1 / 6
後宮が開かれる
しおりを挟む
後宮を開くというのは大仕事である。全国から美人が集まれば良いという単純なものではない。
堯舜は自分の育った見慣れた宮が、変わってゆくのを感じた。正確にいうと、同時に政は後宮なしには出来ない理由も痛感している。二つの車輪なのだ。紫琴宮で行われる文官統制された政治だけでは、この中華全土を国を収めるには不十分で、後宮におくられてくる名家の娘は捧げ物などではなく、人質でもあり、彼らの野望でもあり、それを乗りこなしてこその皇帝なのだと今更ながら分かったのだ。
皇帝にはそれほどの自由な選択肢がないことは、宋将軍に娘を連れてこられた時に知った。いらないなんて言えない。心に決めた女がいるなんて言える空気じゃない。
先の皇帝奕震は後ろ盾がない生母を毒殺された過去を持つ。後継者候補にもなく、銀将軍家に預けられ育ったという。天啓を受け皇帝に即位し、宦官による腐敗を一掃し、能力がある者を家柄関係なく取り立てた。暗愚と言われながらも反乱を起こすものは誰もおらず、名もなき宮女白雲泪を正妃に迎え、生涯ただひとり愛し続けたという。
子どもは堯舜1人だけであった。
母の後ろ盾にはやはり銀将軍家がたったようである。幼少期に堯舜を目を細めて実の孫のように可愛がってくれた、厳しくも立派な銀将軍は良く知っている。
「銀蓮というのは銀家の血筋なのだろうな」
そう考えればしっくり来た。そして蕣花は銀蓮の娘となれば、龔鴑王女というだけではなく、銀家の後ろ盾も得られるなら、宋将軍をはじめとする地方豪族たちを牽制し、のさばらせない絶妙な女性であるだろう。
「二重帝国などめちゃくちゃなことだ。龔鴑が首都を落とした、朕が天意を失ったと南方の豪族は手を組んで、間違いなく正義を持って誅にくるだろう」
堯舜は親世代の物語をこれ以上知りたいとも思わなかった。蕣花も同意見であった。
銀家には早馬をやる。老銀将軍の後ろ盾は必ず必要である。
そして姚国の皇帝が後宮を開くこととなった。聖詔が下され、以来役人たちは全国へ散らばり、自分の勢力を強めることのできる寵愛にたる美女を探しに戻り出している。
母たちのように、大恋愛とかゆう幻想にとらわれて、わけわからんかとになるのは嫌だと、ここ数日で嫌というほど思った。あの日あの時のあの女じゃなきゃ嫌だとか言って他に妃などいらぬ!とのたまわった自分は子どもだったと思った。もちろん探し出して謝罪と賠償はしたいが。
父上も母上も、たぶん龔鴑王も皆まとめて恋愛脳の大馬鹿者たちだ。いい年して気持ち悪い…その嫌悪感が堯舜に決心をさせたのだ。
「天下泰平に世をおさめることが天命である」
それがなくては、なにが皇帝か。
堯舜は自分の育った見慣れた宮が、変わってゆくのを感じた。正確にいうと、同時に政は後宮なしには出来ない理由も痛感している。二つの車輪なのだ。紫琴宮で行われる文官統制された政治だけでは、この中華全土を国を収めるには不十分で、後宮におくられてくる名家の娘は捧げ物などではなく、人質でもあり、彼らの野望でもあり、それを乗りこなしてこその皇帝なのだと今更ながら分かったのだ。
皇帝にはそれほどの自由な選択肢がないことは、宋将軍に娘を連れてこられた時に知った。いらないなんて言えない。心に決めた女がいるなんて言える空気じゃない。
先の皇帝奕震は後ろ盾がない生母を毒殺された過去を持つ。後継者候補にもなく、銀将軍家に預けられ育ったという。天啓を受け皇帝に即位し、宦官による腐敗を一掃し、能力がある者を家柄関係なく取り立てた。暗愚と言われながらも反乱を起こすものは誰もおらず、名もなき宮女白雲泪を正妃に迎え、生涯ただひとり愛し続けたという。
子どもは堯舜1人だけであった。
母の後ろ盾にはやはり銀将軍家がたったようである。幼少期に堯舜を目を細めて実の孫のように可愛がってくれた、厳しくも立派な銀将軍は良く知っている。
「銀蓮というのは銀家の血筋なのだろうな」
そう考えればしっくり来た。そして蕣花は銀蓮の娘となれば、龔鴑王女というだけではなく、銀家の後ろ盾も得られるなら、宋将軍をはじめとする地方豪族たちを牽制し、のさばらせない絶妙な女性であるだろう。
「二重帝国などめちゃくちゃなことだ。龔鴑が首都を落とした、朕が天意を失ったと南方の豪族は手を組んで、間違いなく正義を持って誅にくるだろう」
堯舜は親世代の物語をこれ以上知りたいとも思わなかった。蕣花も同意見であった。
銀家には早馬をやる。老銀将軍の後ろ盾は必ず必要である。
そして姚国の皇帝が後宮を開くこととなった。聖詔が下され、以来役人たちは全国へ散らばり、自分の勢力を強めることのできる寵愛にたる美女を探しに戻り出している。
母たちのように、大恋愛とかゆう幻想にとらわれて、わけわからんかとになるのは嫌だと、ここ数日で嫌というほど思った。あの日あの時のあの女じゃなきゃ嫌だとか言って他に妃などいらぬ!とのたまわった自分は子どもだったと思った。もちろん探し出して謝罪と賠償はしたいが。
父上も母上も、たぶん龔鴑王も皆まとめて恋愛脳の大馬鹿者たちだ。いい年して気持ち悪い…その嫌悪感が堯舜に決心をさせたのだ。
「天下泰平に世をおさめることが天命である」
それがなくては、なにが皇帝か。
0
あなたにおすすめの小説
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる