ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている

ユウ

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第四部.幸せになる条件

19.ジェネットの恐怖



全てが完璧だと思っていたジェネットは耳を塞ぎたくなった。

目の前の光景から目を逸らしたかった。


自分は伯爵令嬢であり、父親の実家は侯爵家。
王族と並び立つほどの名家であることを自慢に想い、勝手にお姫様だと思っていた。

美しい容姿に、裕福な家。
何でも言うことを聞いてくれる両親に優しくて真摯な姉の婚約者は自分に好意的だった。

今までずっと自分は完璧で特別な存在だと信じて疑わなかったのに、何処でボタンをかけ間違えたのだろうか。

ずっと見下して来た姉が貴族の娘で自分は母親が不義を働き生まれた愛人の子供。


「嘘よ…こんなの嘘だわ!」

「愚かね、現実から目を背けるしかできない。自分の足で立つことできないなんて」

クスッと笑みを浮かべる表情は本当に誰なのだろうか?


「アンタ…」


バシッ!

「きゃあ!」

「口の利き方にお気をつけなさいな?妾の子が」

「いっ!」


扇で顎を持ち上げられるジェネットは恐怖のあまり声が出せなかった。


(この人は誰なの…こんな!)

ガクガクと震えるジェネットは、生まれて初めて、フローレンスに恐怖心を抱く。

「身の程を弁えなさいな、この娼婦の子が…私は公爵夫人となる者…お前は平民でふしだらな女。未だに立場が解っていないようね?」

「あっ…ああ」


「フィリーネ、この国では平民が貴族に無礼を働けばどうなるますか?このお馬鹿さんに教えて差し上げなさいな」

「はっ…はい」


終始、見守っていたフィリーネはようやく口を開いた。
先程までのやり取りに、侍女や使用人一同は固まっていたのだが、ここでようやく我に代えたのだった。


「基本、平民が貴族に手を出せば重い沙汰が下りましょう。特にアミールさんは出生届の偽造を行っておりますので、終身刑になるでしょう。その娘も罪に問われます」

「補足いたしますと、現在進行形で、公爵夫人に対する侮辱罪、並びに脅迫罪も追加されますわね」

ジャスミンが静かに告げると、アミールが声を荒げる。

「そんな馬鹿な!」

「公爵家に行くまでならば、いざ知らず…その後も格下である者が無礼な行為を続けたので。しかも今は平民…平民が王族に無礼を働くなど言語道断ですわ」

「なっ!」

ジャスミンはアミールをスルーしながら言い放つ。


「そこで安心なさっているようですが、貴方も罪に問われましてよ?」

「は?」

一人ざまぁみろと思っていたカーネルだったが、フローレンスは許さなかった。


「本来ならば妻と娘の愚行を止めなくてはならないのに、便乗したのです。貴方も同罪ですわ」

自分は関係ないと思っていたのに、罪に問うと言われ絶句する。




「私は関係ない!この女はとは離縁する!」

「なんですって!そんな…」

「黙れ、この阿婆擦れが!」

「私ばかり言えるの?貴方だって好き放題していた癖に!」

「黙れ!」

醜い言い争いはヒートアップしながら、どちらも譲ることなく互いに罵り合っていた。


「この悪女が!」

「この出来損ないが!」

二人は取っ組み合いの争いをする。
互いに手を出して、醜い争いは止まらなかった。



「なんて醜いのかしら」

「ええ、獣のようですわね」


クラエス家の使用人一同は診るに堪えなかった。



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