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番外編第二章元王子の行方
2.食い違う考え
しおりを挟む明け方から働かされた俺はその後巻き割をするも上手く割れなかった。
だから火を焚ける物を探したが、何もない。
「布があるな」
僕の部屋の隣に小屋があり、布が吊るされていたのでそれを取り火を焚くのに使えばよい。
「別に薪を使わなくてもいいじゃないか」
他にも火を燃やすのにちょうどいいボロの布があるからすべて燃やせば寒さもしのげると思った。
「この馬鹿!」
「邸内の大事な服を燃やすなんて…どうする気なの!」
喜ばれると思ったら二人は何故か僕を怒鳴りつけた。
「何故怒るんだ?火を焚いてあげたのに」
「私は薪を割れって言ったのよ!何で布を…売り物を燃やしているのよ。薪一つも割れないの」
「なんて事。大事な布だけでなく数少ない上等な毛糸までも燃やして…おかげで煙が」
せき込む二人は火を消そうとするが水を使えばいいのに。
「とにかくこの煙を…」
「これで…」
「ちょっと!それはダメよ!」
瓶に入っている水を入れて火を消そうとするが、火は消えることなく。
さらに火は強くなり、傍においている調度品が燃えてしまう。
「ジリー、急いで消化を」
「やっているわ!」
「ちょっと!蓋を持って来なさい」
「水を増やせば…」
「だから…」
傍にある壺を手にして消火をしたが。
「それは油よ!」
「えっ…」
「ジリー!下がりなさい」
ダーエ夫人が消火をしたが、部屋は無茶苦茶になった。
「アンタはなんてことしてくれるのよ!」
「最悪だわ…」
手伝いをしたのに二人は僕を更に憎むようになり、人の親切にお礼を言えないとは性格が歪んでいる。
僕は失敗をしたけど、善意でしてあげたのに。
「そんな言い方は人としてどうかと思うぞ」
「「は?」」
僕は慣れない生活を慣れようとしているのに。
こんな酷い生活でも耐えようとしているのに、この二人は優しさの欠片もないなんて。
人として大切な物を無くして生まれて来たのが哀れでならない。
「アンタ、何様なの」
「ジュデッカも何だってこんな馬鹿を王にしようとしたのか…国を沈めるだけじゃない」
「何を言って…」
「そんなに嫌なら、他所に行きなさいよ。もう限界だわ!こんな馬鹿と一緒にいると頭がおかしくなるわ」
「そうね…もう無理だわ」
二人は僕に対してようやく罪悪感を感じたのか落ち込みだした。
だけど僕は謝るなら責めるような真似はしない。
だからちゃんと謝ってくれさえすればよいと思ったけど。
翌日、さらなる悲劇が待ち受けていた事を僕は知らなかった。
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