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54迎え
しおりを挟むカスティージョ家を追い出されたその夜。
「自由に乾杯」
「「乾杯!」」
何故か侯爵夫人も待機していたかのように館に訪れ、宴となった。
侯爵夫人曰く、私が離縁されるのは時間の問題だったらしい。
「手間が省けましたわ」
「そうですか…」
「大丈夫ですわよ。離縁されなかったら強引な手段を取る予定でしたから」
予定でしたとはどういうことだろう?
「実は少し前から貴女のお祖母様が…」
「お祖母様が?」
「手紙を頂いてね?万一の時の為に前フリーシア伯爵夫人が動こうとされていたそうで」
あのお祖母様が。
常に嫁として耐え忍ぶ事だ教え込まれていたのに。
「勘違いしてはダメよアリア」
「え?」
「嫁は奴隷じゃないわ。お祖母様は貴女に奴隷になれと言ったんじゃないわ。貴族の奥様として役目を全うして欲しい。そして幸福になって欲しいと思っていらしたの」
「侯爵夫人…」
「とはいえ今回の婚約は前フリーシア伯爵夫人が難色をしめされていたわ。きっと苦しまれたのね」
貴族同士の付き合いはまだまだ分からないことが多い。
でも百姓貴族である実家はあまりよろしくないのだろうと思ったけど。
「でも、先方が離縁を望んだ以上はこれ以上は無理よ」
「ですが、あの親子の事ですわ」
ジョナが心配そうな表情をするも。
「その事も考えて先手を打ちたいの」
「先手…ですか?」
相手は伯爵家、私は実家に戻るつもりはないけど立場上はどうなるのかしら?
「アリア、私の娘になる気はないかしら?」
「え…」
「勿論シャドール家の養女になっても実家と関係を絶つ必要はないわ。でも貴女を完璧な状態で守るには必要なの。私は貴女を娘同然と思っているし」
不安そうな表情をする侯爵夫人の目には後悔が宿っていた。
「私はずっと悔やんでいたわ…貴女が頑張っているから見守ろうと。でも無理にでも離縁させるべきだった」
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結局私はダメだったけど。
でも王都に来て良かったと思っているし、侯爵夫人は何度も私を助けようとしてくれた。
「何度も団長さんを呼んでくださったではありませんか」
「アリア…」
タイミングよく団長さんが助けてくれたのは侯爵夫人が頼んでくれたからだろう。
それに今回だってそうだし。
「感謝しても恨む等ありえません」
私は果報者だわ。
こうして気にかけてくれる人が沢山いるのだから。
これから先どうなるか解らないけど。
これまで通り前向きに生きて行けばきっと大丈夫だと思えた。
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