地獄の沙汰も慈愛次第!婚約者は姉を溺愛したので私は真実の愛を貫きます!

ユウ

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序章目覚めた記憶と本当の愛

5心に刺さる棘

これ以上二人を悲しませたくない。
家族がファティマを溺愛するのは何時もの事なのだから。


そう思い自分に納得させる。


婚約解消になり、未だにその傷が癒えないまま。
家族は守ろうと必死なのだからと言い聞かせながらディアナはルーカスに告げた。


「正門に回って」

「お嬢様」

「私は大丈夫よ。だけど、ルーカスはこっそり戻って」


本来なら今日は休みだったのだから。
勝手な真似をしたなんて知られたら怒られてしまうと思いこっそり裏口から部屋に戻るように命じる。


「お嬢様、私はご一緒します!」

「だからね…」

「私がご一緒しても問題ありません!」


こうなっては聞きはしないので諦めるしかない。



「では失礼します」

「うん、おやすみなさい」


ルーカスが去って行くのを見送りながら二人はそのまま邸に戻ると…


「お帰りなさいませディアナお嬢様」

「ジョナサン…」


シャンデラ伯爵家の老執事が出迎えた。


「安堵いたしました」


「もしかして二人に連絡をしてくれたの?」

「万一の事を考えまして…まさかこのようなことをなさるとは思わず」


深いため息をつくジョナサンにディアナは何も言えなくなった。


「ジョナサン様」

「ルクティア。また泣いていたのか…お前は乳母というのに」


ディアナの隣にピッタリくっついて離れないルクティアが邸に戻ってくるまでのやり取りを察して咎めたのだ。


「一流の侍女たるもの、常に感情的にならず迅速に主人の望みを叶えるものです」

「はい…」

「ですが、乳母としては間違いではありません」


「ジョナサン様…」


侍女としては失格であれど、乳母としては間違いではないと言われ顔を上げる。


「奥様にも困ったものです。婚約解消になったファティマ様はお気の毒ですが、このような」


「ジョナサン様、何故奥様は…」

言いかけた言葉を途中で飲み込んだ。
言いたいけど言ってはいけないとジョナサンの目が告げていたから。



「あら?ディアナ」


そんな時だった。
広間から顔を出したのはファティマだった。


「一人でいなくなって部屋にいると思ったわ」

「え…」


「もう!婚約者を一人にしていなくなるなんて失礼よ」


家族に置き去りにされたにも関わらず、一緒に帰って来ていると思っていたファティマにジョナサンは眉を顰める。


「ファティマ様、お嬢様は今迎えを行かせ帰っていらっしゃったのです」

「え?」

「気づかれなかったのですか。私がお嬢様が馬車に乗っておられないのに気づき、急ぎルクティアに迎えを行かせました」


口調こそは穏やかであるが目は笑っていないが、ファティマは悪びれることもなかった。


「もう、ちゃんと言わないから!」

「どうしたのファティマ」

「お母様。ディアナったら馬車に乗り遅れたみたいよ?それでルクティアを迎えに行かせたのですって」

「そうだったの?しょうがない子ね」

「もう少ししっかりしてくれ。帰ってから君の姿が見えないから具合が悪いと心配していたんだぞ」


邸の外でディアナを面白おかしく馬鹿にしていたことを聞いていたなんて彼らは知らない。

置き去りにしたことでさえ自分達は悪くないと言うのだから。


「貴方達は…」


「ごめんなさい」


ジョナサンが何か言いかけるよりも先にディアナは謝罪をした。
そうするしかなかった。

この場の空気は皆ディアナが悪いと思っている。
ここで謝らなければ責められるのは空気を読めばわかるのだから。


「もうそれぐらいにしましょう。ディアナも反省しているし」


「本当にファティマは妹思いね…」

「まぁディアナも拗ねていたんだろ?オルフェと踊りたかったんだろうが」

「君とはいつでも踊れるんだ。これぐらいのことで拗ねないでくれ」


誰もがファティマを囲みながら笑みを浮かべる。
まるでディアナがわざと馬車に乗らずに拗ねて家族を困らせたかのような言い方をし、我儘をする妹を姉が笑顔で許す図が出来上がっている。


――痛い。
ディアナの心にまた痛みが走るかのようだった。






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