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序章目覚めた記憶と本当の愛
21笑顔と無表情
沈黙が広がる中、向かいに座るのは終始笑みを浮かべるアルフレッドと無表情のシリル。
かなり対照的だった。
「おい」
「はっ…はい」
「何故もう少し嬉しそうにしない。殿下自ら向かいに来てくださったのだぞ」
氷の瞳がディアナを射抜く。
学園でも鬼の副会長と呼ばれるシリル・フォレスト。
別名氷の貴公子。
中世的な顔立ちで美しいのだが、その外見とは裏腹に他人に厳しい性格だった。
潔癖な性格であり、そして第一王子アルフレッドに誰よりも忠誠を誓う。
入学当初より首席をキープしており、学園始まって以来の優秀さだと言われるほどだ。
ディアナもシリルの噂は耳にしている。
入学当時から既に特別科に選ばれ、第一王子のアルフレッドとは幼馴染関係だと。
「そもそもお前を殿下がわざわざ迎えに行かれることがどういうことかわかっているのか!」
「はい、すいません」
「何故謝る!私は謝れと言っているのではない!」
ディアナは困り果てた。
謝っても怒られるならば何といえばいいのか。
「第一、貴族令嬢が歩いて登校だと?何を考えているんだ」
「え?何で知っているんですか」
「お前は馬鹿か?そんなもの見れば分かる」
「覗きは良くないよシリル」
「誤解です殿下!私はそのようなこそこそしたマネはいたしません!堂々とシャンデラ家の使用人に問いただしたのです」
どっちも同じだろうと思ったディアナだが、そんなことを馬鹿正直に聞けばまたしても怒られる気がした。
…というか、これまでシリルに怒られた記憶しかない。
「ご迷惑を…」
「歩いて何かある方が迷惑だ。馬車がないなら事前に言え」
「シリル、その件に関しては彼女は被害者だよ」
「うっ…しかし」
アルフレッドは微笑みだけでシリルを黙らせながらも優しく尋ねる。
「あの場で派手に助けてしまったからね。帰った後に責められたんだね」
「えっ…」
「怪我をしているね」
頬の周りを髪で隠していたが、髪をかき上げられてしまった。
「はひっ…」
「殿下!そのようなことは!」
「別に邪な気持ちはないよ」
「当然です!相手は小娘です!」
比較的広いとは言え馬車の中なので声は響くのだ。
「お嬢様、私達は何を見せられているんでしょうか」
「何も言わずにいましょう」
二人のじゃれ合いを見せられている気分だった。
できるだけ馬車が早く学園に到着することを願いながら時間を過ごしたのだが、学園に到着してもディアナの気苦労が無くなることはなかった。
学園でも人気を二分する二人と一緒に登校したことで学園内でも噂になってもおかしくないのだが、一般科と特別科は校舎が違うのが救いだった。
「お嬢様、私は学生寮に行かせていただきますね」
「うん…ルーカスにもよろしくね」
「はい」
ディアナは授業を受ける為に教室に向かい、一度ルクティアと別れることになったが……
この時は新しい生活に期待と不安を抱きながら後に起きる悲劇に気づくこともなかった。
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