17 / 193
序章目覚めた記憶と本当の愛
17呪いの言葉
邸に帰って早々に母親の罵倒が飛び交い、父親も睨みつけている。
「ただいま帰りました」
「何を平然と」
「着替えをしたいのですが…ティア。お茶を」
「そんなのは後よ!」
普段はこんな風に大声を上げることはない。
それほど怒り狂っているのだろうか?と他人事のように思った。
「今日、学園に呼ばれたわ」
「婚約破棄を告げられましたので」
「なっ…本当かディアナ!」
兄、カミエルが声を荒げ心配をするも何も感じない。
(言葉だけの心配は要らないわ)
これまで心配する素振りを見せてもディアナに我慢を強いていたのだから。
「学園ではお姉さまとオルフェ様が愛し合っていると噂になっていましたから」
「そんなのは噂だ。何度言っている…噂なんて放っておけば」
「ええ、放置した結果がこれです」
「ディアナ!」
普段寡黙な父が声を荒げた。
まるで他人事のようなディアナが理解できなかったからだった。
「お前は姉を大勢の前で恥をかかせたんだぞ」
「私はずっと恥をかかされてきました」
「家族なんだから…」
もう聞き飽きた。
いつも家族なんだからと我慢を強いられた。
「じゃあ私は家族じゃないんですね」
「何を…」
「家族だから大切にするというなら私はこれまで一度も大切にされたことはありません」
「なっ!」
ずっと我慢していた。
姉が泣けば後回しで、聞いてほしいときは聞いてもらえない。
「私が話を聞いて欲しいと言っても後で聞くと言って聞いてくださいませんでした。誕生日だって、私が賞を取っても…私はお母様に褒めていただきたかった」
「何を言っているの?」
「ずっといい子でいました。そうしないと私は必要ないから。だってそれしか価値がないもの」
ディアナの言葉に絶句した。
今まで何でも言うことを聞き言うとおりにして反抗なんてしなかった。
「優しいだけしか価値がない。オルフェに言われました…だったら!」
「違います!」
ディアナの言葉を遮るようにしてルクティアは強く抱きしめた。
「お嬢様が価値がないなんてありません!そんな馬鹿な事をおっしゃらないでください」
「ティア…」
「私にとってお嬢様は光なんです!お嬢様が私は…」
涙を流しながら強く抱きしめてくれるティアにしがみつく。
泣くことはしない。
絶対にこの人達の前で泣くものかと思った。
「私にとってお嬢様は唯一の方です」
「ルーカス…」
「どうか、ご自分を否定なさらないでください」
抱きしめられた温もりにどれだけ支えられただろうか。
これまで心細いと感じたときは常にルクティアが抱きしめてくれた。
「ティア…ありがとう」
「私はお嬢様が大好きです」
「私もです」
溢れそうになる涙を必死で我慢する。
悲しいからではなく嬉しいから涙が流れそうになるのだ。
その光景を見た家族達は疎外感を受けた。
まるで仲睦まじい家族のようだったからだ。
「何よ…何よこれ!」
「ファティマ」
「ディアナは悪いことをしたのよ!だから私に謝りなさいよ…悪いのはディアナじゃない!」
どうあってもディアナが悪いと決めつけるファティマ。
激怒して手を上げようとするも、ルーカスが前に出て庇おうとする。
「どきなさい!」
「私はお嬢様の護衛騎士です」
例えファティマの命令でもディアナを傷つけられるならどんな処分を受けてもいいと思った。
あなたにおすすめの小説
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。
愛人と暮らすために私と結婚した伯爵子息、皇帝宮の夜会で本音を喋る魔道具を使ったらすべて暴露されました
あきくん☆ひろくん
恋愛
愛人と暮らすために私と結婚した伯爵子息。その本性を知ったのは、結婚した後でした。
私は子供を産むためだけの妻。生まれた子は愛人が育て、私は屋敷に閉じ込められる運命だという。
絶望する私が思い出したのは、大魔導士から渡された魔道具。「心に思ったことを言葉にしてしまう」もの。
そして皇帝宮の夜会で――伯爵子息は皇太子の前で、自分の本音をすべて喋ってしまいました。
この作品は、「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です」シリーズの外伝です。
リリアーナは、第1作目の第3部のおまけ、のお話にでてくる子爵令嬢です。
『ブスと結婚とか罰ゲーム』と言われた商人令嬢ですが、結婚式で婚約者の不正を暴いたら幼馴染の騎士様が味方でした
大棗ナツメ
恋愛
「なんで、お前みたいなブスと結婚しないといけないんだ」
そう言い放ったのは、結婚を一週間後に控えた婚約者だった。
商人の娘エフィは、持参金目当ての政略結婚を受け入れていたが、彼からは日常的に「ブス」「価値がない」と罵られていた。
そんなある日、エフィは父の商会の帳簿から男爵家の不審な金の流れを発見する。
さらに婚約者が娼婦と歩いているところを目撃し――
「泣く暇があるなら策を考えなさい」
昔、自分が言った言葉を思い出したエフィは決意する。
結婚式の日、すべてを暴くと。
そして再会したのは、かつて「姉さん」と慕ってくれた幼馴染の騎士レオンだった。
これは、ブスと蔑まれた商人令嬢が、
結婚式で運命をひっくり返す逆転劇。
「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった
歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。
病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も——
全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。
十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。
「もう用済みだ、出ていけ」
フィーネは静かに屋敷を去った。
それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。
「前のお嬢様を返してください」
(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。
【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。