世界を護る叛逆者

絢崎大輔

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第一章 始動編

顕現1

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 昨夜の戦闘から8時間が経過していた。
 2人は何事もなかったかの様に学校に登校していた。
 しかし、昨日の発言がそれを許さなかった。

「それにしても、昨日のあの言葉の意味ってどういう事なんでしょうかね」
「言葉って姉さんが言われた言葉?」
「そう。これから何処かで何かあるんでしょうけど」
「まあ、それはいつきに任せたらいいんじゃない?わかったら直ぐに連絡をくれるって言ってたし」
「そうだけど、準備しておくに越した事はないでしょ」

 そんな会話をしているといつの間にか学校に着いていた。
 とりあえず教室に向かおうとすると、校門を過ぎた辺りで数人が固まって話しているのが見えた。
 よく見ると、その集団は深夜たちだった。
 深夜たちも二人を見つけると歩み寄り、まずは挨拶を交わした。
 そして、すぐさま本題を切り出した。

「ちょっと二人に来て欲しいところがあるんだけど着いてきてくれない?」

 二人とも疑問に思ったが着いて行くことにした。
 少し歩いてついた場所は学校の校庭だった。
 そして、二人は驚愕のものを見た。
 そこには、最近見ることがあった結晶とは色が違う結晶が浮遊していた。
 しかし、大きさや色が違っていた。大きさは水色の結晶の二倍程あり、色も赤色だった。
 そして、一番違うところは一切の霊力を放っていなかった。
 昨日まで見ていた水色の結晶は、周りが歪む程の霊力を放っていた。
 しかし、目の前にある赤い結晶は透明度は無いものの一切の霊力を保有していない。
 そして、不思議なことがあると深夜が教えてくれた。

「もしかしてこれって」
「恐らくそうだと思う」

 二人はアインス達が言っていた面白い事なのでは無いかと思った。

「この結晶なんだけど、見えてる奴と見えてない奴が居るみたいなんだよ」
「それとね、見える人の中でも触れる人と触れない人が居るんだって。まあ、見えてる人はここに居るメンバー以外まだ見つかってないんだけどね」

 そう言われて燐と楓は結晶に触ろうとしたがすり抜けてしまった。
 その姿を見ていた四人は少し苦笑いをしていた。

「やはり触れませんね。この中で触れたのは深夜君だけですね」
「深夜、何か面白いことでもあるんじゃねえか」

 は笑いながら肩に手を回しながら大きな声で笑っていた。

「いや、そんなこと言われると不安でしか無いですよ」
「起きてから考えればいいんじゃ無い?」

 ケラケラと笑っていた。

「お姉ちゃん、何か起きてからじゃあダメなんだよ」
「私達にもわかりません。何も出来ないなら、様子を見ながら注意して過ごしましょう」
「だな。とりあえずここで話しても埒が開かないし教室に戻るか」

 その言葉で六人は教室に向かった。
 途中、燐は立ち止まり結晶を睨んだ。何か大変な事が起きる前兆の気がしてならなかった。
 楓は教室に向かいながら、いつきに素早く状況をメールで伝えた。


 そして何事も無く放課後になった。
 六人は朝に見た結晶が気になり、校庭に向かうことにした。
 結晶の目の前で立ち止まるが、朝と一切変わらない様子だった。
 楓を除く燐達五人が話している中、楓にいつきからの返信が届いた。
 忙しかったのか、珍しく返信が遅かった。
 内容としてはこうだ。
 情報への感謝。そして、今夜、早速調査を行うとの事だった。
 内容を確認した楓は一言、了解とだけ打って返信した。
 その後、何もなく帰ることになった。
 そして、次の日の朝にメールが届いていた。
 差出人の名前はいつきだった。内容は調査報告となっていた。
 直ぐにメールを開くと、ただ一言『一切の詳細がわかりませんでした』と書かれていた。
 さらに、二週間が経過した。今日までに二人は何度もいつきと相談をしたが、結論が出なかった。
 唯一、予測として何かが封印されている結晶ではないかというものだ。
 しかし、誰一人として触る事が出来ず、器具すらも取り付ける事が出来ない為、検査すら行えない状態なのである。
 完全に手詰まりな状態だった。
 何も出来ないまま、さらに一週間が過ぎた日の放課後、六人は結晶を見に行った。すると、以前より透明度が上がっていた。
 やはり触ることは出来ないが、よく見てみると薄っすらと反対側が見えるまでになっていた。

「少し透明になってるね」
「そうだけど、やっぱり霊力は感じないんだよな」

 皆んなは不思議そうに考え込んだ。
 しかし、これと言った結論が出る訳でもなく、ただ時間が過ぎただけだった。

「このままここに居ても埒が開かないし帰りましょうか」
「それなら今日は金曜日だし、何処かに寄ってから帰らない?」
「じゃあ、新しく出来た駅前のカフェに行きませんか?」
「そうだね。皆んな行こっか」

 六人は結晶を後にし、カフェに向かった。
 結局、カフェで一時間ほど談笑し解散となった。
 帰っている途中でいつきからメールが届いた。
 今から家に行くというものだった。
 家に帰ると、既に家にいつきが居た。

「今日の結晶の様子はどうでしたか?」
「少し透明度が増していました。しかし、触る事は出来ず霊力も感じられませんでした」
「やっぱり変化があったか」
「やっぱりって何かあったんですか?」
「実はね、これ見てくれないかな」

 いつきに差し出されたタブレットには結晶が映っていた。
 さらにその映像のそばには心電図のようなものが付随していた。

「それの十七時頃の映像を見て欲しいんだけど」
「十七時っていうと私達がここから居なくなって三十分ぐらい経った後ですよね」

 遡って見てみると、そこには霊力が溢れている結晶の姿があった。
 一瞬だけ大きく揺れたが、それ以降は何も無かった。
 本来であればこのレベルの揺らぎは二人とも気がつく。
 しかし、学校に貼られた結界により霊力の揺らぎがわからなくなっていた。

「数日前からこっそり観測してるんだけど、初めてなんだよね。まさかとは思ったんだけど」
「そろそろ何かが起きそうな予感がするって事か」

 三人は黙り込んだ。
 その静寂を遮るかのように、綾辻双葉が入って来た。

「とりあえず御夕食に致しましょう。いつきさんも食べていきますよね」

 微笑みながら提案をした。

「そうですね。一息入れましょうか」
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