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皇帝の本分
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堯舜は紫微宮にいた。母上に振り回されるのも、もう沢山であった。皇帝には皇帝の本分があり、厩戸係のふりばかりもしていられない。
今日は特に重要な南方の宋家からの謁見も予定されている。南方は面している他国も多く、軍事上も重要な拠点都市があり、産出される鉱物も豊かで蔑ろにはできない相手である。
「皇上駕道!」
皇帝陛下のおなりを告げる宦官の甲高い声が響くと、堯舜は姿を表す。
「万歳万歳万々歳」
広間全ての人間は合唱し、平伏し、ただ皇帝陛下の言葉を待つ静寂が広がる。
「頭をあげよ」
「南安より宋家の榮星、皇帝陛下に拝謁いたします。」
「立つが良い、宋将軍」
言葉を受けて宋将軍は立ち上がる。
「この度は皇上吉祥、陛下にお会いできまして拙は至極光栄に…」
「挨拶は良い、長い旅路ごくろうである」
「この度は送り物をまずご覧になってくださいませ」
宋将軍の合図で箱が運ばれて開けられる。絹織物が捧げられ、頭より高く掲げて召使が跪く。
「これは名産のものをありがとう」
「是非こちらは皇太后陛下に」
「母もきっと喜ぶであろう。今日は体調がすぐれないゆえ顔を見せぬが、宋将軍に会えないことを残念がっていた」
「それは恐悦至極にございます」
宋将軍の目配せで、絹織物を掲げた召使は道を開ける。
「皇帝陛下にはこちらをお贈りしたく存じます」
嫌な予感がした。
「朕に気遣いはいらぬ、南安の宋家は家族のようなもの」
「それならば是非お受け取りいただきたい」
翡翠の装飾に彩られた若き令嬢が、ふんわりと袖をなびかせながら向かってくるのが見えた。
「陛下が翡翠の似合う女が好みとのお話を伺い、我が南安産の1番の翡翠をまとわせてました」
自信があるのだろう。宋将軍は目を細めて満足げに娘を見る。
「我が娘、宋娟でございます。どうぞ陛下のおそばに置いていただけますと幸いです」
宋娟は膝を降り、こうべを垂れる。遠くてよく見えない。
「宋家の榮星、皇帝陛下に拝謁いたします。」
「頭を上げよ」
皇帝陛下に実のところ自由などないのだ。内心深いため息を堯舜はついているが、表情は眉ひとつも変えないまま「頭を上げよ」と言うしかない。
「この度は皇上吉祥、陛下にお会いできまして至極光栄に…」
知ってた。こう続くから「立ちなさい」と言うしかない。それから…
満面の笑みの宋将軍の期待に満ちた顔、この顔をたてなければならない。こんな大勢の前で、娘を拒絶したら寝返りも戦争もあるだろう。つまり…
「長旅で疲れたであろう。紫微宮の西で休むが良い。宋将軍も本日は挨拶までに済ませ、ゆっくり親子の時間を楽しむがよい。宴で我が母もお会いできるだろう」
百点満点万歳万歳万々歳。
堯舜の気持ちなど関係なく、面子をたて、全土の安定を図る采配をするのが皇帝の役目である。
好きな女しかいらないからねと母にごねる事はできても、断りきれない相手から送り込まれてくるのが後宮なのだ。若き皇帝を掌握しようという野心。
-娘も俺に恋なんかしない、親のいいなりだ。誰も信用なんて出来ない。
ついに全土に翡翠のかんざしを持つ女を探すおふれのせいで、女を直接送り込む家が現れた。堯舜に止められることなど何もなかった。
退場する際に聞こえる皇帝陛下を讃える万歳の合唱が、より一層空虚で虚しいものに感じた。
今日は特に重要な南方の宋家からの謁見も予定されている。南方は面している他国も多く、軍事上も重要な拠点都市があり、産出される鉱物も豊かで蔑ろにはできない相手である。
「皇上駕道!」
皇帝陛下のおなりを告げる宦官の甲高い声が響くと、堯舜は姿を表す。
「万歳万歳万々歳」
広間全ての人間は合唱し、平伏し、ただ皇帝陛下の言葉を待つ静寂が広がる。
「頭をあげよ」
「南安より宋家の榮星、皇帝陛下に拝謁いたします。」
「立つが良い、宋将軍」
言葉を受けて宋将軍は立ち上がる。
「この度は皇上吉祥、陛下にお会いできまして拙は至極光栄に…」
「挨拶は良い、長い旅路ごくろうである」
「この度は送り物をまずご覧になってくださいませ」
宋将軍の合図で箱が運ばれて開けられる。絹織物が捧げられ、頭より高く掲げて召使が跪く。
「これは名産のものをありがとう」
「是非こちらは皇太后陛下に」
「母もきっと喜ぶであろう。今日は体調がすぐれないゆえ顔を見せぬが、宋将軍に会えないことを残念がっていた」
「それは恐悦至極にございます」
宋将軍の目配せで、絹織物を掲げた召使は道を開ける。
「皇帝陛下にはこちらをお贈りしたく存じます」
嫌な予感がした。
「朕に気遣いはいらぬ、南安の宋家は家族のようなもの」
「それならば是非お受け取りいただきたい」
翡翠の装飾に彩られた若き令嬢が、ふんわりと袖をなびかせながら向かってくるのが見えた。
「陛下が翡翠の似合う女が好みとのお話を伺い、我が南安産の1番の翡翠をまとわせてました」
自信があるのだろう。宋将軍は目を細めて満足げに娘を見る。
「我が娘、宋娟でございます。どうぞ陛下のおそばに置いていただけますと幸いです」
宋娟は膝を降り、こうべを垂れる。遠くてよく見えない。
「宋家の榮星、皇帝陛下に拝謁いたします。」
「頭を上げよ」
皇帝陛下に実のところ自由などないのだ。内心深いため息を堯舜はついているが、表情は眉ひとつも変えないまま「頭を上げよ」と言うしかない。
「この度は皇上吉祥、陛下にお会いできまして至極光栄に…」
知ってた。こう続くから「立ちなさい」と言うしかない。それから…
満面の笑みの宋将軍の期待に満ちた顔、この顔をたてなければならない。こんな大勢の前で、娘を拒絶したら寝返りも戦争もあるだろう。つまり…
「長旅で疲れたであろう。紫微宮の西で休むが良い。宋将軍も本日は挨拶までに済ませ、ゆっくり親子の時間を楽しむがよい。宴で我が母もお会いできるだろう」
百点満点万歳万歳万々歳。
堯舜の気持ちなど関係なく、面子をたて、全土の安定を図る采配をするのが皇帝の役目である。
好きな女しかいらないからねと母にごねる事はできても、断りきれない相手から送り込まれてくるのが後宮なのだ。若き皇帝を掌握しようという野心。
-娘も俺に恋なんかしない、親のいいなりだ。誰も信用なんて出来ない。
ついに全土に翡翠のかんざしを持つ女を探すおふれのせいで、女を直接送り込む家が現れた。堯舜に止められることなど何もなかった。
退場する際に聞こえる皇帝陛下を讃える万歳の合唱が、より一層空虚で虚しいものに感じた。
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