【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】

阿佐夜つ希

文字の大きさ
75 / 102
第四章

75 賢者たちの悩みと作戦会議

しおりを挟む
 ソファーで頭を抱え込んだ姿勢のクレイグが、苦しげに思いの丈を吐露する。

「ヒナリを抱いたベッドで寝ようとすると、どうしても儀式の際の光景を思い出してしまって眠れなくなるのです。いっそ寝込みを襲ってしまおうかと不埒な妄想をするほどに。ヒナリならばきっと、戸惑いつつもあの優しさで、私を受け入れてくれるとは思うのですが……」
「うわあ。君がそこまで思い詰めるなんて相当だね。実行に移していなくて何よりだよ」

 いつも真面目なクレイグのふしだらな願望に、ベルトランは目を丸くした。
 直後、クレイグの隣に座るアルトゥールがあっけらかんと言い放った。

「私はどうしても落ち着けなかったら、抜いてすっきりしてから寝るぞ?」
「貴方のその能天気さは羨ましい限りですよ」
「まあ僕もわりとそうかな。ヒナリとの儀式を思い出してムラムラしちゃうのは仕方ないし」

 ベルトランがアルトゥールに同意した途端、クレイグが愕然とした表情に変わった。

「まさか貴方たち、ヒナリとの儀式を思い出しながら自慰をしているんじゃないでしょうね!?」
「そうだぞ?」
「まあ、当然そうなるよね」
「なんと不敬な……!」

 クレイグの怒声に、ベルトランは肩をすくめてみせた。

「だって仕方ないじゃない。僕ら賢者は普段使っているベッドで聖女様と儀式をしなきゃならない仕来たりなんだから。思い出すなという方が無理があるよ。ヒナリの部屋みたいに儀式用のベッドがあったらいいのにさ」

 そのぼやきを聞いたアルトゥールが、顎に手を添えて考え込む。

「ベッドの追加か……。先代までがしてこなかったことを新たに希望する場合、どこに掛け合えばよいのだろうな」
「大神官様かな?」

 相談し始めたふたりに、ダリオが口を挟んできた。

「でも僕らの動向は常に世間から関心を持たれているし、新しい家具を聖女邸に運び込んだだけでも報道はされてしまうだろうから、本当にそんな要望を出したら『なぜ賢者はベッドをもう一台欲しがるのだろう』という点から、儀式について邪推されかねないと思う」
「あー。それは確かに」

 ベルトランが何度も頷く。
 同じく頷いたアルトゥールが、ふと不思議そうな顔付きに変わった。

「ダリオは眠れるのか?」
「僕はさっさと寝る。早く寝て早く起きた方が、次の日より早くヒナリに会えるから。充分な睡眠を取って健康を保つのだって、賢者の務めだろう?」 
「確かにそうだな。賢者の鑑だな」

 と尊敬の眼差しでダリオを見るも、すぐに口元をゆるめた曖昧な顔付きに変わる。

「だが……ダリオは全くムラムラしないのか?」
「そりゃするさ。するけど」

 淡々と答えたダリオが、ふと口の端を吊り上げる。

「逆に君らさ。こういう言い方もなんだけど、溜めに溜めたものをヒナリにぶつけた方が楽しくない?」
「あー。それは一理あるね」

 ベルトランがにやりとする。
 一方で、アルトゥールが腕組みして唸り出した。

「うーむ……。だが私の場合、溜めに溜めようものなら、また長時間続けてしまってひんしゅくを買い兼ねないな」
「貴方はより強力な性欲減退薬が必要なようですね。次回の儀式の際、処方して差し上げましょう」
「いや、それは……。しばらく考えさせてくれ」

 クレイグの申し出に、アルトゥールは気まずげに答えたのだった。


    ◇◇◆◇◇


 図書館から戻ったヒナリがミュリエルとレイチェルを伴って居間へと行くと、四人の賢者が何やら話し込んでいた。

「みんな、何の話をしてるの?」

 一人掛けの方のソファーに腰を下ろして四人の賢者を見る。すると、にやりとされたり顔を逸らされたりと、ばらばらな反応が返ってきた。
 不思議な態度をヒナリが不思議がっていると、ベルトランがさらりと答えた。

「夜、君との儀式を思い出しちゃって眠れないって話」
「あ……」

 美男子揃いの賢者たちがベッドの中で悶々とする様子を想像してしまい、ヒナリは一瞬にして顔が熱くなった。

「ごめん、内緒話を聞き出しちゃって」

 男性同士ならではの会話に割り入ってしまったことに気付き、慌てて席を立とうとする。その途端、

「待ってくれヒナリ、少々尋ねたいことがあるのだが」

 アルトゥールに呼び止められた。再び腰を下ろして小首を傾げてみせる。

「尋ねたいことって?」
「自室のベッドでの儀式は、夜な夜なその光景を思い出してしまってなかなか寝付けず少々辛さを感じているのだが、時々はヒナリの部屋で儀式をおこなわせていただいても構わないだろうか」
「えっ!」

(私の部屋でするの……!?)

 聖女の個室での儀式と聞いて、真っ先に思い出したのが先代聖女の記録だった。先代聖女は賢者ふたりと3Pするときは聖女の部屋でおこなっていた。記録の中の激しい性描写を思い出し、たちまち顔が燃え上がる。

「私の部屋では、その、あの、ちょっと……」

 きっぱりと断り切れずに言葉を濁す。自分が恥ずかしいという理由だけで、賢者の悩みを無視して自分の希望だけを押し通すのは申し訳ない。
 とはいえその提案を了承するほどには腹を括れずにいると、ベルトランが申し訳なさげな笑みを浮かべた。

「ごめんねヒナリ、アルトゥールが無茶なお願いをしちゃって」
「でも、私の方こそみんなのお部屋で儀式をさせてもらってるからこそ、みんなにそういう悩みを抱かせてしまっているんだよね。本当にごめん」
「優しいね、ヒナリは。気にしないでいいよ。これは男のさがだから。きっと君の部屋で儀式をさせてもらったとしても、ふとした折に思い出してしまうのは変わりないと思うよ」
「え、そんなに思い出す?」
「まあ、特に儀式をした直後は、君を遠巻きに見るだけで体が疼くなんてことがあったりなかったり?」
「そうなんだ……」

 賢者たちにむらむらしながら見つめられていると思うと、どうにも落ち着かない。
 恥ずかしくなったヒナリがうつむいた直後、アルトゥールが身を乗り出して、ヒナリの顔を覗き込もうとしてきた。

「時に、ヒナリは寝る前に思い出さないのか?」
「!?」

 朗らかな口調での問い掛けは、前世で言うところのセクハラ発言だった。それは暗に、ヒナリもまた眠る際に儀式の光景を思い出して性的な衝動を覚えないのかと尋ねているも同然だった。
 儀式の直後は疲れ切ってすぐに眠れているような気がするが、いつぞや自室でアルトゥールに手淫されたときのことを思い出してしまった。あのときは無理矢理ベッドに入れば眠れるだろうと思いきや、全く寝付けずすぐに起き出して、ミュリエルたちに茶を淹れてもらってそれを飲んでベッドに入り直して、と眠るまでに苦労した憶えがある。

 ヒナリが固まっていると、ベルトランが声を荒らげた。

「ちょっとアルトゥール! さすがにその質問は失礼すぎるよ」

 ヒナリが何と答えるべきか分からず当惑していると、少し離れた場所で待機していたミュリエルが割って入ってきた。

「賢者様がた、差し出口を挟むことをお許しくださいませ。ヒナリ様には鎮静作用のあるハーブティーを幾種類かご用意し、お休みになれないご様子の際にお出ししております。それらをお飲みになられたヒナリ様は、すぐに深い眠りに就いておられます」
「ミュリエルたちが出してくれるお茶ってどれも美味しくて大好きなんだけど、そういう作用があったんだ。全然気付かなかったよ」
「薬草にお詳しいクレイグ様お墨付きのお茶ですから効果覿面です。アルトゥール様が想像なさるようなことは、一切なさっておりません」
「うっ……」

 とどめを刺されたアルトゥールが頭を抱え込み、しおしおと項垂れる。

「すまないヒナリ。興味本位でデリカシーのない発言をしてしまった。最低だ、私は……」
「ううん、大丈夫だよアルトゥール。気にしないで」

 ヒナリのなだめる言葉にアルトゥールがすぐさま頭を起こす。ヒナリはその顔をまっすぐに見て微笑んでみせた。
 表情を変えず、今度はふたりのメイドに振り向くと、さらに満面の笑みを浮かべてみせた。

「ミュリエル、レイチェル。ありがとう、いつもたくさん気遣ってくれて。ふたりが快適なベッドを用意してくれて、ハーブティーまで用意してくれるからこそ、私はいつもぐっすり眠れるんだね」
「いえ、とんでもないお言葉でございます」

 口元を微笑ませたミュリエルとレイチェルが、しずしずとお辞儀する。
 その様子にヒナリはにこにことしながら今度はクレイグに笑顔を向けた。

「クレイグもありがとう。私のためにハーブティーを選んでくれて」
「いえ、大したことではありませんよ。貴女のお役に立てて何よりです」


    ◇◇◆◇◇


 ヒナリが去ったあと、また賢者たちだけの会話を再開した。
 アルトゥールが深刻な顔をして呟く。

「ハーブティーか。私もそれに頼った方がよいのだろうか」
「私たちの性衝動はハーブティーで抑えられる程度のものでもないでしょう。だからヒナリに飲ませている茶を、私自身も飲まないのですよ」
「そうか、なるほど」

 クレイグの説明に納得させられて、深く頷く。
 アルトゥールはしばらく黙り込んだあと、他の三人の顔を窺いつつ、別の話を切り出した。

「ところで。実は……してみたいことがあるのだが」
「してみたいことって?」

 唐突な話題に、ベルトランが首を傾げる。

「数少ない貴重な儀式をより良いものにするために、我々に必要なことだ」
「へえ。なになに?」
「それはな、――」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...