29 / 165
第一章
28.本心
私は飾りじゃない。
確かにいてもいなくても良い存在かもしれない。
『聖女を殺した貴女が一生かけて償うのです』
『それしか価値のないのだから』
ずっと言われて来た言葉が頭に残っている。
私はこの帝国の月を奪ってしまった罪人だからこそ、私なりに償いたかった。
「私は公爵令嬢としての責任があります。例え貴族令嬢失格と言われ加護が無くとも、派閥をこれ以上酷くならないように振舞うことが唯一の道…お兄様の病さえ治れば道はあります!」
社交界の陰口は日常茶飯事。
言われたから言い返していてはきりがない事も解っている。
だから私は言い返さない。
何より恐ろしいのは、貴族が本当に帝国を支配してしまう事。
公爵令嬢と言っても私はまだ結婚もしていないし爵位も持っていないからなんの力もないけど。
まだできることはあるのだから。
「公に立つだけが公爵令嬢の勤めではありません!私は日陰でもお兄様が公爵家を正式に継ぐ時までの準備をするつもりです…ツギハギ令嬢と言われようとも私は自分の意思で動いてます。侍女になることを選んだのも変わりたいから宮殿に来たんです」
逃げ道を完全に無くすために。
「アリア様…」
「一度死ぬぐらい追い込んで武者修行をするべく参ったのです」
「「は?」」
花嫁修業とは武者修行なるもの。
ハント侯爵家の花嫁修業はまだ甘いのだと思った。
ならば一層の事弱い自分を鍛えなおすべく私は死ぬ気で励もうと思った。
「ですから私をもっと罵倒してください!」
「どうしたらその発想になるのよ!このポンコツ姫!さっきまでの私の感動を返しなさいよ」
「ちょっとオディール!」
売り言葉に買い言葉で大それたことを言ってしまった。
「申し訳ありません!」
「だから謝るんじゃないわよ!むかつく女ね!」
「だから止めなさいと…」
私は土下座をして謝るも余計に怒られてしまった。
「何をしているんですか」
「レクシー…」
「新人を床に這いつくばらせるなんて、なんて非道な真似を!」
私を見てもう一人の先輩侍女が怒鳴り散らす。
「また癇癪を起したんですか?貴女って人は…何でもかんでも敵味方の区別をつけなくては気が済まないんですか?そんな野蛮な考えだから演奏にも影響が起きるのです」
「それは関係ないでしょ」
「ありますわ。ローゼン宮の薔薇を美しく育てるには美しい心で演奏をしなくてはなりませんのに」
アステリア帝国の聖花は美しい音楽を聞かせることでより輝きを増すと言われている。
そんなこともあり皇居では宮廷音楽団があり、特に腕の良い物はオーケストラ団に入るのだ。
女官は勿論侍女も音楽の嗜みを持つ。
美しい心を持つ者は美しい音色を奏でらえると言われており、女性としてもステータスなのだ。
「先日も練習でミスをしたとか」
「それは…」
「貴女はもう少し他者を愛する事から始めなさい」
その結果私達は――。
「何で私まで」
「それは私の台詞よ。罰として夜の見回りなんて」
騒ぎを起こした事で罰を受け夜の見回りを命じられた。
ちゃんと衛兵が見回りをしているので問題ないのだけどローゼン宮殿の中は古く夜の絵画は雰囲気がある。
「いやぁぁ!光ったわよ」
「何か動いて…」
二人が驚き下に動いている何かを見つけた私をそれに気づく。
「ヤモリですわ」
「ひっ…いやぁぁぁ!」
「ちょっとオディール!」
床をカサカサ動いているヤモリを素手で掴んで見せると、オディールは逃げて行った。
「アリア、貴女平気なの?」
「はい、領地ではマングースと蛇もいましたし。花を育てていると虫も多いので」
公爵領地にいる頃は野原を走り回っていたから。
ちなみにシシィー様は爬虫類が大好きだったから私も一緒になって蛇の観察をしていた。
「オディールはお化けと爬虫類に女好きな男が嫌いなんです」
「そうでしたか。また嫌われることをしてしまいしたね」
仲良くなりたいのに難しいわ。
オディール様はこの宮殿に来て初めて話しかけてくださった方なのに。
「あの…オディールの事を嫌いだとは思いませんの?」
「何故です?初日から私に声をかけてくださり。お仕事も簡単なのにしてくださいました。先ほども叱咤激励も親切でしてくださったのですよね?」
「アリア…貴女はある意味大物になりますわ。皇女殿下の寵愛を受けた理由が解りました」
ため息を付きながら天井を見上げるカノン様はその後私に呼びしてにして欲しいと言われた。
あなたにおすすめの小説
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
【完結】私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜
恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」
不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。
結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、
「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。
元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。
独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場!
無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。
記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける!
※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。
苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる
物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ベールを上げた新郎は『君じゃない』と叫んだ
ハートリオ
恋愛
結婚式で新郎に『君じゃない』と叫ばれたのはウィオラ。
スピーナ子爵家の次女。
どうやら新郎が結婚する積りだったのは姉のリリウム。
ウィオラはいつも『じゃない方』
認められない、
選ばれない…
そんなウィオラは――
中世ヨーロッパ風異世界でのお話です。
よろしくお願いします。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。