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4真っ赤に染まったドレス
しおりを挟む銀糸を使った純白のドレスは見る影もない程の赤く染められた。
菊の刺繍も剥がされ無残な状態になったドレスに私は涙奈が流れた。
「酷い…酷すぎます」
「は?」
「何を泣いているの?メリッサが着てくれるのよ?喜びなさい」
どうして…
メリッサ様は何着もドレスを持っているのにどうして。
「生地は着心地が良いわ。ただデザインとダサい刺繍は剥がして置いたわ。だってセンスがないんですもの!菊の花なんて」
我が家の家紋だったのに。
お祖母様からお母様にと受け継がれたものだった。
「あんまりだ…酷すぎる」
「なんて真似を!」
私にとってお祖母様が私にと似合う様に作り直してくれたのに。
「そのドレスは我が家の家宝なんです」
「家宝?こんなものまた作ればいいでしょ…いくら貧しいからって」
「ドレスの一着ぐらいで泣くなんて、これではカスティージョの嫁としてまだまだね!掃除をしてきなさい」
「母上!」
「お前はなんて真似を!」
私の心はぐちゃぐちゃだった。
大事なドレスを奪われ、こんな酷い仕打ちをするのは私がいけないの?
私が嫁として至らないから。
唇を嚙め私は掃除をする。
「痛い…」
赤切れだらけの手から痛みを感じる。
「ぼろぼろの手…メリッサ様は白いすべすべなのに」
とてもじゃないけど、貴族の奥様の手とは程遠い。
頑張りが足りない。
だから私は何時まで経ってもカスティージョ家に受け入れられないのか。
「ふっ…うぇ…」
私にとってあのドレスは大事な物だった。
お祖父様とお母様と思い出が沢山ある品だったのに。
ドレスを奪われた事よりも、大事な思い出も侮辱されたような気分だった。
「奥様」
「ジョナ?」
一人掃除をしながら歯を食いしばっている私に声をかけてくれたのはジョナだった。
他の使用人の中でも特に私を気遣ってくれる優しい彼女がハンカチを差し出してくれたのだった。
「唇が切れてしまいます」
「ごめんなさい」
「大奥様も酷すぎます。あんな…」
「私がいけないのよ」
私が妻としての役目を果せないでいるからいけないのだ。
この時の私はただそう言い聞かせるしかなかった。
心を壊してしまいそうだったから。
それに私がカスティージョ家に嫁ぐ前に言われていた。
――アリア、どうか負けては行けませんよ。
お祖母様の言葉だ。
――嫁ぐことは大変なのです。
他所の家に嫁ぐことは大変な事で辛い事の連続だからこそ言われた言葉だった。
――どんな時も笑いなさい、泣いては行けません。
この言葉を思い出したのだった。
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