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序章.始まりの前奏曲
13.スキル追加
しおりを挟むとりあえずテレシア様と旦那様は自己再生能力が強かったことで納得した。
うん、少しばかり規格外だけど、元から自己治癒能力が強い人っているよね。
俺なんて医者いらずだった体質で前世の頃から医者には行けない状況だったけど、食べて睡眠を取って病を吹き飛ばしていたから。
現在も同じくだった。
常日頃から規則正しい生活を心がけているので大きな病気もしてない。
「テレシア様?」
さっきから無言で俺の手を握ったままでどうしたんだろうか。
「ヒーリング」
「はい?」
「エリオル様、貴方は治癒師だったのですね!しかもただの治癒師ではございませんわ!白魔導士に勝るとも劣らない程の!」
いやいや、ないから!
白魔導士って言えば、数多の治癒師の中でも最も優れた人のことを言う。
黒魔導士と白魔導士は対となる存在で、攻撃を得意とする黒魔導士とは正反対に白魔導士は回復魔法を得意としていた。
「私はただ湿潤療法をしただけで」
「やはりヒーリングをしてくださったのですね!魔力を発動せずにヒーリングをなさるなんて宮廷魔導士でも不可能ですわ!」
「いえ…そいうではなく」
俺がしたのは魔力とは関係なく普通に保湿をしただけだ。
前世では湿潤療法と言って傷口に消毒をして絆創膏を貼るという誰でもできる治療だ。
ただし俺の場合は皮膚に効果的な薬を使っていたけど。
でも、回復魔法何て大それたものは一切使っていなかったのだが…
『ステータスが上がりました』
「わぁ!」
鞄から落ちたステータスカードがしゃべる。
『スキルアップしました』
「いや、今はいいから」
しかしステータスカードは俺の言葉なんて聞くことはなかった。
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エリオル・ラスカル
Lv.15 薬草師
体力:60
魔力:10
生産スキル:採取・調合・製薬
戦闘スキル:回避・気配・探索
家事スキル:修復・縫制
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『スキル追加おめでとうございます!』
いや、めでたいのか!
制薬って何?
それよか体力は上がっているのに相変わらず魔力がしょぼい。
『攻撃力は変更ありません』
「言わんでいいわ!」
さりげなくこのステータスカードは性格が悪い。
俺の気にしている事を態々言ってくるあたり、恨みでもあるんじゃないか?
「テレシア様…」
ああ、最悪だ。
きっと俺の底辺スキルを見て呆れるだろうか。
それとも気を使われるかな?
「まぁ、なんて素晴らしいスキル」
「え?」
「それにエリオル様は既に職業をお持ちなんて」
予想外の展開に俺は驚いた。
俺の年齢で職業があるのはすごいことなのだろうか?
「でもスキルが底辺ですし」
「何をおっしゃいますの。スキルがすごくても職業を持てるとは限りませんのよ?スキルを伸ばすのは持ち主の努力とセンスですわ」
そうなのだろうか?
じゃあ聖騎士のスキルを持っているマルスはまだ職業があるわけじゃないってことか。
「それにこれだけのスキルを持った方はいませんわ」
「そうなのですか?」
「ええスキルは3つぐらいですね。なのにエリオル様は沢山お持ちで素晴らしいですわ」
初めて褒めて貰えたスキル。
なんだか嬉しいな。
「お世辞でも嬉しゅうございます。ありがとうございます」
テレシア様はやっぱり優しい人だ。
きっと俺を気遣ってくれているんだろうな。
「奥様!大変でございます」
少しだけほっこりしていると、大慌てで部屋に入って来たマーナさん。
「何です、騒々しい」
「申し訳ありません…ですが旦那様が…食事を取られて」
「何ですって!」
二人の狼狽に俺は首をかしげていた。
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