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第三部.栄光と失墜
3.無恥な親子
成人していない子供でも知っている常識をまるで理解していないジェネットはビアンカが哀れだと思った。
侯爵夫人でありながら誰に仕えるなど信じられないと言いたげだった。
「どういう意味ですの?」
「そのまま、通りですわ。侯爵夫人ともあろうものが、侍女の真似事など…そんなの下級貴族と同じですわ」
「なっ!」
側にいる友人達は耐え切れず声を上げようとするも、ビアンカが手を引く。
「お止めください」
「ですが、いくら何でも!」
「そうですわ!」
下級貴族と言っても色々ある。
確かに貴族社会では伯爵以下は下級貴族と呼ばれているが、下級貴族でも高位貴族よりも優ぐされ、重宝さている貴族もいるのだった。
「それにここのお茶会は、随分と地味ですわね」
「は?」
「豪華さが欠けますわ、美術品も古臭くて…やっぱり身分が低い方は美術品の良し悪しも解りませんのね?ねぇお母様」
「ええ…本当に、こんな質素ななんて…特にこの花は随分と貧相です事」
ジェネットに続きアミールまで言いたい放題だったのだが…
「本日の夜会の趣旨はチャリティーですわ。煌びやかにする必要はございませんことよ」
「まぁ!チャリティーだなんてみっともない!平民に施しをして人気取りをする行為ではありませんか」
「下級貴族派必死ですのね」
何度も下級貴族を連呼する二人に、他の客人も睨みつける。
そもそも、本日のパーティーは家柄の自慢や財を自慢し合うような下劣な集まりではない。
慈善活動をしている代表の集まりだったのだ。
彼等からすれば、他人に寄付するなんて考えられないことなので理解できないのだろうが。
「お気に召していただけず申し訳ありませんでしたね。私が選んだ食器が余程不快だったようですわね」
静かな所作で現れる美しい女性。
お淑やかで流れるような所作は、誰もが見惚れるようだった。
派手さはない白いドレスだったが、清楚感があり。
露出はないのに、美しさと華やかさを感じられるようで、周りの視線はくぎ付けだった。
「でしたら、早々にお帰り下さいな。無理にいていただかなくても結構ですわ。それとも私に難癖を付けたくていらしたのかしら?」
「そっ…そのような!」
カーネルは真っ青になりながら告げるも…
「何ですの?偉そうに…無礼ですわね!私を誰だと思ってますの?」
「申し訳ありません。存じませんわ…お目見え以下の方ですわね?」
「は?」
――お目見え。
国王両陛下に直接お目通りが許され、尚且つ王妃殿下のサロンやお茶会に参加することを許された立場の物を指す。
「私はおお目見え以下の格下の方とお会いするのは初めてですの。新鮮ですわ…ですが、やはり常識を持ってないようですわねぇ?」
「さっきから何ですの?老害だからって許しませんわよ!無礼な…」
「申し訳ありません!娘はまだ幼く…」
「お父様!どうして謝るんですの?悪いのは地味なおばさんですわ!」
「ジェネット!」
普段はジェネットの甘すぎるカーネルも怒鳴らずにはいられなかった。
しかし既に遅かった。
ジェネットが貶し続けた女性は社交界でもかなり有名な女性であり、アスガルト伯爵家よりも格上の立場の女性だったのだから。
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