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第二部.薔薇の花嫁
15.真実を知る為に
セイロンの問いかけにフローレンスは目を閉じる。
自分がどうしたいか、どうありたいか自分の心の声を聞いていた。
(私はこのままでいいの?)
与えられるだけの愛情に甘えて、傷つかない場所で生きていてもいいのかと、何度も問いかけた。
(そんなの逃げているだけじゃない…)
今、現実から目を逸らせば後悔する。
そして、そんな卑怯な自分ではアリシエをまっすぐに見つめることはできないのではないか?
そう思ってしまった。
「お教えください」
「フローレンス嬢」
「私は知らなくてはなりません」
既にアスガルト伯爵家の人間ではなく。
捨てられたも同然であるが、それでも知らなくてはならない。
どんなに酷い家族でも、血を分けた家族であることは変わりなく。
彼等が、他人に迷惑をかけているならば尚のこと知らない振りをすることはできない。
「知って何かできるか解りませんが…私にも責任がございます」
「フローレンス様…貴女という方は」
困った表情をしながらもどこか嬉しそうに微笑むクロエにセイロンも安堵したように笑みを浮かべていた。
「解った。じゃあ、話そう」
「お願いいたします」
現在王都で何が起きているのか。
そして、フローレンスが王都を離れて一か月の間に何かがあったのかを話し始めた。
「あの事故があってすぐに、君の妹とシュナイダーは今回の事故は故意ではないかのという噂が出回り始めたんだ」
「え…」
「客観的に見ても、あの時シュナイダー様が貴女の手を掴んだ後に突き飛ばしたせいで階段から転落したのは事実です。本人は認めませんでしたが」
当時の出来事はフローレンス自身も口論の末の事故だと思っていたが、第三者からすれば一方的なモノだと思われても仕方なかった。
「学園内には監視の鏡が設置されているのは御存じでして?」
「はい、防犯の為に設置されている鏡ですね」
国内一の名門校であり、マンモス校はトラブルがあった時の為に学園のいたる場所に特殊な鏡が設置されている。
その鏡を確認して事実関係をはっきりさせた。
映像には事故前に言い争っていた二人の映像はきっちり映っており、第三者の目から見ても事故ではなく故意にしたのでは?と思われても仕方ない映像だったことから、教師達はすぐに当事者であるシュナイダーとジェネットを呼び出した。
「証拠はありますが、それだけでは罪に問えません。先生方はお二人を生徒指導室に呼び出して事情を聞きましたが…」
「二人は反省するどころか、自分達は被害者だの言って、あげくの果て先生方を侮辱して暴言を吐き散らしたそうだ」
「なんてことを…」
フローレンスは眩暈がした。
学園内の教師は、身分こそ高くないが、王室家庭教師に選ばれる程のエリートだった。
平民もいるが、誰もが自分の力だけで地位を得た者達ばかりだった。
貴族であっても高位貴族でない者が王室家庭教師に選ばれるまでどれだけ苦労したか、どれだけ辛い思いや、理不尽な扱いを受けていたか安易に想像できた。
そんな彼等にジェネットは差別をしたのだった。
「表向きは冷静だった先生方ですが、かなりご立腹でした」
「特に理事長や校長はジェネット嬢に対して不快感を抱ている。これまで彼女が学園の格式と伝統を汚して来たのは明らかだ…今回も彼女は反省の色が全く見えなかったんだ」
「どうして…」
いくら何でも酷すぎると思った。
確かに両親に甘やかされ育ってきても、必要最低限のマナーは教えられてきたはずだった。
現に社交界では同年代の貴族の子息からは淑女の鏡だとも評価されていたはずだった。
なのに、どうして学園を敵に回すのだろうか。
社交界に出る前の予行練習となる場でもある学園はただの学び舎ではない。
人脈作りをする場でもあり王立学園での素行は他国にも知れ渡ってしまう可能性がある。
学園で問題を起こせば、今後社交界でも爪はじきにされても可笑しくないなんて子供でも知っていることを何故したのか解らなかった。
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