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第二部.薔薇の花嫁
14.幸福の地
クラエス領地は南国であり、隣国のシプロキサンと直接貿易をしていた。
その為、シプロキサンの人間の出入りが多く。
また、その逆も多かった。
国内で最も平和な領地なのは、豊かな自然に恵まれ。
特産物となっている作物が多いことも理由の一つったとも言える。
「こうして見ると、クラエス領地は本当に豊かよね」
「ああ、他の領地では貧富の差が激しいのに…町の方は随分と活気があったな」
「ええ、領民の方も気風が言いと言いましょうか」
貴族からは身分を弁えないと言う声もあるが、クロエからすれば観光に来た客を誰も拒まず受け入れようとする心は見習うべきだった。
「それに、ここのアイス…美味しかったですし」
「殿下に文句を言っていたのにか?」
「ムッ…そういう貴方だって、ケバブを放り込まれながらも美味しそうにほ奪っていたではありませんか」
「美味しかったんだ」
二人は一日で既にクラエス領地に心を奪われていた。
特に食事が気に入ったようだった。
「王都では手ベられない食事が多いですわ。特にシナモンの入ったこの紅茶…なんて美味しいのかしら」
「このジンジャーティーも素晴らしい」
二人はシプロキサン文明に関して偏見を持っていない。
その所為もあるのか、新しい物に関しても寛大に行けいれられるし、特にクロエは侯爵令嬢でありながら商会を任されているので新しいものが好きだった。
「シプロキサンの茶器も素晴らしいですわ。今度我が商会でも取り入れたいですわね」
「君の商会は服飾の専門だろう?」
「お客様をお招きする時にこの茶器を用意するのです。美しいものが嫌いな女性はおりませんわ」
「なるほどな」
未だにシプロキサン後進国と馬鹿にする貴族は多いが、そういう人間に限って物を知らないのだった。
「百聞は一見に如かずですわ」
「君はぐいぐい行くからな」
「これまでは遠慮してましたのよ?第二王子殿下の婚約者である身でしたし…でも、遠慮する必要はなくなりましたし」
「えっ?それは…」
クロエの言葉に戸惑うフローレンス。
セイロンは深いため息をつきながらお茶をもう一杯飲みながら告げた。
「フローレンス嬢、君には色々話さなくてはならないことがある」
「え?」
「君がいなくなってから王都は少々荒れだしてね…」
セイロンはできるだけ穏やかな表情で告げるも声が少し低く感じた。
「君の耳に入れるかどうか、迷ったんだが…知らないよりも知っている方がいい」
「フローレンス様の御心が不安定なら、私もお耳に入れるつもりはありませんでしたわ。でも、問題ないかと」
「そうだね。だから、話してもいいかな?」
セイロンは、フローレンスの事を気遣いながら再度尋ねる。
「聞くか、聞かないかは君次第だ」
「セイロン様…」
王都を離れて、穏やかな暮らしをしているフローレンスを二度と傷つけたくない。
その一方で、何も知らず箱庭の生活に甘んじることを良しとしないのがフローレンスだと思っていたセイロンは問うたのだった。
聞くか、聞かないかの有無を。
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