32 / 133
④
しおりを挟む期待をしていたわけではないが想像以上に酷かった。
「あいつら馬鹿か?馬鹿なのか」
「言うな。正真正銘の馬鹿だろ?」
アクエリアスまで悪態をつく程に酷かった。
王宮内は豪華絢爛で貴族達は着飾っていたのだから呆れるのだ。
しかも広間には豪華に着飾る聖女の姿が見えた。
「あれは聖女というよりも…なんつーか」
「気品の欠片もない」
「見るに堪えないな」
聖女とは派手に着飾るものではない。
王妃も同様だ。
「気品とは、心ににじみ出るのだ…見た目だけを取り作っても意味がない」
「同感だ。アルバシア…私は姫が心配だ」
こんな場でずっと一人で耐え忍んでいたと思うと胸が痛む。
だが甘かった。
私達が思う以上に彼女が虐げられていたのだ。
一人でいるのを狙って貴族達は彼女に精神的な攻撃をした。
何もできない私太は傍にいるだけだったのに、お礼を言われてしまって居た堪れない気分だった。
どんな逆境でも逃げようとしない。
傷ついてでも立ち向かう姿は本当に美しかった。
だが、こんな思いを抱くのは許されない。
その一方で彼女を侮辱し攻撃する貴族達。
夫でありながら妻をほったらかしにて守ることもしない王太子殿下。
私は不快感でいっぱいだった。
陰口の嵐で、聖女が王太子を操っているのではないかと邪推をしてしまう。
マリンパレスの恩恵を受けておきながら、恩を仇で返すよう真似をする貴族達。
あの国の薬草や医療技術のおかげで助かった命もあるというのに、聖女の存在をありがたがり、正妃を美女くするなんて何様だ!
「今すぐ殺してやりたい」
「言うなアルバシア。私もこの場を凍らせたい」
私を止めながらの同じような目をしていた。
そのおかげで私は多少なりとも冷静さを取り戻すことができたが悪意は消えなかった。
だから私達は彼女に近づいた。
何かできると思っていない。
ただこれ以上一人にしたくないという私のエゴだ。
なのに彼女は私達にお礼を言い、頭を下げた。
本来なら王族が私達のような身分の人間に礼を尽くす等ありえないのに。
本当に気丈な人だと心からそう思ったが、何故周りは正妃である彼女が下賜される妃だと思うのか。
そんな事ありえない。
そう思っていたのに、公の場で王太子妃を下賜することが発表された。
「おいおい、馬鹿だろ。どんだけ馬鹿なんだよ」
「この国は終わったな」
他人事のような言い方だが、この国の最後の守りでもある存在を自ら手放すとは馬鹿としかいいようがない。
王太子殿下は何も聞かされておらず、流される形だ。
これまで流されながら楽な方に進んでいたのだろうが、私からすれば好機だった。
かつて諦めた初恋の人を手放すことはしない。
1,649
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します
天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。
結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。
中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。
そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。
これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。
私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。
ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。
ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。
幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。
しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。
オリバーはエミリアを愛していない。
それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。
子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。
それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。
オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。
一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる