116 / 128
第四部.幸せになる条件
19.ジェネットの恐怖
全てが完璧だと思っていたジェネットは耳を塞ぎたくなった。
目の前の光景から目を逸らしたかった。
自分は伯爵令嬢であり、父親の実家は侯爵家。
王族と並び立つほどの名家であることを自慢に想い、勝手にお姫様だと思っていた。
美しい容姿に、裕福な家。
何でも言うことを聞いてくれる両親に優しくて真摯な姉の婚約者は自分に好意的だった。
今までずっと自分は完璧で特別な存在だと信じて疑わなかったのに、何処でボタンをかけ間違えたのだろうか。
ずっと見下して来た姉が貴族の娘で自分は母親が不義を働き生まれた愛人の子供。
「嘘よ…こんなの嘘だわ!」
「愚かね、現実から目を背けるしかできない。自分の足で立つことできないなんて」
クスッと笑みを浮かべる表情は本当に誰なのだろうか?
「アンタ…」
バシッ!
「きゃあ!」
「口の利き方にお気をつけなさいな?妾の子が」
「いっ!」
扇で顎を持ち上げられるジェネットは恐怖のあまり声が出せなかった。
(この人は誰なの…こんな!)
ガクガクと震えるジェネットは、生まれて初めて、フローレンスに恐怖心を抱く。
「身の程を弁えなさいな、この娼婦の子が…私は公爵夫人となる者…お前は平民でふしだらな女。未だに立場が解っていないようね?」
「あっ…ああ」
「フィリーネ、この国では平民が貴族に無礼を働けばどうなるますか?このお馬鹿さんに教えて差し上げなさいな」
「はっ…はい」
終始、見守っていたフィリーネはようやく口を開いた。
先程までのやり取りに、侍女や使用人一同は固まっていたのだが、ここでようやく我に代えたのだった。
「基本、平民が貴族に手を出せば重い沙汰が下りましょう。特にアミールさんは出生届の偽造を行っておりますので、終身刑になるでしょう。その娘も罪に問われます」
「補足いたしますと、現在進行形で、公爵夫人に対する侮辱罪、並びに脅迫罪も追加されますわね」
ジャスミンが静かに告げると、アミールが声を荒げる。
「そんな馬鹿な!」
「公爵家に行くまでならば、いざ知らず…その後も格下である者が無礼な行為を続けたので。しかも今は平民…平民が王族に無礼を働くなど言語道断ですわ」
「なっ!」
ジャスミンはアミールをスルーしながら言い放つ。
「そこで安心なさっているようですが、貴方も罪に問われましてよ?」
「は?」
一人ざまぁみろと思っていたカーネルだったが、フローレンスは許さなかった。
「本来ならば妻と娘の愚行を止めなくてはならないのに、便乗したのです。貴方も同罪ですわ」
自分は関係ないと思っていたのに、罪に問うと言われ絶句する。
「私は関係ない!この女はとは離縁する!」
「なんですって!そんな…」
「黙れ、この阿婆擦れが!」
「私ばかり言えるの?貴方だって好き放題していた癖に!」
「黙れ!」
醜い言い争いはヒートアップしながら、どちらも譲ることなく互いに罵り合っていた。
「この悪女が!」
「この出来損ないが!」
二人は取っ組み合いの争いをする。
互いに手を出して、醜い争いは止まらなかった。
「なんて醜いのかしら」
「ええ、獣のようですわね」
クラエス家の使用人一同は診るに堪えなかった。
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】この地獄のような楽園に祝福を
おもち。
恋愛
いらないわたしは、決して物語に出てくるようなお姫様にはなれない。
だって知っているから。わたしは生まれるべき存在ではなかったのだと……
「必ず迎えに来るよ」
そんなわたしに、唯一親切にしてくれた彼が紡いだ……たった一つの幸せな嘘。
でもその幸せな夢さえあれば、どんな辛い事にも耐えられると思ってた。
ねぇ、フィル……わたし貴方に会いたい。
フィル、貴方と共に生きたいの。
※子どもに手を上げる大人が出てきます。読まれる際はご注意下さい、無理な方はブラウザバックでお願いします。
※この作品は作者独自の設定が出てきますので何卒ご了承ください。
※本編+おまけ数話。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される
高福あさひ
恋愛
リリム王国辺境伯エインズワース伯爵家の長女、ユーニス・エインズワース。伯爵令嬢であるはずなのに、生活は使用人以下で、まともに育てられたことはない。それでも心優しく強かに育った彼女は、ある日、隣国との国境である森で二人の怪我をした男性を見つけて……?※不定期更新です。2024/5/14、18話が抜けていたため追加しました。
【2024/9/25 追記】
次回34話以降は10/30より、他サイト様と同時の更新予定です。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。