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第1章 マヤツマヨイ市の冒険
第005話 どうせ私なんて……(3人称テレジア視点)
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テレジアは逃走する。
「脱走したはいいものの、どこへ行けばいいんだか」
仲間はいない。
ついさっきできた旅の同行者はギルドの中。
「クソオークの野郎はともかく、てるてる坊主様と別れるのは惜しいな。めちゃ強いし、あの方なら本当にドラゴン族を討伐できるかもしれないのに……」
不意に寂しさが募る。
もはや天涯孤独の身。
道行く人々は恐れおののいたり、
「犯罪者だ! 死ね!」
と罵ったり。
どうやら味方は一人もいないようだ。
OKチョーケーから盗んだ魔石を握りしめ、
「どいつもこいつも吹っ飛ばしてやろっかな。チクショー。私だって落ちぶれたくて落ちぶれたんじゃないっつの。……にしても、魔石ってマジですごいんだな」
魔石。
それは魔力を増幅させるアイテム。
お世辞にも魔法の達人とは言えないテレジアがギルドの壁を破壊できたのも、この石があってこそである。
極めて希少であり、ゆえに庶民では決して手の届かない高級だ。
これを偶然にもOKチョーケーから盗むことができたのは、
「不幸中の幸いだったな」
盗みを働いたことへの罪悪感など微塵もなかった。
「どうせ私なんて誰からも信用されないんだ」
孤独が彼女を卑屈にしていた。
「いやーーーー! 助けてーーー!」
突然、悲鳴が聞こえてきた。
いつの間にかテレジアは大通りまで来ていた。
金持ちがうようよ住んでいそうな場所だな、と泥棒エルフの血が騒ぐ。
だが、それどころではない。
「熱いよぉ! 誰か助けて! パパァ!」
豪邸が燃えていた。
2階の窓から子供が叫ぶ。
逃げ遅れたようだ。
「誰か魔法で消火できるやつはいないのか!?」
「ダメだ、これだけ火が燃え盛ってたらどうしようもねぇ」
「くそっ。あんな小さな子が苦しんでるのに」
「奇跡は起こらねぇのか……!?」
火事現場に詰めかけた人々が騒ぐ。
「ま、私には関係ないか」
テレジアは素通りする。
誰が不幸になろうとどうでもいい。
というより、世界で一番不幸なのは自分なのだ。
ガキが焼死しても、それほど可哀想ではない。
「死にたくないよぉ~~~!!!」
「……!!」
テレジアは踵を返す。
全力疾走で豪邸に突入。
一気に2階まで駆け上がる。
「死なせねぇよ!」
テレジアは魔石をフル活用し、火を吹き飛ばし、道を開いた。
子供を抱えて、階段を下りる。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「ふん」
「優しいし強いね」
「そんなんじゃねーから」
泣いて喜ぶ子供。
素直になれないテレジア。
――おめーに昔の私を重ねちゃっただけだ。
喝采で迎えられるテレジアだが、しかし……
「危ない!」
柱がテレジアめがけて倒れてきた。
「え……?」
テレジアはそれにまだ気づいていない。
あわや子供もろとも潰されそうになった、その時、
「見直しましたよ、テレジアさん」
柱を素手で吹き飛ばしたのはOKチョーケー。
「俺はおめぇを信じてたぜ」
更にてるてる坊主が現れて、
「あとは俺に任せな。雨を降らして消火してやんよ」
「脱走したはいいものの、どこへ行けばいいんだか」
仲間はいない。
ついさっきできた旅の同行者はギルドの中。
「クソオークの野郎はともかく、てるてる坊主様と別れるのは惜しいな。めちゃ強いし、あの方なら本当にドラゴン族を討伐できるかもしれないのに……」
不意に寂しさが募る。
もはや天涯孤独の身。
道行く人々は恐れおののいたり、
「犯罪者だ! 死ね!」
と罵ったり。
どうやら味方は一人もいないようだ。
OKチョーケーから盗んだ魔石を握りしめ、
「どいつもこいつも吹っ飛ばしてやろっかな。チクショー。私だって落ちぶれたくて落ちぶれたんじゃないっつの。……にしても、魔石ってマジですごいんだな」
魔石。
それは魔力を増幅させるアイテム。
お世辞にも魔法の達人とは言えないテレジアがギルドの壁を破壊できたのも、この石があってこそである。
極めて希少であり、ゆえに庶民では決して手の届かない高級だ。
これを偶然にもOKチョーケーから盗むことができたのは、
「不幸中の幸いだったな」
盗みを働いたことへの罪悪感など微塵もなかった。
「どうせ私なんて誰からも信用されないんだ」
孤独が彼女を卑屈にしていた。
「いやーーーー! 助けてーーー!」
突然、悲鳴が聞こえてきた。
いつの間にかテレジアは大通りまで来ていた。
金持ちがうようよ住んでいそうな場所だな、と泥棒エルフの血が騒ぐ。
だが、それどころではない。
「熱いよぉ! 誰か助けて! パパァ!」
豪邸が燃えていた。
2階の窓から子供が叫ぶ。
逃げ遅れたようだ。
「誰か魔法で消火できるやつはいないのか!?」
「ダメだ、これだけ火が燃え盛ってたらどうしようもねぇ」
「くそっ。あんな小さな子が苦しんでるのに」
「奇跡は起こらねぇのか……!?」
火事現場に詰めかけた人々が騒ぐ。
「ま、私には関係ないか」
テレジアは素通りする。
誰が不幸になろうとどうでもいい。
というより、世界で一番不幸なのは自分なのだ。
ガキが焼死しても、それほど可哀想ではない。
「死にたくないよぉ~~~!!!」
「……!!」
テレジアは踵を返す。
全力疾走で豪邸に突入。
一気に2階まで駆け上がる。
「死なせねぇよ!」
テレジアは魔石をフル活用し、火を吹き飛ばし、道を開いた。
子供を抱えて、階段を下りる。
「お姉ちゃん、ありがとう」
「ふん」
「優しいし強いね」
「そんなんじゃねーから」
泣いて喜ぶ子供。
素直になれないテレジア。
――おめーに昔の私を重ねちゃっただけだ。
喝采で迎えられるテレジアだが、しかし……
「危ない!」
柱がテレジアめがけて倒れてきた。
「え……?」
テレジアはそれにまだ気づいていない。
あわや子供もろとも潰されそうになった、その時、
「見直しましたよ、テレジアさん」
柱を素手で吹き飛ばしたのはOKチョーケー。
「俺はおめぇを信じてたぜ」
更にてるてる坊主が現れて、
「あとは俺に任せな。雨を降らして消火してやんよ」
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