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第一章 枝垂れ桜の庭で
巽橋の花筏
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紅丸からも吹雪から音沙汰ひとつ無いまま、数日が過ぎて、結局塔子の春休みは、再び出した高熱の風邪で寝込んだまま終わってしまった。あまりに早く桜が咲いた代償なのか、コートが必要なくらい寒い新学期が始まった。
昔は祇園町のど真ん中に弥栄中学校という花街の仕込みさん御用達の中学校があったらしい。今はもう閉校したため、塔子は少し離れた私立の中学に通っている。中高一貫制の女子校なので内部進学率はほぼ100%だし、高校を卒業してもみんな大学に進学する。
将来、芸の道以外も目指せるようにと中学受験を勧めてくれたのは母で、いずれ他の子よりも秀でるように芸事のお稽古をお願いしてくれたのも母だ。
4月の初つ春のスケジュールは超絶忙しい。塔子は母と顔を合わせず今日に至った。母はお布団に倒れて熱を出している塔子を見て事情を推察したのか、券を無駄にしたことも怒ったりはしなかった。
一連の出来事はまるで通り雨のように過ぎ去り、数日経た今となっては夢の中の出来事のように現実味がなかった。
「またおんなじクラスでホンマ良かったわ」
「高校上がっても3人一緒がいいなあ」
新しいクラスに入ると瑞稀と陽菜が出迎えてくれる。
瑞稀はスラリと伸びた長い足と地毛だけど明るめなショートヘアがまるで男役で後輩にファンが出来ているくらいカッコイイ女の子だ。今年の新入生たちからも黄色い声援を受けてきたらしい。演劇部の子達にはスカウトされてきたけど、人前に出ることが嫌いだ。
陽菜はほんのり天然のウェーブがかった髪、幅広の二重にすごく長いまつ毛、形のいい鼻、小さな唇がお人形みたいな可愛い子だ。習い事がある日は運転手付きの車が送迎しにくる本物のお嬢様である。
そんな校内でも目立つ容姿の2人といると、小柄な塔子は自分が特に特徴が無く目立たない生徒だと思えた150cmには届かなかったし、髪は日本髪を結うために前髪まで長く伸ばしていて毛量を梳いて減らしたりしないので野暮ったく重い髪。奥二重の黒目がちな目は小さいなあと思う。薄い体には胸の膨らみも筋肉も体力もない。守ってあげたいような可憐さと表現されることもあったが、塔子はそれを貧相だとコンプレックスに思っていた。
「結局遊ぼうって言ってたのに連絡くれんかったやん」
「春休みに何かあったんじゃ無いかって瑞稀と心配していたの」
連絡のひとつもしていなかったことを私は素直に詫びた。
「そろそろ塔子との家電以外の連絡方法欲しいところだよね」
「そうだね、ママにねだってみる」
「そしたらみんなでグループでやりとりできますね!頑張ってゲットしてくださいな」
そして2人の春休みのお出かけや旅行の話を聞いていると、中学生らしい日常を取り戻した気持ちになった。
散り急ぐ桜を眺めて歩く、学校からの帰り道。塔子は久しぶりの友人との再会に足取りは軽い。投げっぱなしの将来のことは忘れて、花筏の流れる白川沿いを歩く。風景を眺めるのに心奪われていたから、声をかけてくるまで紅丸がいることにも気づかなかった。
「塔子ちゃん、こないだはホンマごめんなさい」
祇園白川の巽橋で突然頭を下げてきた男性がいる。誰かと思ったら紅丸だった。今日は五つ紋の羽織袴ではなくて、随分ラフな装いの灰色の着物で着流しだったから咄嗟に誰か分からなかった。紅丸は私に会うために帰り道を待ち伏せしていたらしい。
巽橋は観光客も多い。中学生に頭を下げる着流しの男性なんて異様な光景過ぎて、周りは好奇の目線を2人に向けてきた。
「え、ちょっと…!人も多いのにやめてください」
「塔子ちゃんは、…大丈夫か?」
「え?…大丈夫かどうかといわれたら、今の状況めっちゃ嫌です。大丈夫ではないです!とりあえず謝らないでください!」
狐と違い、紅丸の姿は普通に誰もが視認可能な状態なのでいかつい茶髪のにいちゃんに頭を下げられているセーラー服の中学生という絵である。塔子は慌てて、紅丸の頭を上げさせる。
「いや、その天狗は男しかおらんくて!せやから女の事はよお知らんくて…15になったら子作りぐらいできるとばかり思って…」
「ちょ、ちょ、その話題もダメ!こっちきてこっち」
塔子は、圧倒的不審者の紅丸を人のいない方へと引っ張っていくと、声を抑えながらも不満はハッキリ口にした。
「何ですか。こんなに沢山人がいるのに!口を開けば子作り子作りって!頭おかしすぎます」
紅丸はシュンとしょげかえっていた。
「ホンマすまん…。この間も花嫁に浮かれとって。毎年ポンポンと10年で10人は大変やっちゅーことも、体の小さい子やと負担が高くて初産ですぐ死ぬとか知らんくて無理を言って怖がらせたやろ」
(そこじゃないそこ…)
しかし、論点はズレているものの真っ直ぐな眼差しで謝ってくる紅丸は本当に反省しているように見えた。
桜は既に葉が萌えており、舞い落ちる花弁は川を染めていた。
(許すのもなんだかなあ。そもそも今後もわからないしなあ…)
「せやし、これからは塔子ちゃんが育つまで俺が守るし!なに、天狗は寿命が長いから数年や数十年ぐらい待てる。身体が大きくなるまで待つし!」
そういう話じゃないんだけど、と苦笑してしまいながらも、紅丸に好意が芽生えているのは確かだった。
「私、中学生なので花嫁云々は今はとりあえず無しということでお願いできますか?」
そう答えたものの内心は少しドキドキしていた。好感度の高い笑顔や素直で良く変わる表情が紅丸を魅力的していた。
(懐いてくる大型犬みたいで可愛いな。本当に数年とか数十年待たれたら私も大人になるだろうし、狐よりかは紅丸さんがずっといいな)
塔子は頭を下げて、くるっと紅丸に背中を向けて走る。祇園白川の巽橋に佇んで私を待っていた紅丸の気持ちを考えると少し胸が痛むけれど、なんだか恥ずかしくて駆け出したい気持ちが勝った。
昔は祇園町のど真ん中に弥栄中学校という花街の仕込みさん御用達の中学校があったらしい。今はもう閉校したため、塔子は少し離れた私立の中学に通っている。中高一貫制の女子校なので内部進学率はほぼ100%だし、高校を卒業してもみんな大学に進学する。
将来、芸の道以外も目指せるようにと中学受験を勧めてくれたのは母で、いずれ他の子よりも秀でるように芸事のお稽古をお願いしてくれたのも母だ。
4月の初つ春のスケジュールは超絶忙しい。塔子は母と顔を合わせず今日に至った。母はお布団に倒れて熱を出している塔子を見て事情を推察したのか、券を無駄にしたことも怒ったりはしなかった。
一連の出来事はまるで通り雨のように過ぎ去り、数日経た今となっては夢の中の出来事のように現実味がなかった。
「またおんなじクラスでホンマ良かったわ」
「高校上がっても3人一緒がいいなあ」
新しいクラスに入ると瑞稀と陽菜が出迎えてくれる。
瑞稀はスラリと伸びた長い足と地毛だけど明るめなショートヘアがまるで男役で後輩にファンが出来ているくらいカッコイイ女の子だ。今年の新入生たちからも黄色い声援を受けてきたらしい。演劇部の子達にはスカウトされてきたけど、人前に出ることが嫌いだ。
陽菜はほんのり天然のウェーブがかった髪、幅広の二重にすごく長いまつ毛、形のいい鼻、小さな唇がお人形みたいな可愛い子だ。習い事がある日は運転手付きの車が送迎しにくる本物のお嬢様である。
そんな校内でも目立つ容姿の2人といると、小柄な塔子は自分が特に特徴が無く目立たない生徒だと思えた150cmには届かなかったし、髪は日本髪を結うために前髪まで長く伸ばしていて毛量を梳いて減らしたりしないので野暮ったく重い髪。奥二重の黒目がちな目は小さいなあと思う。薄い体には胸の膨らみも筋肉も体力もない。守ってあげたいような可憐さと表現されることもあったが、塔子はそれを貧相だとコンプレックスに思っていた。
「結局遊ぼうって言ってたのに連絡くれんかったやん」
「春休みに何かあったんじゃ無いかって瑞稀と心配していたの」
連絡のひとつもしていなかったことを私は素直に詫びた。
「そろそろ塔子との家電以外の連絡方法欲しいところだよね」
「そうだね、ママにねだってみる」
「そしたらみんなでグループでやりとりできますね!頑張ってゲットしてくださいな」
そして2人の春休みのお出かけや旅行の話を聞いていると、中学生らしい日常を取り戻した気持ちになった。
散り急ぐ桜を眺めて歩く、学校からの帰り道。塔子は久しぶりの友人との再会に足取りは軽い。投げっぱなしの将来のことは忘れて、花筏の流れる白川沿いを歩く。風景を眺めるのに心奪われていたから、声をかけてくるまで紅丸がいることにも気づかなかった。
「塔子ちゃん、こないだはホンマごめんなさい」
祇園白川の巽橋で突然頭を下げてきた男性がいる。誰かと思ったら紅丸だった。今日は五つ紋の羽織袴ではなくて、随分ラフな装いの灰色の着物で着流しだったから咄嗟に誰か分からなかった。紅丸は私に会うために帰り道を待ち伏せしていたらしい。
巽橋は観光客も多い。中学生に頭を下げる着流しの男性なんて異様な光景過ぎて、周りは好奇の目線を2人に向けてきた。
「え、ちょっと…!人も多いのにやめてください」
「塔子ちゃんは、…大丈夫か?」
「え?…大丈夫かどうかといわれたら、今の状況めっちゃ嫌です。大丈夫ではないです!とりあえず謝らないでください!」
狐と違い、紅丸の姿は普通に誰もが視認可能な状態なのでいかつい茶髪のにいちゃんに頭を下げられているセーラー服の中学生という絵である。塔子は慌てて、紅丸の頭を上げさせる。
「いや、その天狗は男しかおらんくて!せやから女の事はよお知らんくて…15になったら子作りぐらいできるとばかり思って…」
「ちょ、ちょ、その話題もダメ!こっちきてこっち」
塔子は、圧倒的不審者の紅丸を人のいない方へと引っ張っていくと、声を抑えながらも不満はハッキリ口にした。
「何ですか。こんなに沢山人がいるのに!口を開けば子作り子作りって!頭おかしすぎます」
紅丸はシュンとしょげかえっていた。
「ホンマすまん…。この間も花嫁に浮かれとって。毎年ポンポンと10年で10人は大変やっちゅーことも、体の小さい子やと負担が高くて初産ですぐ死ぬとか知らんくて無理を言って怖がらせたやろ」
(そこじゃないそこ…)
しかし、論点はズレているものの真っ直ぐな眼差しで謝ってくる紅丸は本当に反省しているように見えた。
桜は既に葉が萌えており、舞い落ちる花弁は川を染めていた。
(許すのもなんだかなあ。そもそも今後もわからないしなあ…)
「せやし、これからは塔子ちゃんが育つまで俺が守るし!なに、天狗は寿命が長いから数年や数十年ぐらい待てる。身体が大きくなるまで待つし!」
そういう話じゃないんだけど、と苦笑してしまいながらも、紅丸に好意が芽生えているのは確かだった。
「私、中学生なので花嫁云々は今はとりあえず無しということでお願いできますか?」
そう答えたものの内心は少しドキドキしていた。好感度の高い笑顔や素直で良く変わる表情が紅丸を魅力的していた。
(懐いてくる大型犬みたいで可愛いな。本当に数年とか数十年待たれたら私も大人になるだろうし、狐よりかは紅丸さんがずっといいな)
塔子は頭を下げて、くるっと紅丸に背中を向けて走る。祇園白川の巽橋に佇んで私を待っていた紅丸の気持ちを考えると少し胸が痛むけれど、なんだか恥ずかしくて駆け出したい気持ちが勝った。
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