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第一章
29.個性的な侍女達
翌朝、支度を終え朝の支度に向かった。
「何でもう起きているのよ!」
「おはようございます。良い朝ですね」
「鏡に向かって何しているのよ」
今日も朝の儀式を始めている最中にオディール様が怪訝そうな表情をする。
「朝の儀式、笑顔の練習です」
「は?」
「私はもっと侍女らしく優雅に微笑む練習をしなくてはなりません。皆さんにも親しみやすさを持っていただかなくては」
「馬鹿じゃないの」
ああ、私の大事な教科書が!
これで貴女も笑顔美人がゴミ箱に捨てられてしまった。
「こんな聖書みたいな本を読んでも無理に決まっているでしょ!それ以前にそのセンスのない恰好は何?」
「え?おかしいですか?」
「ああ!何でこんな令嬢が帝国一番の血筋を持つの!ありえないわ」
侍女の服装は規定された物を着てるけど服飾品は仕事の妨げにならない程度なら許可されている。
私はお母様の形見のペンダントにアイリスの髪飾りを着けていた。
「いけませんでしたか?」
「皇女殿下の侍女として美しくあるのは当然よ…なのに髪はアップでアレンジもないし。化粧も地味だわ」
「ですが、婚約者がいる身では派手は装い…むご!」
「女性は常に美しくあるべきなのよ。美しい皇女殿下の侍女が野暮ったいなんて許されないわよ」
「ふぼぉ…ふご!」
大きな手で両方の頬を鷲掴みにされるも。
バシッ!
「痛い!」
「オディール、朝っぱらから後輩を苛めるとは何事ですの?」
「何で書類で殴るのよレクシー!」
大量の書類を持つレクシー様が書類でアディーレ様が殴った。
「朝から問題を起こすのではありません。しかし…アリアの消極的な態度は問題ですわね」
「そうでしょ?」
「けれど貴女のような自尊心の塊の侍女になるのは論外です」
さらりととんでもない事をおっしゃったわ!
「口は災いの元ですわよ?まぁおしゃべりな馬鹿にしゃべらせて最後はとどめを刺すのは悪くないのですが…溺れる魚を見るのは楽しいですから」
「レクシー…」
背後からどす黒いオーラ―が見え隠れした。
これなら社交界で意地悪をする令嬢の方が可愛らしいのではないかと思ったのだが。
「アリア、貴女には侍女として必要な知識を私が直々にお教えします。皇女殿下の侍女たるものハニートラップもできなくてはなりません。公爵令嬢と言えど、ここでは意味がありませんので」
「はっ…はい」
「ここでは実績、実力重視です。しっかりと叩き込んで、体にも仕込んで差し上げます」
本当の意味で私の侍女としての苦難の日々が始まった。
はずだったが…
『お黙り、平民如きがでしゃばるんじゃないわよ』
『お許しを!』
「ほぉ、すごい!なんて威圧感」
厳しいマナーレッスンと思いきや、レジーナ様に連れられ舞台鑑賞をして勉強をするようになった。
「これが醜い女の戦いですわ。よく見ておくのです。それからこれは後宮の薔薇という、女同士が王の世継ぎを生むべく醜い争うをする物語ですわ。小説と映像付きです。しっかり見るのですよ」
「はい!」
舞台鑑賞が好きな私に観賞用の道具とテープを貸してくださり、休憩時間は演劇鑑賞を楽しんだ。
その後も侍女の仕事は一日中忙しいわけでもないので暇な時間は好きな事をさせてもらい、貴族令嬢として足りない勉強をカノンが見てくれた。
唯一苦手と言えばオディールの特別レッスン。
様を着けたら怒られたので呼び捨てにしたのだけど。
彼女の美容レッスンが一番厳しかったが、充実した日々を送っていた。
皇居では相変わらず私を見て少し避ける令嬢も多かったけど、これから頑張ろうと前向きになれた。
今まで後ろ向きだったのが嘘みたいだ。
何故かローゼン宮殿に来てから心も元気だった。
「そろそろ時間ね。お祈りに行かないと」
シェーンブルク宮殿とローゼ宮殿の間にある聖女宮殿の中にある託宣の間。
そこで祈りを捧げるのは侍女や女官達の日課だけど、強制ではない。
休憩時間を利用してお祈りに行くべく簡単に着替えをして出て行った。
「わぁー綺麗」
聖女宮殿の庭園に秘密のお庭があるとは思わなかった。
「なんて素敵なの」
アイリスの花が沢山咲いて素敵だった。
ツタで隠れているがちゃんと門がある。
そこからこっそり入ると誰かが祈りを捧げているようだった。
「誰?」
「申し訳ありません!」
急いで出ようとした時、その人は立ち上がり振り向いた。
「君は――」
もう一度会えるとは夢に思っていなかった。
ローレンツ様がどうして!
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