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第四章
5.下っ端侍女~エイミールside
アドリア―ナは反抗的な態度を改め従順になったが陰気になってしまった。
おかげで社交界では公爵令嬢としての威光もあったものではない。
しかし――。
「エイミール」
「はい、母上」
「先日の王家主催のパーティーにシャロンを同行させたそうですね」
「はい」
早朝に母上に呼び出され、先日の王家主催のパーティーにシャロンをパートナーとして参加したことを告げられた。
「今回のパーティーは王族主催、各国の勅使も参加される大事なパーティーであることを伝えたはずです」
「はい、存じております」
「ならば公のパーティーにシャロンを何故参加させたのです…公式のパーティーに参加させる時は私の許可を取るようにと言っておいたはずです」
何故か母上は怒っているようだった。
「それに先日の舞踏会で絹のドレスを着ていたと聞きます。本来皇族や王族しか纏うことが許されないのに、なぜあのような真似を」
「シャロンが着たいと言いまして」
「エイミール、シャロンは貴方の婚約者ではないのですよ。二人の仲は認めましたが…公の場ではあくまでアドリア―ナの婚約者。解っているでしょう」
「解ってます」
何度も言われなくとも、そんなことは解っている。
望まない婚姻を結ばされ、忍ぶ恋をする俺はどれだけの思いをしているか。
「貴族の殿方が愛人を持つのは常識的な事。ですが、結婚前にあまり騒ぎを大きくするものではないわ。公爵様に誤解を招かれては困るのよ…どんなに社交界で蔑まれようとでも皇帝陛下の唯一の姪であるのだから」
「母上!私はシャロンを愛人だとは…」
「エイミール。少しは融通を聞かせなさいな。アドリア―ナはお飾りでしか過ぎないのです。唯一愛するのはシャロンであっても、現段階ではと言ったのです」
「ですが、何時まで経っても公の場に出してやれず日陰とはあまりにも哀れでは」
「時期を見誤るのではありません。結婚すればもう少し自由になるでしょう。しかしその前に両者の関係に亀裂が生じてはなりません。公爵様の耳に入っては困るわ」
母上は何かにつけて公爵閣下の耳に入れるな。
やれ公爵閣下と煩い時がある。
父上に関してはそこまで敬意を持つ事はないのに。
「いいですか。今は我慢なさい…そうでなければ侯爵家の威信にも関わるのですから」
「はい、承知しました」
今は耐えるしかない。
シャロンを公式のパーティーに連れて行くのは控えなくてはならない。
ただし、堅苦しくないパーティーや無礼講なパーティーは良いだろう。
苛立ちながら部屋を出ると、下っ端の侍女が何かを運んでいるのを見る。
「おい、それは何だ」
「はい、先日シャロンお嬢様が着られた絹ドレスでございます」
「何?そんなものは処分しろ」
「しかし!」
母上に叱られ苛立つ俺はその侍女を怒鳴り飛ばし、突き飛ばした。
「命令だ!すぐに処分しろ!」
「あっ…」
ドレスが入っている箱が床に落ちる。
「誰が仕立て直せと言った!」
「しかし、こちらは公爵令嬢の母君の形見と伺いました。亡くなられた母君の思い出の品をできるだけ…」
「貴様は主人の命令に逆らうのか!今すぐ処分しろ!」
「…かしこまりました」
その日、ハント侯爵家からお針子が一人辞めたと聞いたが、特に気にも留めなかった。
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