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62再出発
しおりを挟む無一文と思いきや、私の薬草レシピとプリメーラ商会に開発部を任される事で収入に困る事はなかった。
「アリア、貴女の才を捨てるのは惜しい」
「ええ、貴女は商人の神様の加護があるのだから」
以前から私に懇意に接してくれた二人。
以前、ロベルペール侯爵夫人の依頼でクラスター男爵との交渉の噂を聞いてずっと私を交渉人になって欲しいと思っていたとか。
「私はずっと考えてましたのよ」
「はい?」
「現在は経済の悪さと利益だけを考えた商人の所為で飲食店は潰れ、他にもホテルも廃業寸前」
「はい」
経済の悪さもあるけど流行だけを考えて飲食店にホテルを建てるも少し傾いただけで廃業とする商人貴族が増えている。
「責任感の無い貴族が興味本位で商いをして巻き込まれるギルドは哀れでならない」
「素晴らしい建物も沢山あるのに壊すのにもお金がかかるので放置する馬鹿も多いのです。ですが一時貴女が仕掛け人をされましたわね」
仕掛け人と言う程ではない。
ロベルペール侯爵夫人の依頼でとあるパン屋さんを仕掛けて欲しいと言われたのだ。
歴史のあるパン屋さんだけど、最近では見た目も綺麗なパンを好む貴族が多く、そのパン屋さんは味はおいしいけど安全性を重視する所為で値段も高く尚且つ見た目が古いので顧客の心が離れてしまった。
そこで試食をして私が少しアドバイスをしたのだ。
「アリアのアイデアで顧客を取り戻し、王室御用達の威厳を取り戻したと聞く」
「いえ、職人さんの努力のたまものかと」
「だが耳まで食べられる食パン、砂糖も使ってないのにケーキよりも甘いパンやの考案をしたそうじゃないか」
言えない。
実は邸内で食べる物があまりなかった時に節約術でライ麦パンを作ったなんて。
他にも耳を捨てるのをもったないからなんて。
砂糖を使わないパンは砂糖を買うお金がないから。
その代わり輸入物のバターを使用していたなんて言えないわ。
「体に優しく美味しくて安い。パン業界に革命を起こしたアリアにはコンサルティングの才能があるんじゃないかと思って」
「それに、貴女は商人、ギルドの気持ちを掴むのが巧みだわ。この際商会を作るべきだわ」
考えた事もなかった。
私自身が商会を作るなんて。
だけど商会を作るには三人以上の推薦状がいる。
しかも伯爵以上の地位を持つ貴族と大商会の推薦がいる。
「私は伯爵の爵位を得ている。それに大商会の一員だ」
「推薦はシャドール侯爵家とロベルペール侯爵夫人にお願いすれば問題ないわ」
いくら何でも突発過ぎないだろうか。
それに何もかも無くした私にそんなお願いを聞いてもらえるのかと思ったが。
「何を今さらな。既に貴女の商会は作ってあるわよ」
「はい?」
「それから推薦状は既に用意しているわ」
あっさりと聞き入れて貰えてしまった。
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