世界を護る叛逆者

絢崎大輔

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第一章 始動編

襲撃2

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 楓も現着していた。
 直ぐに結晶のある場所に向かうと、ここでもフードを目深に被った人物が結晶を破壊していた。
 近付くと相手も気が付いた。
 その人物は楓の方に向かって歩いて来た。

「おや、ここにはあなたが来たんですか。まぁいいでしょう。門が出来るまでお相手致しましょう」

 フードの人物の声色は少し嬉しそうだった。
 楓はその声に疑問を抱いたが、敵は既に戦闘体制を取っていた。
 楓は疑問を後回しにし、これからの戦いに集中することにした。

「では、少し本気でやりますので覚悟してください。来なさいウリエル」

 楓も最上位星霊を召喚した。

「本気を出すならこれも使わないといけませんね。
 纏なさい、『霊装』ウリエル」
「やはり霊装出来ましたか。さあ、始めましょうか」

 その言葉を皮切りに戦闘が始まった。

「グランドブレイク」
黒壁ダークウォール

 お互いの魔法はぶつかったと同時に砕けた。
 周囲の地面は抉れて酷い足場になっていた。

天破縛石てんはばくせき

 楓は抉れた地面を使い四方からフードの男を締め付けた。
 身動きが取れない人物に対し、更に攻撃を続けた。

天破激星てんはげきしょう

 そう呟くと上空から彗星が落ちて来た。
 轟音と共に爆発が起こり土煙が舞った。大きなクレーターが出来ており、土煙が晴れるとそこには無傷で立っている人物が居た。
 その人物は楓の方を見るとゆっくりとフードを取った。
 その人物は男だった。

「いい攻撃だ。だが、威力が足りんな。とりあえず挨拶がわりの戦闘も終わったことだ。自己紹介だけしようか」

 威力不足と言われて、楓は悔しかった。更に、余裕綽々と今から自己紹介をしようとする男に少し悔しさを覚え、唇を軽く噛んだ。
 そのような楓を他所に、男は自己紹介を始めた。

「初めまして、私の名はゼロと言います。土属性の魔法が得意です」

 にっこりと笑いクレーターから脱出した。土煙で汚れてしまったマントを脱ぎ、軽くストレッチを始めた。
 ストレッチを終えると一気に雰囲気が変わった。

「そろそろ第二ラウンドを始めようか。今度はこちらから仕掛けますよ」

 そう言うとゼロの右手に大剣が生成された。

「楽しませろよ」

 その言葉の後にゼロが消えた。霊力マナの流れを読み取ると楓の頭上に跳んでいた。

「破斬」
「くっ、絶鋼障壁ぜっこうしょうへき

 咄嗟に障壁を展開した。
 しかし、障壁は直ぐにヒビが入り砕け散った。ギリギリのところで大剣を避けた。
 衝撃だった。今まで仲間の一部にしか破られたことがなかった障壁がこんなにも簡単に破られるなんて想像もしていなかった。
 破られた後も何度も剣撃を受けるたびに同じ障壁で対抗したが、簡単に破られた。
 楓は一度距離を取り、冷静になろうとした。

(今の障壁では通用しない。一応これ以上の障壁を作る事は出来る。けれどこの状況で作り出せるほどの余裕が無い。どうすれば、でも)

「やらなければならないならやってやるまでよ」

 決心した楓の目の色が変わった。
 その姿を見てゼロは少し嬉しそうに笑った。
 ゼロは視線の端で完成した門を見てこの場からすぐに離脱出来ることを確認してから楓に視線を戻した。

「そろそろ終わりにしましょうか。これを受けて立ってた者は片手で数えることが出来る程しかいません」

 そう言うとゼロは大剣を構え、霊力を集中させた。
 それに合わせて楓も、霊力を纏い始めた。
 楓は霊力を纏う中で冷静さを取り戻し、自分が落ち着いていくのがわかった。
 時間にしてわずか一分、二人とも完全に溜まっていた。

「いくぞ、『天鎖覇極てんさはごく

 今日の斬撃の中で一番の威力を放っていた。
 迫り来る斬撃に対し、今までとは余裕を持って対処できると確信した。

「今の私の全力です。『完全物理防御プロテクトイージス

 何層もの障壁を複雑に重ね、物理攻撃を完全に無効化することが出来るシールドである。
 そして斬撃とシールドが衝突した。
 二つはぶつかり衝撃波が周囲に拡散した。砂埃が晴れ、楓は斬撃を完全に防ぎ切っていた。
 その様子を見てゼロは笑っていた。

「ふふっ、防ぎましたか。先が楽しみですね」
「まだ余裕とは恐れ入りました。ですが、お互いに限界の様ですね」

 楓はその場に片膝をつき、肩で呼吸をしていた。
 確かに楓の言う通り、大剣は砕けて無くなり霊力も殆ど無くなっていた。
 それに、ゼロは戦う気も無くなっていた。

「そろそろ帰ります。久々に楽しかったですよ」
「今回は私も追うことが出来ません。ですが、次は私が勝ってあなたを捕縛します」
「いいね、次の楽しみが増えたよ。じゃあね」

 ゼロは門を通る前に立ち止まった。

「あっそうだ、こっちの目的は完全に達成出来たから。これから楽しい事になるけど頑張ってね」

 そう言ってゼロは居なくなった。
 少ししてから動ける様になり、周辺の調査よりまずは燐との合流を優先した。





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