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後宮が開かれる
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後宮を開くというのは大仕事である。全国から美人が集まれば良いという単純なものではない。
堯舜は自分の育った見慣れた宮が、変わってゆくのを感じた。正確にいうと、同時に政は後宮なしには出来ない理由も痛感している。二つの車輪なのだ。紫琴宮で行われる文官統制された政治だけでは、この中華全土を国を収めるには不十分で、後宮におくられてくる名家の娘は捧げ物などではなく、人質でもあり、彼らの野望でもあり、それを乗りこなしてこその皇帝なのだと今更ながら分かったのだ。
皇帝にはそれほどの自由な選択肢がないことは、宋将軍に娘を連れてこられた時に知った。いらないなんて言えない。心に決めた女がいるなんて言える空気じゃない。
先の皇帝奕震は後ろ盾がない生母を毒殺された過去を持つ。後継者候補にもなく、銀将軍家に預けられ育ったという。天啓を受け皇帝に即位し、宦官による腐敗を一掃し、能力がある者を家柄関係なく取り立てた。暗愚と言われながらも反乱を起こすものは誰もおらず、名もなき宮女白雲泪を正妃に迎え、生涯ただひとり愛し続けたという。
子どもは堯舜1人だけであった。
母の後ろ盾にはやはり銀将軍家がたったようである。幼少期に堯舜を目を細めて実の孫のように可愛がってくれた、厳しくも立派な銀将軍は良く知っている。
「銀蓮というのは銀家の血筋なのだろうな」
そう考えればしっくり来た。そして蕣花は銀蓮の娘となれば、龔鴑王女というだけではなく、銀家の後ろ盾も得られるなら、宋将軍をはじめとする地方豪族たちを牽制し、のさばらせない絶妙な女性であるだろう。
「二重帝国などめちゃくちゃなことだ。龔鴑が首都を落とした、朕が天意を失ったと南方の豪族は手を組んで、間違いなく正義を持って誅にくるだろう」
堯舜は親世代の物語をこれ以上知りたいとも思わなかった。蕣花も同意見であった。
銀家には早馬をやる。老銀将軍の後ろ盾は必ず必要である。
そして姚国の皇帝が後宮を開くこととなった。聖詔が下され、以来役人たちは全国へ散らばり、自分の勢力を強めることのできる寵愛にたる美女を探しに戻り出している。
母たちのように、大恋愛とかゆう幻想にとらわれて、わけわからんかとになるのは嫌だと、ここ数日で嫌というほど思った。あの日あの時のあの女じゃなきゃ嫌だとか言って他に妃などいらぬ!とのたまわった自分は子どもだったと思った。もちろん探し出して謝罪と賠償はしたいが。
父上も母上も、たぶん龔鴑王も皆まとめて恋愛脳の大馬鹿者たちだ。いい年して気持ち悪い…その嫌悪感が堯舜に決心をさせたのだ。
「天下泰平に世をおさめることが天命である」
それがなくては、なにが皇帝か。
堯舜は自分の育った見慣れた宮が、変わってゆくのを感じた。正確にいうと、同時に政は後宮なしには出来ない理由も痛感している。二つの車輪なのだ。紫琴宮で行われる文官統制された政治だけでは、この中華全土を国を収めるには不十分で、後宮におくられてくる名家の娘は捧げ物などではなく、人質でもあり、彼らの野望でもあり、それを乗りこなしてこその皇帝なのだと今更ながら分かったのだ。
皇帝にはそれほどの自由な選択肢がないことは、宋将軍に娘を連れてこられた時に知った。いらないなんて言えない。心に決めた女がいるなんて言える空気じゃない。
先の皇帝奕震は後ろ盾がない生母を毒殺された過去を持つ。後継者候補にもなく、銀将軍家に預けられ育ったという。天啓を受け皇帝に即位し、宦官による腐敗を一掃し、能力がある者を家柄関係なく取り立てた。暗愚と言われながらも反乱を起こすものは誰もおらず、名もなき宮女白雲泪を正妃に迎え、生涯ただひとり愛し続けたという。
子どもは堯舜1人だけであった。
母の後ろ盾にはやはり銀将軍家がたったようである。幼少期に堯舜を目を細めて実の孫のように可愛がってくれた、厳しくも立派な銀将軍は良く知っている。
「銀蓮というのは銀家の血筋なのだろうな」
そう考えればしっくり来た。そして蕣花は銀蓮の娘となれば、龔鴑王女というだけではなく、銀家の後ろ盾も得られるなら、宋将軍をはじめとする地方豪族たちを牽制し、のさばらせない絶妙な女性であるだろう。
「二重帝国などめちゃくちゃなことだ。龔鴑が首都を落とした、朕が天意を失ったと南方の豪族は手を組んで、間違いなく正義を持って誅にくるだろう」
堯舜は親世代の物語をこれ以上知りたいとも思わなかった。蕣花も同意見であった。
銀家には早馬をやる。老銀将軍の後ろ盾は必ず必要である。
そして姚国の皇帝が後宮を開くこととなった。聖詔が下され、以来役人たちは全国へ散らばり、自分の勢力を強めることのできる寵愛にたる美女を探しに戻り出している。
母たちのように、大恋愛とかゆう幻想にとらわれて、わけわからんかとになるのは嫌だと、ここ数日で嫌というほど思った。あの日あの時のあの女じゃなきゃ嫌だとか言って他に妃などいらぬ!とのたまわった自分は子どもだったと思った。もちろん探し出して謝罪と賠償はしたいが。
父上も母上も、たぶん龔鴑王も皆まとめて恋愛脳の大馬鹿者たちだ。いい年して気持ち悪い…その嫌悪感が堯舜に決心をさせたのだ。
「天下泰平に世をおさめることが天命である」
それがなくては、なにが皇帝か。
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