんどうだから。あと…『のぞみん』やめてね『博人さん』」
と言い残すと学校へ急いだ。
「く…幼なじみにしかわからぬアイツの顔…そうだよ。あいつは怖キャラだったんだよな…。」
「多分皆登校してるか…自習は無理そ…」
バンッ!!
誰かにぶつかられて顔面から床にダイブした。多分…付属大学の先輩。
「おはよう!「理事長のお気に入り」さんっ!!」
「希美ちゃん大丈夫!?…しかめっ面のせいでブサイクな顔がさらにブサイクよ??」
「キツぅー!!ナイス!!www」
それを見て止めようと思う者なんて周りにいなかった。
むしろ、先生までもが『あぁ、またやってる』という気もちで笑って見ているのだ…中には厳しい表情をする者もいるでもそいつだって同じ…もはやこれは一種の『娯楽』だ。
「どうも。今日もお元気そうで何よりです」(本当元気だな…こいつら。)
「は?」
「見てよあれ。また表情一つ変えてないw」
「どこまで不気味なんだよ。魔女かって感じだよな。」
周りからもひそひそ話が聞こえてくる。
「うわぁ。でぇーた!希美(のぞみ)ならぬ不希美(ぶきみ)!!」
「あんたよくそんな名前付けられたよねぇ!」
バァンッ!!
一人にカバンが蹴り飛ばされた。
希美のあだ名は「理事長のお気に入り」または名前を否定された「不希美(ぶきみ)」である。
周りからもよくこれで呼ばれる。
希美は慣れっこだ。スッと立ち上がり教室へ向かった。
表情一つ変えてなかったが。希美はこんな毎日に嫌気がさしていた。
いや、こんな人生を生きることに疲れていた…のかも。
「おはよう。」
教室で希美がそう言うと皆固まった。ゆっくりと表情を戻し再びおしゃべりやゲームをやり出した。先輩の圧力で誰も希美とは話そうとしなかった。
希美が自分の一番後の席に座ると。一つ机を挟んだ真横の席にいた恵がそっと横を見て
「お…おはよう。のぞ…」
「話しかけない方がいいんじゃない?…もう、関わらないでって言ったでしょ?」
「で、でも!」
「それ以上無駄に関わると…次何されるか分からないよ?この件に関しては先生ガン無視だし」
「・・・」
恵は包帯を巻かれた肘をさすりながらうなだれることしかできなかった。
彼女も希美の幼なじみのひとりだ。
先生が入ってきたら即授業開始だ。
「起立!礼!着席!」
どこの学校にもある光景。
だがこの学校の授業ペースは半端ない。成績はいつも競走状態、主席で卒業することは生徒の『夢』であり『目標』だ。
だからその座に既にいて1度も誰にも譲った事のない希美は先輩からも同級生からもそして、授業中に自分のミスを鋭く指摘される事を理由に周りの先生からも冷たい態度を取られていた。
今日も最後の授業で、
「先生…そこは4乗になるはずでは。」
「そ、そうね。ご指摘いつもありがとう。あ、そうだわ!希美さん。これ。解いてくれる?」
コツコツと笑顔でチョークで指した問は卒業レベルの式だ。嫌がらせのつもりなのか。
しかし…
「√2分の5+3Xの5乗です…。」
「…っ!?あ、当たってるわ。す、素晴らしいです。」
「そんなの…今の式を発展させれば解けます。」
もはや周りからみてもバケモノだ。
希美は皆の引いた顔を見て…
「私…先生の指示に従っただけですよ。なんで引かれなきゃいけないんですか…」
キーンコーンカーンコーン♪
キーンコーンカーンコーン♪
「はい!続きは明日ね!!」
「起立!礼!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
「ちょっと。希美さん。」
「はい。」
先生に呼ばれた希美はカバンをしょいながら教卓前にきた。
「希美さんって…いつもこんな?」
(あぁ…この人最近赴任してきた人か。)
「はい…こんなです」
「今日試してみて思ったけど、頭いいのは自由だけどね。もう少し周りを見て行動や発言はした方がいいわよ?」
「なぜです?」
希美はキョトンとした顔をしてたずねた。
「はぁ…思った事あまり言いすぎると、ただでさえ「秀才」っていう引かれる武器あるのにおまけに「気難しい」となると…今も就職しても最初はいいだろうけどそのうち「あいつ頭いいだけじゃん?話合わなくない?邪魔じゃね?」ってなるわよ?」
「「邪魔」か。じゃあ、いっそ死んであげましょうか?」
「はぁ!?」
「主席の席も開く、空気乱すやつもいなくなって皆嬉しいし、私もそろそろ疲れたし…もうそれでいいじゃn…」
『だめだ!!そんなことしちゃ!』
突然どこからか声がした。
「え?」
希美はあたりを見渡した。
「ん?…って!そんなところよ!もう少しいきることに対して努力を…」
(この人あんな声低くないし…聞こえてなかったぽいし。)
「アドバイスありがとうございました。じゃ、門限あるので寮に戻ります。」
「あら、あなた孤児院生なの?門限?」
「はい。一次帰宅の門限があって。」
「そう。じゃあ、今後は気を付けてね。」
「はい…さようなら。」
「あ!待って!あなた…」
「はい?」
「孤児院生ってことはキリスト教徒よね?周りの孤児院生は十字架付けたり聖書持ってたりするのに…あなたは持ってないの?」
「ふふっ…いりませんもんそんなもの。お荷物なだけ。肩こりですし。」
「そ、そう?じゃあさようなら。」
希美はゆくっりお辞儀をして寮へ戻っていった。
「…い、いらない。聖書や十字架って…キリスト教徒には大切なアイテムじゃなかったっけ??」
希美はスタスタと寮へ続く渡り廊下を歩きながら横にある庭へでた。
そして大きく深呼吸し…
「一次帰宅門限なんてないんだけどね。ふぅ、やっと…今日が終わる。この時間が一番落ち着くな。」
希美にとってはこの日が沈む前の夕方が一番すきな時間だ。誰にも会わず、暑くなく寒くもない。 一番落ち着く時間だ。
「明日なんか…来なくていいよ。ずっと。このまま…」
♪♪~~♪
いつもの6時のお知らせ放送だ。
"皆さん。18時になりました。寮生は寮に、帰宅生は家に帰り、今日一日の疲れをとりましょう。"
(たしかに…寮の部屋が一番落ち着く…)
"皆さん。今日一日が無事終わる事は主による祝福のおかげですね。今日も主に感謝し…"
(ふぅ。またか…)
"明日も私たちを守ってください。"
(守る…どうやって。)
その瞬間希美の脳内に沢山のこえがひびいた
『主よ…感謝します』
『主よ…このお恵みをありがとうございます』
『あなた…キリスト教徒よね?』
『今日一日が無事に終わるのは主の祝福のおかげ…』
『神に感謝…』
『アーメン…』
(バカバカしい…そんなの)
『理事長のお気に入り!』
『不希美よね本当!』
『あいつに関わらない方がいいよな』
『人形みてぇ』
(毎日が悪夢…。こんなの…お恵みなわけない)
『神様はあなたの心の中にいるのよ?』
『大丈夫よ希美!』
(何が…大丈夫なの)
『あなたが本当に寂しい時や助けて欲しい時、きっと助けてくれるわ!だから毎日…祈り続け…』
「あほらしい…」
希美は林が真下にある丘の先に立った。
「神様、主の恵、信じるものは救われる。ふざけた事抜かさないで…」
『助けてよ…神様。ねぇ…私どうすれば…』
「本当にいるなら…目で見える形で見せて…」
『「邪魔じゃね?」ってなるわよ?』
「見せて…目の前で」
『産まれてすぐ捨てられたんでしょ?wwお気の毒ね』
ゆっくり目を開ける
「見えない…見えるわけない…はぁ…」
ザァァァ
風の音と共に希美の足元の崖は少しずつ崩れていた。そして少しずつ希美の体が前へ倒れていった。
「これで明日は…来ない」
目を瞑り、体から力を抜いた瞬間。
「だめだ!そっちへ行くな!!」
ザァァァァァァァ!!!
「は!?」
希美は体の力を入れ直し急いで声のする後の方を見た。
「だれも…いない。あ…」
「あら。希美ちゃんどうしたの?そんなところで座り込んで」
そう言ってニコニコ希美を見ていたのは掃除のおばさんの一人のカオリさんだ。カオリさんは希美が赤ん坊の頃からいるのだ。
「か、カオリさん。いえ…なんでもありません。ただ…やっぱりなんでもないです。じゃあ…」
「あ!希美ちゃん!前みたいにお話してくれないの?」
「お話?」
「聖書の!!」
「いえ。勉強があるので…」
「そう。じゃあね!!また!」
「はい…」
希美は素早く部屋に戻って、
バンっ…ドサッ!
急いでベッドに倒れた。
(情緒不安定かよ。バカバカしいのは私だよ…。本当にバカバカしい。生きたくない。こんな人生…でもあの声は?)
Zzzz…Zzzz…
いつの間にか寝てしまっていた。
『あれ…何処ここ。あの丘?』
希美は夢の中でさっきの丘にいた。
『夢…だよね。早く醒めないかなぁ』
『ま…r!!』
『だれ?あなた』
目の前には顔は見えぬが男がいた。
『救えなかった…本当に…ごめんよ』
『あの。私希美です…けど』
『希美…いい名前を貰ったんだね。次は必ず救ってみせるから!…大丈夫。君をもうあんな目には…合わせない。今すぐ会いに行くから……』
すると男は希美の足下に花を置いた。
『そっちで待ってて…』
『え…待っててt…?』
ザァァァァァァァ!!
すると急に強い風が吹き、希美は体を崖に追い出された。足が地面からはなれた。
『あ…』
目の前が…暗くなった。
『これ…前もどこかで…』
バァサッ!!!
「わぁァァァ!!はあぁ…久しぶりに叫んだ…気がする。しかも制服で寝てるし。もう…やだ。あ、今日土曜日…私の班が聖堂の掃除だけど。誰も来ないよね。」
よっこらせと言わんばかりに体を起こした希美は普段着に着替えて聖堂へと向かった。
小さな頃はよくあの二人(博人と恵)と一緒に日曜日以外にも遊びに来ていたものだが…
~~~~~~~~~~~
『早く鬼決めようぜ!って何やってんだよ!お前ら!』
『うるせぇな!ひろくんも手伝えよ!』
『これ重いよぉ。ひろくん男でしょ!手伝って!』
『お前らがシスターに途中でつかまるからだろ!?聖書って一冊一冊重たすぎるんだよ!もっと漫画みたいにうすくしろよな!』
『そんなこと言うなよ!この本は一冊一冊大切な教えがかいてあるんだから!大切に受け継がなきゃ!』
『ふぅーん(´・ω・`)』
『のぞみん!早く運んじゃお!』
パチッ
『せやせや。こんなやつほっといて行こ行こ』
ガチャ
『いやいや!電気けしてドアまでしめんなやァ!!ちょっと!置いていき方ァァァ』
~~~~~~~~~~~~
「今となっては…掃除以外来なくなったな。まぁ、本当はダメだけど。来ようと思えないなぁ」
そんな独り言をいいながらモップがけをした。床を乾かすために窓を開くと…
ビュゥゥゥゥ!!
5枚ぐらいの紙が窓の外へ出ていった。
「あ、あらら。礼拝日のプリントが飛んでっちゃった。取りに行こ」
外に向かいながら昨日の夢を思い出す。
「顔は…見てないけど。声は覚えてる。あ…あった。よりによって…」
あの(夢の)場所…
「滑り落ちませんようにぃ」
そう言いながらプリントを拾っていると、
「わぁ!」
一枚飛んでいってしまった。
「ま!待っt…!?」
足が…地面から離れた…。
(あぁ。死ぬんかな…そっか。あれは予言…だったのかもね)
ボスッ!!
「え!?」
誰かに両腕を掴まれて…
「はぁ!!」
ドサッ!!
引っ張り戻された。
「やったぁ!!つぎは救えた!!」
ん?どっかで聞き覚えのある声だ。
サッと振り向くと…
「あ、あなたは!……ダレダ?」
外国人の自分より少し年上の青年(?)がいた…が、髭と髪は伸びていて服装は布でできたボロボロなものでまるで…
「大昔のイスラエル人(?)…かよ。」
「はい!そうです!!」
「はい!?(わけわからん)」
誰かはわからないが…この声は…あの時の
確かにあの人だ。でもなんで?
「あの…」
「はい!」
「あ…ありがとうございました助かりました」
「はい!!良かったです!」
「あの…名前は?」
「僕…ですか?」
「はい…」
「僕を知らないんですか!?あ、そっかぁ…わすれてますよねwww」
「じれったい…早くいってください。」
「僕は!貴方の救世主!『イエスキリスト』です!o(`・ω´・+o) 」
救世主…
シーン……
(なんだあのイエスキリストか…)
シーン………
「…な、.....なるほどぉ.…」
(…っていやまていッ!!やばめの厨二病きた!?)
「…ってなわけ!冗談いうならもう少し面白いやつ…」
「いえ!本当です!あなたを救うために主に選ばれた救世主です!何世紀も前から!あなたに会いに来ました!」
「はぁ。それはどうも…(∵`)」
(だめ…重症だコイツ)
「信じてくれますよね?!希美さん!」
(信じられるか!!)
希美はその場でポカーンとすることしかできなかった。
これは…ほんの一瞬の小さな奇跡の物語の始まりだった。
「いや!勝手に始めないd…!」
続く!!
バンッ!!
今日も朝が来た…。目を覚ませばいつもの部屋。窓を開ければいつもの景色。
「あれ?」
ベランダに鳩がとまっていた。こんな白い鳩をみると…つい、あのことを思い出す。
「もう…糞落としたらゆるさなんかんね」
あの日をなぜか、懐かしんでしまう。
「さっ…準備しよ」
いつもと変わらない…。
髪を整えて、顔を洗い、歯を磨き、服を着替えて、朝食をすませる。
「よし!準備OK!」
トントンッ
自分の部屋を出て、隣りの部屋をノックするけど…もう出てくる人はいないか。
今日は初出勤の日…ドキドキが止まらない。
今日はどんな新しい発見ができるかな。
今日はあの人とどんな話をするのかな。
今日は誰と会えるかな。
…そんな当たり前な事を考えるのが。明日を迎える事が何より楽しい。
明日がくることを嫌っていたあの頃の私に…それを教えてくれたのは……
あなたは私の前にもう現れないことぐらい知っている。あなたと過ごしたあの日々が戻って来ないことも。だからこそ…前を向いて。自分らしく生きていこう。あなたがいなくたって。そう思っていた。
でも…今でもあなたの笑顔を、あなたの声をまだ探してる自分がいる…
変でしょ?
~神様はいるの?本当に?~
「ねぇ!りじちょうせんせ!!クリスマスだね!!」
まだ7歳の希美(のぞみ)はエフェルト教会の孤児院に暮らす子供の1人。その年のクリスマス。理事長の白百合(さゆり)の膝の上に座り、満天の星空を丘の上で眺めていた。
「そうねぇ!今日はイエス様の誕生日なのよ!だからキリスト教徒は盛大に祝うのよ」
「そっかぁ!あ、でもイエス様は神の子なんだよね!?神様もイエス様も見えないよ??どこにいるの!?」
「うーん…そうね!神様はあなたの心の中にいるのよ?あなたが本当に寂しい時や助けて欲しい時、きっと助けてくれるわ!」
「本当!?」
「本当よ!いい?この世のすべては主によって我々に与えられたお恵なの。ものもそうだけど人生の試練もね。だって希美に親がいないのは嫌だろうけど、そうじゃなかったら私やシスター、神父様達は希美とあえなかったのよ?」
「本当だぁ!すごい!よし!あ~めん!」
「アーメン(主よ…どうかこの子に幸せな未来が待っていますように)」
アーメン…
その言葉を口にしなくなってもう何年になるだろう…
ピピピッ!ピピピッ!ピピ…バンッ!!
「まだ眠い…よいしょっ。」
希美が時計をみると5時半をさしていた。
まだボヤッとした意識の中…体をベッドから起こし、窓をあけた。
「う~ん!!…ん?」
窓をあけた目の前に自分をじっとみる鳩が1羽いた。なぜかその鳩は人間が目の前にきても逃げないのだ。奇妙なぐらいその場を離れずただ首を傾げたり目をパチクリさせるだけだ。
「糞落としたら…ゆるさんかんね。」
目をギロリとさせて鳩を睨むと鳩は突然
バサッ!!
翼をはばたかせて遠くへ行ってしまった。
「へんなの。」
テレビをつけて表示時計を確認する…と…
「へ?」
表示時計は8時半になっている。
「え…」
自分の目覚ましは6時半をさしている。
「あ…。」
食堂への集合時間は8時半d……
「やばい」
ボサボサの髪をくしでとかし、制服に着替えた。
あの日から10年…もう高校三年生になる。今日は一学期始業式だ。
三年の印である青の腕輪を付け、小さい頃から変わらぬ三つ編みで髪を束ねた後、寮の食堂へ向かった。
食堂に入るといつもと同じ顔達がいつもと同じ祈りの言葉を唱えている。
ガタンッ!
急いで自分の席に座りパンにジャムを塗り口にはこんだ。
すると…
「おは!のぞみん!なんだねぼうか?」
博人がとなりに急に座ってニコニコしながら話しかけてきた。博人は希美の小さな頃からの友達である。いわば幼なじみだ。
「うむふぁい。ひふぇて。(訳/うるさい。消えて。)」
「ひ!酷くない!?前は『ひろくん!』って呼んだりしてめぐりんと2人でベタベタt…っておい!!」
サラッと博人の話を無視し、急ぎ足で席を立った。
「のぞみん食後の祈りは!?」
「めんどうだから。あと…『のぞみん』やめてね『博人さん』」
と言い残すと学校へ急いだ。
「く…幼なじみにしかわからぬアイツの顔…そうだよ。あいつは怖キャラだったんだよな…。」
「多分皆登校してるか…自習は無理そ…」
バンッ!!
誰かにぶつかられて顔面から床にダイブした。多分…付属大学の先輩。
「おはよう!「理事長のお気に入り」さんっ!!」
「希美ちゃん大丈夫!?…しかめっ面のせいでブサイクな顔がさらにブサイクよ??」
「キツぅー!!ナイス!!www」
それを見て止めようと思う者なんて周りにいなかった。
むしろ、先生までもが『あぁ、またやってる』という気もちで笑って見ているのだ…中には厳しい表情をする者もいるでもそいつだって同じ…もはやこれは一種の『娯楽』だ。
「どうも。今日もお元気そうで何よりです」(本当元気だな…こいつら。)
「は?」
「見てよあれ。また表情一つ変えてないw」
「どこまで不気味なんだよ。魔女かって感じだよな。」
周りからもひそひそ話が聞こえてくる。
「うわぁ。でぇーた!希美(のぞみ)ならぬ不希美(ぶきみ)!!」
「あんたよくそんな名前付けられたよねぇ!」
バァンッ!!
一人にカバンが蹴り飛ばされた。
希美のあだ名は「理事長のお気に入り」または名前を否定された「不希美(ぶきみ)」である。
周りからもよくこれで呼ばれる。
希美は慣れっこだ。スッと立ち上がり教室へ向かった。
表情一つ変えてなかったが。希美はこんな毎日に嫌気がさしていた。
いや、こんな人生を生きることに疲れていた…のかも。
「おはよう。」
教室で希美がそう言うと皆固まった。ゆっくりと表情を戻し再びおしゃべりやゲームをやり出した。先輩の圧力で誰も希美とは話そうとしなかった。
希美が自分の一番後の席に座ると。一つ机を挟んだ真横の席にいた恵がそっと横を見て
「お…おはよう。のぞ…」
「話しかけない方がいいんじゃない?…もう、関わらないでって言ったでしょ?」
「で、でも!」
「それ以上無駄に関わると…次何されるか分からないよ?この件に関しては先生ガン無視だし」
「・・・」
恵は包帯を巻かれた肘をさすりながらうなだれることしかできなかった。
彼女も希美の幼なじみのひとりだ。
先生が入ってきたら即授業開始だ。
「起立!礼!着席!」
どこの学校にもある光景。
だがこの学校の授業ペースは半端ない。成績はいつも競走状態、主席で卒業することは生徒の『夢』であり『目標』だ。
だからその座に既にいて1度も誰にも譲った事のない希美は先輩からも同級生からもそして、授業中に自分のミスを鋭く指摘される事を理由に周りの先生からも冷たい態度を取られていた。
今日も最後の授業で、
「先生…そこは4乗になるはずでは。」
「そ、そうね。ご指摘いつもありがとう。あ、そうだわ!希美さん。これ。解いてくれる?」
コツコツと笑顔でチョークで指した問は卒業レベルの式だ。嫌がらせのつもりなのか。
しかし…
「√2分の5+3Xの5乗です…。」
「…っ!?あ、当たってるわ。す、素晴らしいです。」
「そんなの…今の式を発展させれば解けます。」
もはや周りからみてもバケモノだ。
希美は皆の引いた顔を見て…
「私…先生の指示に従っただけですよ。なんで引かれなきゃいけないんですか…」
キーンコーンカーンコーン♪
キーンコーンカーンコーン♪
「はい!続きは明日ね!!」
「起立!礼!」
「「「「ありがとうございました!」」」」
「ちょっと。希美さん。」
「はい。」
先生に呼ばれた希美はカバンをしょいながら教卓前にきた。
「希美さんって…いつもこんな?」
(あぁ…この人最近赴任してきた人か。)
「はい…こんなです」
「今日試してみて思ったけど、頭いいのは自由だけどね。もう少し周りを見て行動や発言はした方がいいわよ?」
「なぜです?」
希美はキョトンとした顔をしてたずねた。
「はぁ…思った事あまり言いすぎると、ただでさえ「秀才」っていう引かれる武器あるのにおまけに「気難しい」となると…今も就職しても最初はいいだろうけどそのうち「あいつ頭いいだけじゃん?話合わなくない?邪魔じゃね?」ってなるわよ?」
「「邪魔」か。じゃあ、いっそ死んであげましょうか?」
「はぁ!?」
「主席の席も開く、空気乱すやつもいなくなって皆嬉しいし、私もそろそろ疲れたし…もうそれでいいじゃn…」
『だめだ!!そんなことしちゃ!』
突然どこからか声がした。
「え?」
希美はあたりを見渡した。
「ん?…って!そんなところよ!もう少しいきることに対して努力を…」
(この人あんな声低くないし…聞こえてなかったぽいし。)
「アドバイスありがとうございました。じゃ、門限あるので寮に戻ります。」
「あら、あなた孤児院生なの?門限?」
「はい。一次帰宅の門限があって。」
「そう。じゃあ、今後は気を付けてね。」
「はい…さようなら。」
「あ!待って!あなた…」
「はい?」
「孤児院生ってことはキリスト教徒よね?周りの孤児院生は十字架付けたり聖書持ってたりするのに…あなたは持ってないの?」
「ふふっ…いりませんもんそんなもの。お荷物なだけ。肩こりですし。」
「そ、そう?じゃあさようなら。」
希美はゆくっりお辞儀をして寮へ戻っていった。
「…い、いらない。聖書や十字架って…キリスト教徒には大切なアイテムじゃなかったっけ??」
希美はスタスタと寮へ続く渡り廊下を歩きながら横にある庭へでた。
そして大きく深呼吸し…
「一次帰宅門限なんてないんだけどね。ふぅ、やっと…今日が終わる。この時間が一番落ち着くな。」
希美にとってはこの日が沈む前の夕方が一番すきな時間だ。誰にも会わず、暑くなく寒くもない。 一番落ち着く時間だ。
「明日なんか…来なくていいよ。ずっと。このまま…」
♪♪~~♪
いつもの6時のお知らせ放送だ。
"皆さん。18時になりました。寮生は寮に、帰宅生は家に帰り、今日一日の疲れをとりましょう。"
(たしかに…寮の部屋が一番落ち着く…)
"皆さん。今日一日が無事終わる事は主による祝福のおかげですね。今日も主に感謝し…"
(ふぅ。またか…)
"明日も私たちを守ってください。"
(守る…どうやって。)
その瞬間希美の脳内に沢山のこえがひびいた
『主よ…感謝します』
『主よ…このお恵みをありがとうございます』
『あなた…キリスト教徒よね?』
『今日一日が無事に終わるのは主の祝福のおかげ…』
『神に感謝…』
『アーメン…』
(バカバカしい…そんなの)
『理事長のお気に入り!』
『不希美よね本当!』
『あいつに関わらない方がいいよな』
『人形みてぇ』
(毎日が悪夢…。こんなの…お恵みなわけない)
『神様はあなたの心の中にいるのよ?』
『大丈夫よ希美!』
(何が…大丈夫なの)
『あなたが本当に寂しい時や助けて欲しい時、きっと助けてくれるわ!だから毎日…祈り続け…』
「あほらしい…」
希美は林が真下にある丘の先に立った。
「神様、主の恵、信じるものは救われる。ふざけた事抜かさないで…」
『助けてよ…神様。ねぇ…私どうすれば…』
「本当にいるなら…目で見える形で見せて…」
『「邪魔じゃね?」ってなるわよ?』
「見せて…目の前で」
『産まれてすぐ捨てられたんでしょ?wwお気の毒ね』
ゆっくり目を開ける
「見えない…見えるわけない…はぁ…」
ザァァァ
風の音と共に希美の足元の崖は少しずつ崩れていた。そして少しずつ希美の体が前へ倒れていった。
「これで明日は…来ない」
目を瞑り、体から力を抜いた瞬間。
「だめだ!そっちへ行くな!!」
ザァァァァァァァ!!!
「は!?」
希美は体の力を入れ直し急いで声のする後の方を見た。
「だれも…いない。あ…」
「あら。希美ちゃんどうしたの?そんなところで座り込んで」
そう言ってニコニコ希美を見ていたのは掃除のおばさんの一人のカオリさんだ。カオリさんは希美が赤ん坊の頃からいるのだ。
「か、カオリさん。いえ…なんでもありません。ただ…やっぱりなんでもないです。じゃあ…」
「あ!希美ちゃん!前みたいにお話してくれないの?」
「お話?」
「聖書の!!」
「いえ。勉強があるので…」
「そう。じゃあね!!また!」
「はい…」
希美は素早く部屋に戻って、
バンっ…ドサッ!
急いでベッドに倒れた。
(情緒不安定かよ。バカバカしいのは私だよ…。本当にバカバカしい。生きたくない。こんな人生…でもあの声は?)
Zzzz…Zzzz…
いつの間にか寝てしまっていた。
『あれ…何処ここ。あの丘?』
希美は夢の中でさっきの丘にいた。
『夢…だよね。早く醒めないかなぁ』
『ま…r!!』
『だれ?あなた』
目の前には顔は見えぬが男がいた。
『救えなかった…本当に…ごめんよ』
『あの。私希美です…けど』
『希美…いい名前を貰ったんだね。次は必ず救ってみせるから!…大丈夫。君をもうあんな目には…合わせない。今すぐ会いに行くから……』
すると男は希美の足下に花を置いた。
『そっちで待ってて…』
『え…待っててt…?』
ザァァァァァァァ!!
すると急に強い風が吹き、希美は体を崖に追い出された。足が地面からはなれた。
『あ…』
目の前が…暗くなった。
『これ…前もどこかで…』
バァサッ!!!
「わぁァァァ!!はあぁ…久しぶりに叫んだ…気がする。しかも制服で寝てるし。もう…やだ。あ、今日土曜日…私の班が聖堂の掃除だけど。誰も来ないよね。」
よっこらせと言わんばかりに体を起こした希美は普段着に着替えて聖堂へと向かった。
小さな頃はよくあの二人(博人と恵)と一緒に日曜日以外にも遊びに来ていたものだが…
~~~~~~~~~~~
『早く鬼決めようぜ!って何やってんだよ!お前ら!』
『うるせぇな!ひろくんも手伝えよ!』
『これ重いよぉ。ひろくん男でしょ!手伝って!』
『お前らがシスターに途中でつかまるからだろ!?聖書って一冊一冊重たすぎるんだよ!もっと漫画みたいにうすくしろよな!』
『そんなこと言うなよ!この本は一冊一冊大切な教えがかいてあるんだから!大切に受け継がなきゃ!』
『ふぅーん(´・ω・`)』
『のぞみん!早く運んじゃお!』
パチッ
『せやせや。こんなやつほっといて行こ行こ』
ガチャ
『いやいや!電気けしてドアまでしめんなやァ!!ちょっと!置いていき方ァァァ』
~~~~~~~~~~~~
「今となっては…掃除以外来なくなったな。まぁ、本当はダメだけど。来ようと思えないなぁ」
そんな独り言をいいながらモップがけをした。床を乾かすために窓を開くと…
ビュゥゥゥゥ!!
5枚ぐらいの紙が窓の外へ出ていった。
「あ、あらら。礼拝日のプリントが飛んでっちゃった。取りに行こ」
外に向かいながら昨日の夢を思い出す。
「顔は…見てないけど。声は覚えてる。あ…あった。よりによって…」
あの(夢の)場所…
「滑り落ちませんようにぃ」
そう言いながらプリントを拾っていると、
「わぁ!」
一枚飛んでいってしまった。
「ま!待っt…!?」
足が…地面から離れた…。
(あぁ。死ぬんかな…そっか。あれは予言…だったのかもね)
ボスッ!!
「え!?」
誰かに両腕を掴まれて…
「はぁ!!」
ドサッ!!
引っ張り戻された。
「やったぁ!!つぎは救えた!!」
ん?どっかで聞き覚えのある声だ。
サッと振り向くと…
「あ、あなたは!……ダレダ?」
外国人の自分より少し年上の青年(?)がいた…が、髭と髪は伸びていて服装は布でできたボロボロなものでまるで…
「大昔のイスラエル人(?)…かよ。」
「はい!そうです!!」
「はい!?(わけわからん)」
誰かはわからないが…この声は…あの時の
確かにあの人だ。でもなんで?
「あの…」
「はい!」
「あ…ありがとうございました助かりました」
「はい!!良かったです!」
「あの…名前は?」
「僕…ですか?」
「はい…」
「僕を知らないんですか!?あ、そっかぁ…わすれてますよねwww」
「じれったい…早くいってください。」
「僕は!貴方の救世主!『イエスキリスト』です!o(`・ω´・+o) 」
救世主…
シーン……
(なんだあのイエスキリストか…)
シーン………
「…な、.....なるほどぉ.…」
(…っていやまていッ!!やばめの厨二病きた!?)
「…ってなわけ!冗談いうならもう少し面白いやつ…」
「いえ!本当です!あなたを救うために主に選ばれた救世主です!何世紀も前から!あなたに会いに来ました!」
「はぁ。それはどうも…(∵`)」
(だめ…重症だコイツ)
「信じてくれますよね?!希美さん!」
(信じられるか!!)
希美はその場でポカーンとすることしかできなかった。
これは…ほんの一瞬の小さな奇跡の物語の始まりだった。
「いや!勝手に始めないd…!」
続く!!
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