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9不安だらけの嫁ぎ先
しおりを挟む私のお相手はカスティージョ家のご子息だった。
優しい表情で物腰柔らかい方で、父君もお優し方で安堵したけど。
「この婚約に不安しかないわ」
「ご子息と伯爵様はともかく…けれど、この縁談を断るのは難しいわね」
基本貴族の婚約は身分が各上からの申し込みは断りにくい。
侯爵夫人が王都で私の親代わりを勤め、後見人となる場合でも摩擦が生じるのだ。
「アリア、貴女無理をしなくてもいいんだよ」
「お父様…」
「相手は名家であるが、断ったからと言ってどうこうなるものじゃない」
あくまで私の好きにしてよいと言ってくれたけど、エルセバート様は本当に優しい人だった。
何所の家に嫁いでも苦労するのは変わらない。
それに侯爵夫人の期待にも答えたかった。
だからこの婚約を受け入れることにした。
けれど、私は甘く考え過ぎていた。
田舎貴族として呼ばれていた私達は王都の貴族からどういう目で見られているか知らなかった。
「改めまして、エセルバート・カスティージョです」
「アリア・フリーシアです」
改めて顔合わせをする日。
両親との顔合わせをしたのだけど、何故か伯爵夫人と妹君は私を見て笑っていた。
「この度は…」
「婚約後は我が家で花嫁修業をしていただきますので、その間手紙や連絡は控えていただきます」
「は?」
「里心がついては困りますので」
お母様が挨拶をしようとするも伯爵夫人に言葉を遮られてしまう。
「ですが…」
「嫁ぐ以上は我が家のやり方に従っていただきます」
他所の家に嫁ぐならば仕方ない事だ。
私も従うつもりでいたのだけど、お母様は複雑な表情をしていた。
そして顔合わせが終わった後に早々に王都を出る事になった両親とお祖母様。
「何ですあの態度は…我が家をあまりにも見下して」
「言葉を慎みなさい」
「ですがお義母様…まるで私達を追い出すように邸から」
この後早速花嫁修業をして欲しいと言われたので両親とお祖母様は領地に帰ることになった。
宿を取ろうにも、船の手配を既にされてしまっていた。
「心配だわ」
「私もだ…」
「お父様、お母様、私は大丈夫です!頑張ります」
これ以上二人を心配させたくない。
それに一年以上行儀見習いをしたのだから大丈夫だわ。
「任せて置いてください!」
「二人共、娘に心配をかけるのではありません」
「はい…」
「元気でやるんだよ」
お祖母様の言葉で二人は納得して王都を後にした。
そして始まった花嫁修業は過酷な物だった。
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