8 / 133
⑤
しおりを挟む蚊帳の外である私は今日の宴の詳細は聞かされていなかった。
クラリス聖教皇国の使者となる御三方がいらっしゃるということは彼らが下賜される妃の護衛をすることになるのか。
他人事のように思っていた。
そんな中、貴族達が道を開けだした。
「おいでなすったか。馬鹿殿が」
「マクシミリアン」
「んんだよ。不敬だっていいたいのか」
「違う。馬鹿殿という表現が間違いだというのだ。あのような馬鹿王子は馬鹿殿に無礼であろう」
アクエリオン様、さりげなくきついですね。
知的な雰囲気を持つ方だけど言葉は結構キツイ方なのかしら?
「馬鹿なのは同感だ。王太子妃である貴女を粗末に扱う意味を理解していないだろう」
「アルバシア様…」
どうしよう。
彼らはアグナレス王国の内情を詳しくご存じないのね。
まぁ、他国には言いにくいわ。
だって、正妃になるはずの王太子妃が今では追いやられ側妃が正妃になるのが決定しているのだから。
「娼婦が…」
「マクシミリアン様…そのような」
「アンタも何で何も言わねぇんだよ。アンタは政略結婚であろうとも王太子妃だ。聖女なら弁えるべきじゃねぇのか…つーか、国王もまるで解ってねぇな」
「これでは秩序が崩壊だな」
「今は亡き国であろうとも政略結婚の為に嫁いだ姫君を侮辱することが後にどういうことになるか解っているのか・・とはいえ妃を下賜する側として不安があるな」
「ああ、あのケチ王、金を出し渋り、領土も差し出したくない…なのに国の防衛のために騎士を派遣しろだぁ?どこまで強欲で勝手なんだよ」
恐らくだけど、御三方は知らないのね。
下賜される妃が私かもしれないということを。
いいえ、確実に私ではないかしら。
エルバート殿下には側妃となるのはアラクネ様だけ。
だからといって国王陛下の側妃を下賜させることはしないだろうし。
「姫さん、何でアンタはここにいるんだよ。本当ならあそこにいるんじゃねぇのか」
「それは…」
「確かにな。それに下賜される妃は何所にいるんだ。見当たらない」
「はぁー…どうなっているんだ」
言えないわ。
皆様は王太子妃である私は既に廃妃されているも同然で王宮では何の価値もない妃だということを。
きっとこの場で私が下賜されることを皆の前で宣言されるのではないかしら。
「姫、いかがなされたのです」
顔を俯かせる私にアルバシア様は心配そうにしてくださる。
距離を保っているけど優しさが感じられる。
先ほど握手を拒まれたのにも理由があるのではないかと思う。
そんな中国王陛下と王妃陛下が皆の前に現れる。
「皆、今日は良く集まってくれた。本日は長らく続いた戦争が終結したことの祝いと大事な報告がある」
前に出て戦争の事を労う国王陛下。
「皆も知っておるが、魔王軍との戦争が終結し。我が国の聖女も戦争に貢献したことは知っていよう。故にこの度を持って聖女アラクネを正式な正妃とすることをここに宣言する!」
国王陛下の言葉に声を上げる貴族達。
「聖女様万歳!」
「おめでとうございます!王太子妃!」
拍手の音と祝いの言葉が仕切りなしに聞こえる。
「おい姫さん…アンタ知ってたのか」
「聞かされたのは初めてですが廃妃されるのはなんとなく」
「廃妃だと?こんなの吊し上げではないか」
「何所までも腐った王なのか」
私を心配してくださるお優しい騎士様達。
王宮では貴族だけでなく侍女も騎士も私を邪魔者扱いをしていた。
むしろこの光景を見せつけるようだった。
私をチラチラ見て嘲笑う表情が伺える。
でも、辛くない。
悔しいとも思っていない。
だってなんとなく解っていたのだから。
国王陛下の言葉を右から左へ流している中、宰相が書状を読み始めた。
「次にクラリス聖教皇国への献上品代わりとして妃を一人下賜することとする」
「下賜するのはエリーゼ姫です」
既に妃とは呼ばれていない。
そこまで私はこの国にとってよそ者だったのか。
そう思うと涙も引っ込んでしまった。
1,333
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します
天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。
結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。
中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。
そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。
これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。
私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。
ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。
ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。
幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。
しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。
オリバーはエミリアを愛していない。
それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。
子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。
それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。
オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。
一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる