敵国に身代わりとして捧げられた花嫁はモフモフ姫巫女だった件

ユウ

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第一章婚約破棄と国外追放

2.厄介者払い

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出会った当初から頭が緩いと思っていた。
王妃も息子の緩さに危惧したからこそ、エリーゼを王太子妃に向かえようと思っていた。



「君は美しく、王太子妃として申し分ないが…王妃としての器がない」




公務をサボって遊び歩き、代わりに激務をこなしているエリーゼは着飾る時間すらなかったが、最低限の着飾りはしていた。


「ユフィのように気高く心優しく美しさを持つ女性こそが王妃に相応しい」

遠回しにエリーゼは王妃として失格だと言っていた。

「今なら聖女を偽ったことも許そう」

「は?」

「間違いだったんだ…それに君は僕を愛する故だったんだろう」

何処をどうしたら愛せるのか言ってやりたい。
思えば婚約期間に婚約者らしいことをされたこともない。

普通は婚約したら贈り物の一つぐらいするのに、トビアスはユーフェミアにだけ贈り物を送っていた。

しかもそのお金はエリーゼの為に使われるべきお金だった。
国一番の最高級のドレスをユーフェミアに送り、エリーゼにはドレス一着も送ろうとしなかった。

見かねた王妃はドレスを送るも、ユーフェミアより目立つことは嫌がったのかドレスを着れないように仕組んでいたことも全部知っている。


「君の愛には答えられない。僕達は生まれる前から愛しあう運命にあったんだ。だから許してほしい…君なら解ってくれるだろう?」

既に許し願い所か決定事項だった。
謝罪の気持ちがまったく感じられず聞くに堪えなかった。


(この馬鹿王子が…)

誰が好き好んでこんな馬鹿王子と夫婦になりたいと思うのか。
国王の命令ならば従わなくてはならないし、我が儘放題の妹のフォローも疲れていた。

「この婚姻は私達だけで決められたものでは…」

「それなら心配しなくていい。既に手続きは僕が済ませておいた。王宮もにある君の私物は処分しておいたから心配しなくていい」

「処分…って‥勝手な」

いくら何でもあんまりだと思ったエリーゼは声を荒げそうになるが、トビアス は悪びれたこともなく、むしろ恩着せがましく告げた。


「君は隣国に嫁ぐし、必要ないだろう?僕との婚約が破棄になれば相手はまずいないし。それでは流石に哀れだからな」

(だから人の話を聞きなさいよ!)


本当に人の話を聞かない所はユーフェミアにそっくりだった。
むしろお似合いではないかとさえ思った。


「嫁ぎ先はユフィが嫁ぐはずだったマリンフェスタ帝国だ…」

(ようするに、私を体よく売ったと…)

マリンフェスタ帝国は大国でありながら、十数年前までは敵国とされていた。

停戦状態になってはいるが、貿易をしているわけでもなく、友好国ではない。

むしろ、以前にも国境に近づき、一部の貴族が獣族狩をしたことで双方との間に諍いが起きた。

とは言え、慰謝料として対価を支払わなくてはならいないのだが…

(慰謝料代わりに私を売ったってことかしら)

哀しいのを通り越して短慮な貴族達や王族に両親と正直愛想が尽きた。
このままだったら本当に国が傾くような気がしたが、敵国に売り渡す気でいる王族は既にエリーゼを政治の道具に利用できる使い捨てにしか考えていない。


(怒りを通り越して呆れたわ)

長年の努力は何だったのか。
愛されることもなく、それでも必要としてもらえるならばと血のにじむような努力を重ねて来た。



「トビアス様」

「大丈夫だよユフィ、エリーゼは快く僕達の関係を祝福してくれたよ」

何時からいたのか、姿を見せるユーフェミアが盗み聞きしていたこと何かを言う気にもなれない。

ここで癇癪を起しても無駄なだけだし責められるのエリーゼなのだから。
今にして思うと、本当に一人だったのだと思う。

もしこのまま王太子妃になったら後宮の妃に苛められ、暗殺されるかもしれない。

「お姉様、本当に?」

「これでユフィを敵国に嫁がせなくて済む」

(‥‥なるほど)


全てが読めた。
敗戦続きだったこの国は王侯貴族を一人、人質として差し出すことによって恩を売ろうということか。

本来ならば高位貴族が望ましいが、聖女として見出された経歴があり、王太子妃候補だったなら利用価値はある。

大方、ユーフェミアを手放さず尚且つエリーゼを追い出す為に都合が良かったのだろう。

万一に出も、婚約破棄になっても国内にいられては厄介だろうし、体よく厄介者を敵国に押し付けたということが解った。


「お姉様、本当に許してくれるの?」

「当然だユフィ。姉が妹の幸せを望むなんて当たり前だ」

エリーゼは何も言っていないのに、勝手に決めつけ自己解決するやり取りも日常茶飯事で、今更何か言う気にもなれなかった。



「ありがとうお姉様!お姉様に王太子妃はどう考えても無理があると思っていたし」

「君は本当に優しいな…確かにエリーゼが王妃では我が国の品位を疑われる」


もうこの茶番劇に付き合いきれなかった。

「ええ、これからは貴方が王太子妃として…王妃として国を支えてください」

傷ついたわけではない。
プライドを傷つけられてしまったけど、惨めな女と思われたくない。

何時、いかなる時も感情を出してはならない。

貴族令嬢としての矜持を失うことだけはしていけない。

「お姉様、殿下にお願いしてお姉様には身の丈に合った方を選んでいただいたのよ」

「ユフィの姉が身分が低く過ぎては形見の狭い思いをするだろうからな!君は公爵閣下に嫁ぐことになっている」

「は…ですが、公爵様?」

帝国の公爵家には代表となる四大公爵家が存在している。

「お姉様には責務を担うのは無理だから、田舎で隠居なさっている公爵様の妾の方がいいと思うの!」

遠回しに公爵家の妾として一生日陰で暮らせと言っているようなものだった。
ここまで馬鹿にされて一切の悪気もなく善意でしてやっていると言うユーフェミアに苛立つ。

「待って…」

「お黙りなさいエリーゼ」

けれど最もはらが腹が立つのは、娘を睨みつけ蔑んでいる両親だった。

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