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第四部.幸せになる条件
10.社交界の縮図
今夜は王妃主催の舞踏会。
高位貴族だけでなく、辺境貴族も参加する程の大規模だった。
普段よりもずっと煌びやかで豪華な舞踏会に、貴族令嬢は浮足立っていた。
デビュータントを迎えた令嬢は、できるだ有力な貴族の舞踏会に参加して見初められるるべく努力していた。
特に王族主催ともなえれば、身分、血筋、財力とも申し分ないが、呼ばれるのは高位貴族ぐらいだった。
だからなのか、今夜参加する貴族令嬢は目をギラギラさせながら、貴族令息を品定めに見ていた。
後は、女性同士の争いをしていたのだが――。
その場に一人だけ、雰囲気が異なる令嬢が静かに歩いていた。
優雅な所作に、美しい銀色のドレスを見に纏う姿に誰もが見惚れる。
「何方ですの?」
「なんてお美しい方…」
誰もがくぎ付けになる程の美しさ。
エスコートをする男性も申し分ない程の美青年で完璧だった。
「見慣れない方ですが…なんて素敵な殿方」
「ええ、でも…どうして」
そのまままっすぐに進む。
その場所には――。
本日の舞踏会の主催者が挨拶をする。
「この度はお忙しい中集まり誠にありがとうございます。今宵は私の甥とその婚約者を皆様にご紹介したく思います」
「えっ…王妃殿下の?」
「では、あの方がクラエス家のご子息!」
ざわめく会場で、余裕の微笑を浮かべる面々は既にこの舞踏会の趣旨を知らされている貴族だけだった。
「本日はお時間を頂き誠にありがとうございます。フローレンス・アスガルトにございます」
ゆっくりと、美しく言葉を放つフローレンスには気品が溢れていた。
所作の一つ、一つ洗礼されており、声も柔らかく美しさを感じられるも、直ぐに我に返る貴族達は動揺した。
「えっ…嘘でしょ」
「ありえない!」
王都新聞で知らされてはいるが、知らない令嬢もいる。
新聞を見ない貴族令嬢は少なくないし、知っている貴族がいても、名ばかりの公爵程度しか思ってない。
なのに今目の前にいるアリシエは見事な礼服に身を包み、王妃に見守られている。
これまでアリシエを馬鹿にした者も少なくないので、内心は焦っていた。
「この度、甥のアリシエは正式に公爵の爵位を継承することになしましたの。そのお祝いもかねて皆様にも是非祝っていただきたく思います。未だ私の息子には婚約者がおりません故に…王太子妃の公務はフローレンスに任せる事となります」
「「「なっ!」」」
王妃はにっこりと微笑みながらさらに続ける。
「フローレンスは成人してからずっと当主として勤めた実績に、学園でも王室家庭教師からも支持をいただいておりますので、心配いりません。当分は私の補佐になりますので…どうかよろしくお願いいたします」
「なっ…馬鹿な」
「いくら何でも」
王妃の言葉に否定的な者がいたのだが、フローレンスの頭を見た貴族達が言葉を失う。
「あれは…白銀の冠?」
「そんな…まさか」
「では、王太后殿下のお墨付きと言うことになるのか?」
「そんな…」
舞踏会に参加している貴族の中には、散々フローレンスを罵倒し馬鹿にした者もいる。
勿論令嬢もだ。
王太后からも気に入られているのであれば、学園での茶番劇に介入した貴族は確実に地獄を見ることになる。
良くて爵位剥奪で最悪の場合、島流しになることを想像した彼等は死んだ魚のような目をしていた。
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